米国大統領選挙とエロmangaポリコレとヴィーガン叩き

 これはエッセイというものなので、自分の経験から「そうじゃないんかね?」と思ったことを書いた文書なので、そういう風に読んでください。

 想定読者は大学生くらいなので、かなり冗長に書いています。

英語を読むのは難しい話

 生まれも大阪、育ちも大阪、初めて英語を話す外国人にあったのが中学校のTAで次が高校のTA、大学に入るまでに出会った英語が母国語の外国人は二名だけという何の変哲もない、難関の学校を出たわけでもない、そういう人間にとって、英語というのは大変難しいものである。いまだによくわからない単語が出てくる。多分、一生出てくるし、文自体は読めてるはずが、なぜか意味が分からないものまで出てくる。調べてみると、大抵のものは文化的背景を知ってればわかるし、逆に知らなければわからない。

 ともかく、英語の文章を読むのは何かと疲れる。が、それでも生きて行くのに必要であれば、気合で読まなければならないのである。

最初はヴィーガン

 今から10年ほど前、世の中には野菜ばっかり食べて、肉や魚は食べない人がいて、インドだと宗教上の理由、欧米だと単なる流行りで、当時はベジタリアンだったが、その中でも徹底してるのをヴィーガンとかいうようになったらしい。というのを、大学の米国事情みたいな授業で聞いた。米国の週刊誌とかに載ってるらしい。その中で、ヴィーガン的には日本文化が熱いとかいう話であった。

 特に熱かったのが、豆腐やらこんにゃくだったらしい。欧米だとあんまりなさそうであるが、野菜と言えばドレッシングをかけて食べる欧米からすればいろいろメニューというかレパートリーが増えそうな気はした。記憶が確かなら、そのころ日本でも豆腐を焼いて食べたり、木綿豆腐を切っていろいろ味付けしたのをフライパンで焼いて食べるのがダイエット食として流行ってた気がする。ぶっちゃけ、焼き肉のたれで豆腐を焼いたら焼き肉の味がする。

 で、時は流れ場所はTwitter、確か数年前くらいから変な話が流行り始めた。欧州のどこかでヴィーガンの集団が肉屋を襲撃したとかいう話である。調べたい人はTogetterとかいうゴミの山から調べれば、そういうゴミみたいな話があったみたいなのがすぐ出てくると思う。

 で、自分はBBCやらその他大手のニュースサイトでそのような話を見たことがないのだが(見落としてるのかもしれんが)、どんな集団だって過激派やら犯罪に走るものはある。オタクだっていつぞやの宮崎勤やら秋葉原に車を突っ込むやつやら、変な逆恨みで人を殺すやらはいる。ヴィーガンなるものが何件肉屋を燃やしたのかは知らんが、そんなに頻繁にしょっちゅう燃やしてるならもっと大騒ぎになってもいいはずであろう。まあ、日本のTwitterでは大騒ぎだったが、もちろんBBCとかそういうので取り上げられるという話である。

 それが、何かよくわからない(なにかTwitterやってる人間の何らかの逆鱗に触れたらしい)が、変なTweetがどんどん飛んでくるようになる。自分の理解では明治以前までは日本は肉食が少なくとも公式には禁止されているはずで基本的には野菜と肉で生活しておりコソコソ隠れて肉を食っていたはずが、気が付いたら「日本は明治以前もこんな肉食文化があった!」みたいなのが流れてくる(馬肉をさくらと呼んだり、肉を処理する人々がどういう人々でどう悲惨な目にあってたかみたいなのを考えれば、そんな主流の文化とは言えないはずだが)。

 で、ここで気が付く。「そもそも、そんなヴィーガンが肉屋を襲った理由を理解したり、そういう記事を探し出せるほどの英語力(下手すれば英語ですらない)がTwitterやってる人間に存在するのか?」

 よく考えてみたらこの頃、海外事情紹介ブログみたいなものが流行り始めて、海外の面白文化みたいなのをまとめたブログが流行ったのだが、どうも「この記事が出典です!」みたいなのが、日本で言うならスポーツ新聞とネットのまとめブログの中間みたいなThe Sunやらなにやらばっかり、しかも、翻訳がたまに間違えてる始末。自分でも数件、簡単な翻訳ミスで過激に「味付け」してあるものが転がってたわけで、どうもこのあたりが悪さをしてたらしい。

 ヴィーガンなるものは、単に野菜食って肉やら魚を食わないだけのはずが、気が付いたら日本でだけ「肉やら魚を食う人間を攻撃する人間」になってるらしい。そう思ってる方が馬鹿である。ネットに騙されてますよ?

次はエロmangaポリコレ

 そのあと流行り始めたのが、ポリコレやらリベラルやらという単語である。

 もちろん、政治学をまじめにやろうとしてたら、Political Correctnessの概念くらいは知っている。LiberalもConservativeと対になる概念だということくらいはわかる。が、それは米国の話であって、日本の話ではない。どんなものでも、その概念を説明なしで直輸入するわけにはいかない。が、なにかよくわからないが、「リベラルは〇✕だからダメ」という言説が流行り始める。自分としては、そもそも「リベラルは〇✕」の〇✕という事実すら怪しい気がするようなのが、Twitter上ではさも正しい扱いとして流れていく。そもそも、Liberalの対になるConservativeの概念もセットで理解しないといけないはずが、何故か「リベラルは〇✕だからダメ」で「Conservative?なにそれ。」みたいになっていく。ひどいものでは「リベラルの反対は保守。保守は英語でMaintenance」というのまで出てくる始末である。まあリベラルの反対がメンテナンスなら、あなたの考えてるリベラルなるものは現実のリベラルと異なるので、現実のリベラルなるものに迷惑かけてますよ?おそらく、リベラルって何?と聞いた時に、本当はどういうものか知らないので「ダメなもの」くらいの返事しか変えてこないのではないか。

