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【エッセイ】映画『THE BATMAN-ザ・バットマン-』 みんな猫が好きやんけ

※このエッセイは過去の別ブログから移行してきたものです。

 耳を疑った。『ザ・バットマン』を回想していた時のことだ。不意に「猫耳を立てる……」と私はつぶやいていた。なにオモロないこと言っとんねんオレ、「聞き耳」やろ。どうも脳内で「バットマン=猫男」と錯覚したようだった……。

 マット・リーヴス監督のバットマンはハードなアクションに加え、名探偵っぷりからロマンスまでもみせてくれたもんだから、鑑賞後、脳内ではとりとめもなく『ザ・バットマン』と『古畑任三郎』をかけあわせたパロディを妄想したり、バットマンとキャットウーマンとのロマンスシーンを回想した。

 何が「バットマン=猫男」と錯覚させたのか……? キャットウーマンとのキスか……いや、バットマンの耳じゃないか、きっと。頭部にぴんとスマートに立ったあの耳。耳を疑った。

 バットマンの耳が別段猫っぽいわけではない。ある意味バットマンは、正体を隠しているから猫をかぶっていると言えるが──だが、もしバットマンを知らない人にバットマンという名をふせて「さて問題です。この人物はいったい何男でしょうか?」とリドラーばりのクイズ(どこかじゃ!)をだせば、猫コンテンツがあふれる昨今、10人中1人は「猫男」と答えたりはしないだろうか。

・ 猫、人気

 猫コンテンツもだが、飼い猫自体が犬より人気な気がする。ペットは犬よりも猫が人気というWEB記事も目にしたことがある。
 ここ5年くらいのうちに近所でも、耳をすまさなくてもばろーんと優雅に寝そべっている猫をよく見かける様になった気がしているが、肌感覚だけではないのかもしれない。

 昔実家で犬を飼っていた犬派の私からみても、猫のほうが飼いやすい面はあると思う。猫は散歩に連れ出す必要がない。もうそれだけでも飼い主は気が楽じゃないだろうか。ある意味放し飼いで済む(避妊手術は絶対にやってほしい)。それに吠えない。小型で、年配のかたにも向いたペットだ。エサ代も犬よりはかかりにくいらしい。

 そして、あの愛くるしさ。やわらかくしなやかなボディ。ふにゃまるっといった雰囲気で、「ニャー」だもんね。カワイくできあがってんもん。 さすが猫! おれたちにできない事を平然とやってのけるッ、そこに癒される! あこがれるゥ! みんなその虜(とりこ)。

 私はそれを「猫にまっしぐら」と呼ぶ。

 猫のあの小悪魔的なカワイさに癒される。同時に老若男女問わず、自分の容姿や内面に対するカワイくありたい願望までも重ねてしまうこともあるのではないだろうか。

 が、猫は自分勝手なヤツだ(オイ、偏見やろ)。犬と同じような信頼関係を築ける気がしない。自由気ままで、都合がいい時だけ甘えてくる印象。

 『ザ・バットマン』のラストでもそうだ。ゴッサムシティの番犬のようなバットマンに、キャットウーマンが「これから、わっちはマタタビよ(また旅よ)。きっと大変になるから、猫の手だけじゃ足りないの。犬の手も借りたいわ」なんて落語のようなことを言って(全然セリフ違うやろ)、甘~いキスをし、都合よくバットマンを虜(とりこ)にしようとする。あのキスは自己チューのチュー。エゴイストならぬネコイストや!(しょうもないダジャレ! それに両思いやろ)

・ 猫が先か、ライフスタイルが先か

 だがしかし、今の時代、猫はその身勝手ささえも味方につけているんじゃなかろうか。
 無理してまで人付き合いはしたくない、自分の時間を優先、流行のファッションもゆったりオーバーサイズなどなど……、「気楽にすごしたい」そんな至極まっとうなライフスタイルへの憧れも、猫に投影されているのではないか。

 または世間にあふれる猫コンテンツが、気楽にすごしたい姿勢を根強くしているのかもしれない。ゴッサムシティに悪がはびこっている様に、世間では猫コンテンツがあふれている。
 『すみっコぐらし』が人気のサンエックス社だって、おかかえの猫キャラクターは20体以上も存在する。右を見ても左を見ても、振り返ってもキャッツがいる。

 猫とライフスタイルのどちらが因果関係として先にあるかはもうわからないが、ありのままを受け入れられている猫がうらやましいィィィイイ。もう思いきってバットマンは猫男に鞍替(くら)えでもいいじゃないか(イヤよくないだろっ!)。カワイさは正義っていうらしいじゃないか。
 

・ 猫は医者いらず⁉

 猫のカワイさはやっぱバカにできない。その能力は医者いらずのレベルかも。もう正義のヒーローなんじゃないか⁉

その1 キャットボディ

 猫をなでることで、人の体内ではオキシトシンが分泌され、不安な気持ちやイライラを抑え、ストレス耐性も強くしてくれる。

その2 キャットアロー

 猫の「ゴロゴロ」鳴らすノドの音は低周波で、副交感神経を優位にして免疫力をアップさせてくれる。さらに、その周波数が超音波治療のごとく骨折の回復を早める効果もあるとされている。

