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外務委:大臣所信に対する質疑(玄葉光一郎2019/03/08)

国際情勢に関する件(衆議院外務委員会) ※要旨

北朝鮮非核化/CVIDに関する米政府の姿勢

○玄葉光一郎委員 北朝鮮の非核化の問題、特に米朝首脳会談が2月下旬にあったが、この非核化と制裁解除の関係について焦点を当てて議論したい。
 とりわけ懸念していることが幾つかある。果たして米国トランプ政権は本当に北朝鮮に対してCVIDを求めているのかどうか、私は見ていて心配だ。トーンダウンしているのではないか心配だが、河野外務大臣はどうお考えになっているか。
○河野太郎外務大臣 日本のメディアでそういう報道あるいは質問があるが、米朝首脳会談の前に日米さまざまなレベルですり合わせをしたが、核兵器を含む全ての大量破壊兵器並びにあらゆる射程のミサイルのCVIDがゴールだということは、これはもう日米で全くぶれがないというのが現実だ。
○玄葉光一郎委員 昨年のある段階から、CVIDという言葉にかわってFFVDという言葉が飛び交うようになっている。これは事務方にお尋ねをしたいが、このFFVDというのは一体何か。
○吉田朋之外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長 CVIDは、安保理決議に従い、北朝鮮の全ての大量破壊兵器、あらゆる射程の弾道ミサイル、これについて「完全検証可能かつ不可逆的な廃棄」を行うということであり、日米両国ともにこの方針をとっていくことは全然変わってはいない。
 FFVDは、”Final Fully Verified Denuclearization”の略かと思うが、日本語で言うと「最終的かつ完全に検証された非核化」ということになろうかと思う。
 アメリカ政府は累次の機会、上院の公聴会においてもそのような説明をしていると思うが、CVIDと何ら意味するところは変わりはないと説明していると承知している。
○玄葉光一郎委員 そうすると、何ら変わりがないのに、あえてFFVDという言葉を使うのは一体どういう意図だと推察されるか。
○河野太郎外務大臣 アメリカ側は、日本ほど言葉を厳密に使うということではなく、要するに同じことを言っているんだという説明だ。
 時々話がぶれたり新しい言葉が出て、それはどういう意味か聞くと、逆に向こう側がキョトンとして「は?」という感じになって、「それは同じ意味だ。同じことを違う単語で言うこともあるだろう?」と。
 そこはそんなに神経質になる必要はないと私は思っている。
○玄葉光一郎委員 トランプ大統領は首脳会談後の記者会見で、引き続き制裁解除の前に北朝鮮に完全な非核化を求める考えか問われ、「交渉の観点から、それについては話したくない。しかし、北朝鮮には多くを放棄することを求めている」と言っている。
 非核化が実現する前に制裁解除はしないということを断固として守り抜かないと、過去の失敗を思い出させることになると思っているが、外務大臣はいかがか。
○河野太郎外務大臣 そのとおりだと思う。日米を含めた国際社会は、非核化の後に経済制裁を解除することで一致している。トランプ大統領がいろいろなことをいろいろな形でおっしゃるので、そこは若干揺れがあったりするが、そこはあまり気にしなくてもいいのかなと思っている。
 それからもう一つは、例えば原子炉を解体するときに全部が更地になるまでには相当な時間がかかる。どの時点でCVIDかという判断は、原子炉の中にコンクリを入れて全部コンクリで埋めた時点なのか、更地になった時点なのか、あるいはその間のどこかの時点なのか。これはいろいろ技術的な判断が将来出てくる可能性はあると思うが、いずれにしろ全ての大量破壊兵器、あらゆる射程のミサイルのCVIDが終わってから経済制裁を解除する。国際社会の共通認識はそういうことであると思う。
○玄葉光一郎委員 河野外務大臣の今のような姿勢が貫かれるならば安心をして見ていることができるが、非常に危ういなと思う。
 「不可逆的」の解釈については、おっしゃるようなことはあるかもしれない。そういう範囲内なら構わないが、そうではなくて、例えば寧辺(ニョンビョン)や東倉里(トンチャンリ)といった幾つかの施設の査察と廃棄が行われ、かつ、非核化についての工程表あるいは申告、そういったものがなされただけで今のトランプ政権は何らかの経済制裁解除をしてしまうのではないかという心配をしている。そうなってしまうと、かなりの程度、北朝鮮の思うつぼではないか。
 そういう意味で、そんなことが絶対にないと言えるか。
○河野太郎外務大臣 米朝会談の前に何度もポンペオ国務長官と会談あるいは電話会談を行った。あるいは、外務省の金杉アジア大洋州局長とビーガン北朝鮮担当特別代表の間など、さまざまなレベルでやりとりをしたが、CVIDが達成されるまで経済制裁の解除はないというのは、これはもうアメリカ側は全くぶれずにそういう姿勢だ。
 北朝鮮が「手始めに東倉里」とか「手始めに寧辺」と言ったときにどうするかというのはいろいろな議論があったが、その議論の中に経済制裁の解除は全く最初から含まれていない。具体的な中身を申し上げることはできないが、少なくとも一部の非核化の対価として経済制裁の部分解除がテーブルにのっていたということは、今回のハノイの首脳会議に向けて一度もなかったので、そこはアメリカの姿勢は全くぶれていない。
○玄葉光一郎委員 「メインメニュー」は、やはり経済制裁の解除だ。例えば平壌に連絡事務所を設置するとか、あるいは終戦宣言というのは、表現が必ずしも正しくないかもしれないが「前菜」のようなものだ。だから、特にその「メインメニュー」のところで安易な妥協をしないことがすごく大事だが、トランプさんの会見を聞くと、寧辺プラスアルファをすれば何か制裁解除をするのではないかというふうに聞こえたのも事実だ。
 このことについては、日本が米朝のプロセスを後押ししていくときに正しい後押しをしていくという意味で、外務大臣と総理大臣の大事な役割がそこにあると思うので、しっかりそのことをお願いしたいと思う。

