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#374 中国からスズメが消えた?

かつて、中国の農村からスズメが姿を消したことがある。

1950年代、中国では当時アメリカの次に豊かな国だったイギリスを追い越すため、「大躍進政策」が行われた。
主導したのは中国共産党の指導者である毛沢東である。

大躍進政策は農業と鉄鋼業を発展させることを目的としていた。

その中で行われたのが、「四害駆除運動」だ。
「四害」とされたのは、ネズミ、蚊、ハエ、スズメの4種類の生物。
ネズミ、蚊、ハエは病気を媒介する生物、そしてスズメは穀物を食べる生物として「害」とみなされたのである。

毛沢東の号令のもと、中国全土で米の収穫時期に一斉にスズメの駆除が行われた。
その方法は、農民たちは米に近づくスズメを鉦(かね)や太鼓を打ち鳴らして追い払い、疲れ果てて落ちてきたスズメを駆除するという、根競べの人海戦術だった。

しかし、スズメ駆除の代償は大きかった。
スズメによる穀物への被害はなくなったものの、翌年には害虫が大発生することになる。
農作物につく害虫を食べるスズメを駆除したことで生態系が崩れたのだ。

結果、農村は深刻な不作に陥り、大躍進政策が行われていた時代には少なくとも3000万人の餓死者が出たと言われている。

スズメの大切さに気付いた中国は、ソ連からスズメを輸入したという笑い話のような記録も残されているようだ。

他にもさまざまな政策が裏目に出てしまい、大躍進政策は大失敗に終わった。
しかし、中国共産党による一党政治のもとではそのことは公表されず、現在でも大躍進政策による餓死者数などは公表されていない。

中国は今でこそ農業大国になっているが、社会主義による計画経済のもと、大きな失敗を繰り返したことはあまり知られていない。

【目次】

【参考】


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