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ひきこもり当事者が自分の経験を活かし、「支援の側」に入ることで「支援のカタチ」はどう変わるのか?

ひきこもり当事者、家族、支援者の思いをみんなに伝えるラジオ【ひきこもりVOICE STATION】♯10、ラジオ音声を全文書き起こしました。

ピアサポーターって何?当事者が支援に入ることの意味は?構成担当山田英治(社会の広告社)がひきこもり当事者でもあり、ピアサポーターでもある下田つきゆびさんにインタビューしました。
※音声で聴きたい方は、コチから!

パーソナリティ:高橋みなみ                      ゲスト:高知ひきこもりピアサポートセンター ピアサポーター 下田つきゆびさん                                取材構成:山田英治(社会の広告社)

高橋みなみさん「ひきこもりボイスステーション。パーソナリティの高橋みなみです。今回お話を聞いたのは、高知県でひきこもりのピアサポーターの活動をされている下田つきゆびさんです。このピアサポーターってなかなか聞き慣れない言葉ですが、当事者経験のある方が、相談に乗ったりお話をしたりする支援の方法です。どのような支援をされているのか、構成担当、社会の広告社山田英治さんがお話を聞いてくれました」

山田「はい、まず自己紹介をお願いします」

下田さん「下田亮太と申します。ひきこもり界隈では、下田つきゆびという名前で活動させてもらっています。今はですね、KHJ(全国引きこもりKHJ親の会)という全国組織の高知県支部(やいろ鳥の会)で、ピアサポーター養成研修の講師といったこともさせてもらっています」

山田「ピアサポーターというご発言がありましたが、具体的にどういうものなんでしょうか」

下田さん「自分の経験、例えば僕だったら、ひきこもっていた経験を生かして同じく今苦しんでいる方だったり、ご家族の方だったりに、自分の経験を話したり寄り添ったりということですね。そういうことを自宅に訪問したりだとか、一緒にお話をさせてもらったり、お話に限らず一緒に何かできることを考えてみたりということをさせてもらっています」

山田「先程、下田さんがKHJという名前を出されましたが、KHJは家族会ですよね。その当事者の親、お父さんお母さん達が集まる居場所というか、そういう場所だとは思うんですが、そこで息子の立場として親の方々にお話をしているということですか」

ピアサポーターで大切にしていることは

斜めの関係!? 

下田さん「そうですね。KHJは家族会なのでピアサポーターと言ってもいろいろな形があると思うのですが、KHJにおいては斜めの関係をすごく大事にしてまして、例えば当事者も自分のところの親には話せないけれど、他の親御さんのところだったら悩みが話せたりだとか、逆に親御さんも自分の子供には話せないけれど、他の子供さんにだったらちょっと悩みを打ち明けられたりだとか、質問して、そういうことを考えられたりすることがあります。支援者もそうですね。そこに斜めの関係があることもありますし、当事者同士ももちろんありますし、そういったことを大事にしていますね」

山田「斜めの関係、縦の関係、上下の関係。具体的に直接の親子じゃない話ですね」

下田さん「はい」

山田「それがピアサポーターだからこそっていうことですよね。実際に、その家族会の場ではどんなお話することが多いでしょうかね」

下田さん「やっぱり個別の話を僕はすることが多くてですね。ひきこもりはとか、主語は大きい人もたくさんいて、それもすごく力になることだと思うんですが、自分の経験として、僕は下田ですけど下田の経験としてはこうこうこうでしたって。お父さんはいかがですかとか、お母さんはいかがですかって。当事者といっても、同じ経験をしていても求めるものって全然違うんですね、一人ひとりが。就労したい人もいれば、ただただ、今生きることを肯定してほしい、今の現状を肯定してほしいと言う人もいる訳で、正解はないですが、まずは自分の話をします。自分はこうでしたよって。あなたはどういうふうにしたいですかということを問いかけることが多いかなと思います」

