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一人の高齢者が死ぬと、1つの図書館がなくなる

社会教育士の堀田奈津子です。最近、図書館について考えることがあり、その時に目にしたある言葉が印象的だったので書き残しておきます。
皆さんは、「一人の高齢者が死ぬと、1つの図書館がなくなる」と聞き、どんな印象を受けますか?この言葉の意味、そしてこれからの図書館のヒントまで。社会教育士が関わることができる部分についても、一緒に考えていけたら嬉しいです。

アフリカの諺

「一人の高齢者が死ぬと、1つの図書館がなくなる」というフレーズは、1999年に国連のアナン元事務総長が第2回高齢者問題世界会議の演説において紹介したことで、話題になりました。
アフリカの諺を引用したものだったそうですが、1度聞くと頭から離れない比喩表現です。

当時は先進諸国のみに該当していた高齢化問題。数十年間後にさらなる進行が予測される、世界的な高齢化のスピードと規模に対する懸念が高まる背景で出てきた言葉の様です。

高齢者は、過去と現在と未来をつなげる存在
高齢者の今までの人生「経験」や豊富な「知識」があることで、今が作られ、その先の後世にも繋がっていきます。

そして、当たり前のことですが、私たちだって、その高齢者になっていきます。私だけではない、子どもたちだって。

私たち全員が歳をとっていく

高齢化社会の問題を話していると、時折自分の立場を棚に上げて考えてしまうことがあります。(本当に、ふとした瞬間に)
つい、今の自分の時間が永遠で、この瞬間だけのあるべき姿などをみてしまい、目の前に起きている事象だけを切り取って行動してしまったり・・。

でも、誰だって必ず年を取るし、その時には周りも一緒に年を重ねていく。
今の自分たちの子どもだって大人になっていき、さらに自分たちが亡くなった時には子どもが高齢者になっていく。その繰り返しで世界が続いていることを、意識することが必要だと思います。

つまり、誰もが皆、年齢を重ねていく過程で、諺の表現の様に、1つの図書館を作っている(経験を積む)ということ。
生まれた時にゼロの状態であっても、そこから体験・経験し、知識を得て、試行錯誤を繰り返し、気付いたら皆、一生涯をかけて何かしらの専門性や情報を蓄えたライブラリーになるのです。

一生をかけて学びを広げ、深めていく

図書館は人と人をつなげる場

また、図書館施設の機能としては、単純に本と人をつなぐだけではなく、これだけのことが期待されています。

  • 本と人(従来)

  • 知識と人

  • 情報と人

  • 人と人

図書館は、単に知識・情報へのアクセスのための施設ではありません。
人が一生をかけて図書館になるというのであれば、私が最も期待をしているのは人と人をつなげる図書館としての機能です。

図書館は、人と本が出会う場所でありながら、同時に本を起点として人と人が出会う場でもあります。個人の学習活動促進・知的好奇心の充足を満たすためだけではなく、そこに集う人たちの間に交流が生まれる仕掛けを行っていくことが望ましいと考えます。

一人で学ぶことが続かなくても、人と人が出会い、共に学び合うことが出来れば、学びのコミュニティが広がり、一緒に地域課題を解決するために共同学習・連携強化を行っていくことができるでしょう。

おわりに

地域の人材が育っていくためには多くの知恵が必要であり、それは地域(社会)の一人ひとりが蓄積してきた経験と学びによって支えられています。
人生100年時代においては、子どもから高齢者まで安心・安全な暮らしが出来る持続可能な社会を実現していくために、地域住民一人ひとりの学びと参加が求められています。

そしてそのつなぎ役として、地域の人と人をつないでいく社会教育士が力になれることがあるのではないかと私は思っています。
読書のきっかけともなり得る様々な体験活動、学校図書館支援、読み聞かせ等の読書関連のイベントの実施についても、地域社会と協働した活動として促進を図ることを目標として行っていく。少しずつ、変化を起こしていくために。

では、また次回。



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