#202 ソウルに半地下物件が多い理由

2020年、韓国の格差社会を描いた社会派映画『パラサイト 半地下の家族』が世界で大ヒットした。

タイトルにもあるように、パラサイトでは「半地下」の物件が下層階級の人々の象徴となっている。日本ではあまりなじみがないが、なぜ韓国(ソウル)に半地下の物件が多いのだろうか。

半地下の建物がつくられるようになったのは、
朝鮮戦争から現在に至るまで、北朝鮮と韓国は対立を続けている。1968年には、韓国の大統領府が、韓国軍に偽装して潜入した北朝鮮ゲリラの襲撃されるというテロ事件が起きた。朴正煕(パク・チョンヒ)大統領は殺害を免れたものの、大統領府前で銃撃戦となり、民間人を含めて韓国側に68名の犠牲者が出る大惨事となった。
このようなテロや有事の際の空襲に備えるため、韓国政府は1970年に新築のアパートには、防空壕として地下室を設置することを義務づけた。これが半地下の始まりである。半地下は、映画でも描かれているように、夏は暑くカビが生え、トイレは小さく、天井も低いといった劣悪な居住環境である。もともとは住居としては使用されていなかったが、1980年代にソウルの住宅不足が深刻になると、格安賃貸として半地下物件が貸し出されるようになった。そして、収入の低い若者を中心に半地下に暮らす人々が増えていったのである。

そして、2022年にはソウルを80年に1度の大雨が襲い、多くの半地下住宅が浸水する被害を受け、半地下に暮らしていた4人が死亡した。無事だった人も家財道具のほとんどを失ってしまった。
このような事態をうけ、韓国政府は半地下の居住を段階的に禁止し、移住の支援を行う方針をかかげているが、抜本的な解決には至っていないようだ。

「半地下」はかつては対北朝鮮問題の象徴だったが、現在は国内の格差問題の象徴になっている。

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【参考】


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