高橋さん「斜めの関係って、私は忘れていましたね、その視点。というか、どうしてもねやっぱり近しい人というか縦の関係であったり、まさに自分の直の親であったり、そういうところにばかり目が行きがちですけど、確かに、少し離れている人の方が話したりすることってたくさんあるのかなと。この斜めの関係、すごく大事な視点かもしれないですね。そして、つきゆびさん自身がひきこもり当事者だったということなんですが、ご自身の経験についてもおうかがいしています」

下田さん「僕自身は特殊な方だと思うですけれど、断続的にひきこもっている感じでして、13歳ぐらいで不登校、学校に行けなくなりまして。その後、暗い部屋でずっと天井を見つめるような生活をしていて、そのまま中学を卒業したんですけども、学校にいけず高校にも進めず1年間ほどずっと家にひきこもっていました。それで、その中で自分がこのままじゃ死ぬんじゃないかと思って、母親に高校に行かないと死んでしまう気がするって伝えたら、母親が黙って定時制高校のチラシを持ってきてくれて。それが入試の2週間前とかだったんですけど、必死で勉強して行ったんです。何かそういう母親の待っていてくれた経験だったりとか、多分言いたかったと思うんですけどね。ずっとそういうことを思っています。根本的には苦しさは変わらなかったりもして、楽しさとかいろいろなものを知ってはいるんですけども、やっぱりどうしてもまたひきこもるようになったり。だからずっと、ひきこもりがちな生活をしていますね。完全なひきこもりというよりはひきこもりますし、そこからまた、外にも出るし、またエネルギーが尽きると、また家にひきこもるようになるような感じですね」

山田「下田さんは、下田つきゆびさんという当事者としての声を発信されていますよね。その当事者の声をいろいろなところで発信される過程の中で、自分自身の変化とか、こういうこと言っていいんだとか、いろいろな変化が起きるとか、何かその辺を感じたことありますか」

下田さん「僕自身はなぜ自分の話をしているかというのは、いくつか理由はあるんですけど、毎回大体同じ話をするんです。自分がどういうことが役に立ったかとか、自分がどういうことで苦しんでいたかということをお話しさせてもらうんですけども、毎回話す度に視点が変わるんですね、実は。同じ話なんだけど、変わってきて。そういう意味で言うと、過去は変えられないってよく言うんですけど、事実としては変わらないんですけど、自分の中での意味合いがすごく変わってくるんですね。講演で例えば、その中で下田さんに会えてよかったですって、たまに言われるんですけども、そういう答えに出会えると自分の過去が肯定されるような感じがあったりとかするので、自分の話を丁寧にするようにしていたりします。

自分の過去について話すことで

「生きててよかった」と自分の今も肯定できる

一つすごく覚えてるのは、とある講演で、県外だったんですけど、自分がお話しさせてもらって、その話が終わった後に話しかけてくれて、2年ぶりに家から出ることができましたっていう方がいらっしゃって、途中からその方がごめんなさいって謝り出して、どうしたんですかって聞いたら、座ることに必死になり過ぎて、僕の話を、下田つきゆびの話を内容が入って聞けていませんでしたって言われて、それを聞いた時に俺の話はどうでもいいやんと思って。必死で座るっていうことがどれだけ大変かも僕は知っているし、うん。ただそれを丁寧に伝えたかったんですけど、なかなか難しくて。なぜかって言うと本人はそれを肯定できてないんですね。自分のひきこもっていた経験やそこに座ってるだけの経験に思っているけど、本当はすごいことだよということを本当は伝えてくれた。だから、感謝の気持ちを伝えてお別れしたんですけど、そういう方とお会いできたりだとか、自分の過去にもつながるようなお話を聞けたりだとかという瞬間に、自分は生きていて良かったなとか、生きていてもいいんだなって思えるので、話をするようにしています。