経済制裁の重要性/中国の役割

○玄葉光一郎委員 あわせて、制裁の点で言うと、やはり気になっているのが、制裁の強化とまではいかないが、制裁のタガの締め直しが必要ではないかと思っている。
 今回、制裁の解除を言ってきた、そこまでこだわったということは、特に2017年12月まで行われた経済制裁が非常に効いているということだと思うので、このことで安易な妥協をしないということと、タガの締め直しをぜひやってほしいと思っている。
 安保理制裁が形式上緩んだとはもちろん思っていないが、どうも実質的に緩んでいるのではないか。中国、ロシア、韓国、大丈夫か、外務大臣。
○河野太郎外務大臣 経済制裁の緩みという意味で心配をしているのが瀬取りだ。瀬取りによって石油精製品が相当量北朝鮮に流れているのは現実にあろうかと思う。
 これについては、日本・アメリカ・カナダ・オーストラリア・イギリス・フランスが船または飛行機のアセットを現実に出して瀬取り対策に乗り出すということ、さらに瀬取りがだんだん中国に近いところで行われるようになっているという情報もあるので、中国とも情報をきちんと共有し、少なくとも中国近海は中国が責任を持ってこれに当たってもらわなければならないということは累次申し上げてきている。
 おっしゃるようにタガを締めるという観点からすれば、この瀬取り対策をきちんやることが一番大事だと思っている。
 また、外国へ出ている北朝鮮労働者の数を減らしていくことがきちんと行われているかどうかというところは、しっかりと確認をしていく必要があると思っている。
 中国との国境線の話で言えば、いろいろな動きがあると言われているが、中国政府は少なくとも安保理決議にうたわれているものについては遵守すると繰り返し言っているので、中国独自の制裁についてはさまざまな意見があろうかと思うが、そういうことについてはしっかりとできると思うので、当面は瀬取りに焦点を当て、ここはきっちりやってまいりたい。
○玄葉光一郎委員 やはり2017年12月に石油精製品を、たしか200万から50万バレルにしたのが相当効いているのだと思う。だから必死に瀬取りをやっているということではないか。
 自分のところにもさまざまな情報が入るが、おっしゃるように上海沖で行われる瀬取りが非常に多いと聞いている。北朝鮮に対する経済制裁を考えるときには、何といっても中国だと思う。言うまでもないことかもしれないが、北朝鮮から石炭を買って、石油を送って、これが北朝鮮にとっての命綱と言っても過言ではない。
 2017年末段階で、アメリカに加えて中国が、北朝鮮が場合によっては崩壊したっていいぐらいの前提で北朝鮮に向き合った結果として北朝鮮が対話に乗り出したという側面もあると私は見ている。でも、今はある意味非常に緩んできているところがある。
 河野外務大臣は4月中旬に中国に行くという報道もあったが、特にこの北朝鮮の問題ではなかなか日韓が話せないだけに、この経済制裁のことで外務大臣がしっかり話すことがすごく実を得ることになるのではないかと思うがいかが。
○河野太郎外務大臣 日本だけでなく、アメリカも米中の対話の中でこの問題は取り上げていると認識しているし、これまでの日中外相会談の中でも瀬取りの問題を提起して情報の共有をすることにもなっているので、これは非常に大事なことだと思うので、日中あるいは日韓の文脈でもしっかりと問題提起をし、議論をしてまいりたい。
○玄葉光一郎委員 4月中旬は、これはもうメインテーマでやっていくと考えていいか。
○河野太郎外務大臣 まだ4月中旬の訪中は決まっているわけではないが、次に行くとすると日中のハイレベル経済対話、そこで外相会談も予定されることになろうかと思うので、この北朝鮮問題も当然議論されると考えている。