 そのあと、インターネットお絵かきマン界隈(エロ同人誌を作ってる界隈)で流行り始めたのが「米国のリベラルから、エロmangaが攻撃されている」なる言説である。

 もう、何が言いたいのかわかると思う。そもそも「攻撃されている」かどうかわかるほど、あんたら、英語、読 め る の か ?急に、日本のお絵かきマン界隈で英語が読める人間が急増したようである。

 文学やマンガ、これら文化にかかわるものは、普通の大学受験英語やらより相当難易度が高い。一見読めてるように見えて、かなり勘違いしてたりして、読めたと思ってもそもそも意味が違ってたりする。スラングという流行り言葉も多い。そもそも、日本語でもアニメオタクが作り出した造語は、日本人ですらわからない(カップリングやら)。また、一般論として、米国や欧米諸国では、日本に比べて子供の安全にものすごく気を使う。映画でよく見る停車中の黄色いスクールバスを車で追い越したら交通違反で捕まる(子供が飛び出してくるので追い越し禁止)し、ゾンビ映画でも子供のゾンビはめったにいない。というのを理解してたら、米国に日本のノリで同人誌を持ち込んだらどうなるかくらいは想像がつくのだが、その知識がないと想像ができない。ので、「攻撃された」となったのではないか。まあ、攻撃されたのかもしれないが、それは別に「ポリコレ」でも何でもない、単に子供の性に対する感覚が違うというだけである。

最後に米国大統領選挙

 もう、後は何が言いたいのかわかると思う。

 米国大統領選挙というのは、真面目に勉学に励む政治学徒のちょっとした教養みたいな話がある。米国は50の州があり、その中でも保守的な州や革新的な州があるが、まず50の州を大体覚えるのが大変であるし、その中でも激戦集という毎回、民主党と共和党が取り合ってる州があるし、それも別途覚えなければ語れない"はず"なのだ。そして、どの州が大体どの辺にあるのかまで把握しないと、米国大統領選挙というものは本来語れない"はず"なのである。ここまで知識がなければ語れない米国大統領選挙は「かっこうのよい」教養であった、はずだったのだ。本当なんです信じてください。ここがスタート地点で、そこから英文の新聞やら政治の雑誌やらを読んで、現在どういう候補がいるのか、どういう主張をしているのか、どっちが勝ちそうなのかという話になる。英語がわからなければ、大手の新聞の国際面を見ることになる・・・はずであった。

 ところがどっこい、今や米国大統領選挙を語る人間は異常者扱いである。頭がおかしい人みたいに見えてしまう。もうなんか悲しい。どう考えても、「お前、英語読めないだろ」というような人間が米国大統領選挙を語る。米国でこんな記事があった!と、米国の陰謀論で有名なサイトを翻訳して紹介してくる。そもそも、英語の翻訳が間違ってる。制度を理解していない。民主党議員はピザ屋の地下で児童買春なんてしてない(上記にもつながる)し、郵便投票に不正もない、米国カナダメキシコ国境に中国軍も集まってないし、バイデンは福島で井戸に毒を投げ入れてゐない。

 前兆はあった。去年の夏ごろから米国大統領選挙の話題がTwitterに流れてくるたびに「バイデン大統領候補は民主党だから〇✕」という話である。で、どうもこれが信じられない話(自分でも内心は信じたくない)だが、日本の民主党と米国の民主党の区別がついていないようにしか読めないTweetがしょっちゅう流れてくる。Twitterというのは、研究機関向けにTweetの頻度を検出できる特別なシステムがあるらしいので、「民主党」と「バイデン」が両方含まれてるTweetを検索したら恐ろしい結果が出てくるんじゃないかと思う。もちろん、こういう人が政治に詳しいわけがないのだが、何故そう思ったのかというのは、どうも「共産党」と関係があるように見える。各国の共産党は共産党同士でつながりを持ってる時代が長かった(共産主義の理念が実現すれば、国というものは存在しなくなることになっていたので)ので、ネット上だと日本共産党も中国共産党も一緒みたいな論調があったが(間違いではないが実際は結構仲が悪い)、日本の民主党も米国の民主党も、おおもとは同じみたいな錯覚に陥ったのだろう・・・か知らんけど(知りたくない)。

英語を読むのは難しい話

 今は流行りも終わったのか、海外の事情を紹介するブログが減ったなと思ったが、最近Youtubeをみたら「海外の反応!」みたいな動画を見つけてしまい、どうも主戦場がTwitterからYoutubeに移っただけらしい。が、ともかく、「ヴィーガン」「エロ漫画とポリコレ」「アメリカ大統領選挙」についてTwitterで見かけたら「そのアカウントは十分な外国語読解能力を持っているか/その分野に十分詳しそうか」と自分に問うた上で「本当はそうじゃないのではないか」と疑うくらいの方がいいと思うので、おすすめしておきます。こんな文章でも4500字くらいあって、ここまで読んでくれた人に嘘ついたり騙そうとは思わないので。

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