実際に、そもそもここにたどり着ける人も恵まれていて、新聞やいろいろなところで広報活動もしていますけども、どこでつながるかも分かりませんし、例えば僕が講演でお話ししたとしても、当事者の方って少ないんですよね。家族支援者が多くて。本当に対象者に届いているかっていうのはずっと迷いがありますし、ただ間接的にでも届いてほしいなと思って活動を続けています。やっぱりひきこもりが恥ずかしいって思っている方もたくさんいますし。でもね、それこそ悲しいのは本人が思っていたりするというか、周りが思ってるというよりは、どこかでそういうふうに意識を植え付けられたのかもしれないですけど、途中から自分自身でひきこもっていることが恥ずかしいとか、ひきこもってることで家族に迷惑をかけると、社会に迷惑をかけているという意識を持っているので、やっぱりまだまだだなとは思います」

高橋さん「いやでも、この座ることさえもひきこもりの方にはとても大変であって、大きな一歩なんだっていうこの視点は、やっぱり当事者の方ならではですよね。お話聞いてると、自分も肯定してあげること、過去を肯定してあげるという作業がとても時間がかかることであって、そしてそれができた時に、少し何か進むことができるんだっていう、まさにこのつきゆびさんの話聞いてても、講演会を通しながら自分の過去を振り返って、そしてその意味合いがまた変わってくるようになるっていう。うん。話しして届けていくっていうことも大事なのかなということも思ったんですけど、やっぱり当事者の方の言葉っていうのはすごく伝わるものがありますよね。そして最後に、ひきこもり当事者経験のある方の相談に乗る支援、ピアサポーターについて、下田つきゆびさんの思いをおうかがいしています」

下田さん「ピアサポーターの魅力というか、ピアサポーターというものがあるとどうなるかなというのは、ちょっと自分の中でイメージをしてて、例えばひきこもり界隈で言えば、10年ひきこもったとかいろいろあるんですが、それが価値が出るって信じられる。例えば自分が10年ひきこもったっていうことが、誰かの糧になったり、癒すことになったりすることっていうのが一つの形かなと思っております。

ひきこもり支援のデザインには

もっと当事者の視点が必要

もう一つはやっぱり、当事者がデザインしてほしいなっていうのがあります、支援に対して。ピアサポーターが中に入っていくことによって、支援の形がちょっと変わるんじゃないかっていう。それは大事なことで、要は自分が、例えば過去の自分にこの支援をお勧めできますかっていう視点がすごく武器になると思うんですね。それを持った人が増えてくれる。そうすると少しでも支援の形も変わっていくんじゃないか。でも、専門職を排除するっていう話ではなくて、その中では絶対専門的な知識や制度だったりが必要になってくるので、頼りにすることはいっぱいあるんですが、やっぱりデザインの中心は、当事者であってほしいなと思っております。ちょっと先を行くっていう言葉はあまり好きじゃないんですけど、ピアサポーターに自分もなれるんじゃないかっていう身近な存在として感じてもらえたら嬉しいなと思っています。万能薬ではないんですけども、そんなことは思っています。はい」

高橋さん「ピアサポーターひきこもり経験者から、当事者支援の場とをつないでいくものだと思うんですが、やはりこの当事者がデザインすることが大事なんだという。やはり支援の形はたくさんありますけど、やはり経験者の目線でこの支援はきっと届くだろうっていう、そういうことが大事なんですね。今まさに、この形をデザインしている最中だと思いますが、当事者の方の意見というものがどんどん反映されていってほしいなと思いました。

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ひきこもりボイスステーション。今回はひきこもりピアサポーターの下田つきゆびさんのお話をご紹介しました」

高知ひきこもりピアサポートセンター

◆イベント開催 2021年1月16日13時スタート!
『ひきこもりVOICE STATION』公開生配信! (パーソナリティ高橋みなみ)
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◆『ひきこもりVOICE STATION』 公式WEBサイト  
◆TOKYO FMサンデースペシャル『ひきこもりVOICE STATION』放送決定! (2022年2月13日19:00~19:55)

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