米韓合同軍事演習中止

○玄葉光一郎委員 もう一つ気になったのは、米韓合同軍事演習をやめる。コストがかかるからと。この発想も非常に心配だ。これは外務大臣としてはコメントできるか。米韓合同軍事演習をやめるということについて、日本の外務大臣としてどう考えるか。
○河野太郎外務大臣 米朝のこのプロセスを後押しするという意味で、軍事演習のやり方を変えるということはあるのだろうと思っている。全てやめてしまうのではなくて、新たな軍事演習、あるいは縮小レベルでの軍事演習が行われると認識している。
 マティス国防長官がまだ現職だったときにこの話を随分したが、共同軍事演習そのものをやめたからといって即応性が落ちることがないように米軍としてはしっかりと対処しているというお話もあったので、米朝のプロセスを後押しするという意味で一つアメリカ側のコミットメントなのだろうなと思っている。
○玄葉光一郎委員 一定期間ごとに米兵は当然入れかわるわけで、そういう意味では定期的に演習していないと対応力や即応性という意味では弱くなるのではないかという心配がある。そういう意味で注意が必要だ。

拉致問題連略事務所設置案

○玄葉光一郎委員 最後に、先ほど終戦宣言とか連絡事務所の話はメニューで言えば「前菜」だと言ったが、そういう話はおそらく今回実務的にはあったのかなと思っているが、他方で、日本も拉致問題の解決のために平壌に連絡事務所を設置したほうが情報収集しやすいのではないかという議論がある。これについては外務大臣いかがお考えか。
○河野太郎外務大臣 拉致問題に関して言えば、核・ミサイルと違って、これは日朝間でやらなければいけないことであり、さまざまなルートでやりとりをしているところだ。一足飛びに連絡事務所になるかといえば、今の段階では、その前にやらなければいけないことがいろいろあると認識をしている。そういう意味で、今、一足飛びに日本が連絡事務所ということにはならないと思っている。

多国間連携の重要性

○玄葉光一郎委員 ぜひ、この北朝鮮の非核化の問題では、日・米・韓・中・露、外相同士での連携というのが非常に重要だと思うので、場合によっては全員で会ったっていいかもしれない。そういう提案をしたっていいかもしれないが、最後に外務大臣のそういう決意を聞いて終わりたいと思う。
○河野太郎外務大臣 国際社会がこの米朝のプロセスの後押しをするという上で、かつての6者のメンバーがいいのかどうか、そこはいろいろな議論があると思うが、少なくとも今おっしゃった5カ国というのは周辺国であり、どこよりも関係が多いのはこの5カ国なのだろうと思う。それぞれの外相会談の中では北朝鮮問題が議題になっているが、日米韓あるいは5カ国、いろいろな枠組みの可能性というのは考えてまいりたいと思う。
○玄葉光一郎委員 アメリカの北朝鮮に対する要求、特にCVIDがトーンダウンしないようにぜひよろしくお願いしたいと思う。

(以上)

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