その3 キャットマネー

 猫が近くにいるだけで、幸福感と安心感マシマシ。リラックスした精神状態へといざなう。そのおかげで、それまで緊張によって世の中の情報を正常に受け入れられていなかった人が、賢くなれる情報に気づきやすくなる。
 そうして猫の癒し効果で金回りが良くなっていく……って、ちょっと何でもあり感マシマシやん?! まあ、イイ効果があることはわかった。

 悪魔の力を身につけた正義のヒーローみたいな(どこが!)、猫。もう猫がいれば医者いらずなのである(強引すぎんだろ!)。

・ 猫なくして現代なし

 猫はいつ頃から人の癒しとなったのだろうか。ちょいと猫の歴史を確認してみたらこれまた驚愕の波瀾万丈。ありがたくまつられたり迫害を受けたりと、人に翻弄(ほんろう)されもしてきたようだ。

 まず驚いたのは、猫の先祖が犬と同じということだ。恐竜が死滅した頃に現れた「ミアキス」という肉食目の哺乳類が先祖らしい。ミアキスは森に住んでいた。

 そのうち草原に進出しワチャワチャしていったものが犬の仲間になり、森に居続けワチャワチャしていったものが猫の仲間になったと言われてる。生き別れた兄弟でも、環境によって大きく異なる成長をとげるもんだなぁ。

 で、今から約9500年前(日本の時代区分では縄文時代初め)ごろ、猫の祖先と考えられているリビアヤマネコと人が接するようになった模様。キプロス島(キプロス共和国。東地中海最大の島。広さは日本の四国より少しせまい。)にあるシルロカンボス遺跡から、人と一緒に埋葬された遺骨が発見されている。

 今からおよそ5000年〜6000年前(まだ縄文時代)ごろには、エジプトで農耕文化が発展したことにより、ネズミの駆除を目的として猫の家畜化が進行。
 その見事な害獣駆除っぷりの他にも容姿や瞳の美しさ、一度にたくさんの子を産む生態が愛されるようになった。めっちゃ推されてるゥウ。
 
 そしておよそ4000年〜5000年前ごろに、エジプトでは
オス猫は、太陽神ラーの象徴
メス猫は、女神バステトの象徴
というふうに、ネズミの駆除隊どころか推しの枠さえ超え、神同然の地位を築いたのだった。 

 ところがおよそ1600年前ごろ(日本では遣隋使(けんずいし)の派遣を始めた西暦600年ごろ)、キリスト教の派閥(はばつ)による影響で迫害されるはめに。魔女狩りの影響を受け、「魔女の手先」とされて大量虐殺されてしまうのだった。

 しかしこのあと、人々は改めて猫の偉大さに気づくこととなる。
 
 猫がいなくなったことでネズミが大量発生。あわせてネズミを媒介してペストがヨーロッパで大流行。
 そこで、われらが猫の再登場(ハイ、ここで『 紅蓮の弓矢(TV size) Linked Horizon』がかかる!)。

 ペストの原因となるネズミを駆逐すべく、人々は再び猫を飼い、進撃するのであった。

  日本では約2000年前(弥生時代ごろ)から猫と共存していたらしく、境遇としては比較的愛でられてきたようだ。
 
 と、いった波瀾万丈っぷり。古今東西で人と猫との愛憎劇が繰り広げられてきた歴史がある。猫がいなければ今の時代性はなかったであろう。なんだか、猫を抱きしめたくなってきた。顔もスリスリしたいィィイイイ! 肉球もみもみィィイイイ! ゴッサムシティの治安も猫がのんびり暮らせるぐらいに良くなってほしいものだ。

・ みんな猫が好きやんけ

 猫コンテンツがあふれるのも必然な気がしてきた。カワイくて癒してもくれる猫。好きになっちゃうよね。バットマンも猫を飼って癒されたほうがいいんでないかい? キャットウーマンへの思いを象徴した映(ば)える画になりそうだし。
 街中で捨て猫をひろうバットマンとか、自宅ですり寄ってくる猫を抱き上げるとか。ちょっと陳腐だけど。『ザ・バットマン』のブルース・ウェインなら、あってもいいんでないかい。

 まあ、バットマンの耳が猫男に錯覚させるかは置いといて(置いとくんかーい!)、『ザ・バットマン』も猫並に多くの人に受け入れられて良い傑作。
 ミステリーありロマンスもあり、音響にはバッキバキの重低音が活かされ、照明の明暗やカメラアングルがバッチリ決まったバトルやバットモービルのアクションシーンは、迫力ある見事な映像に仕上がっている。続編が楽しみだ。

 猫について色々と知った今、猫の癒し効果だろうか、だんだんとリラックスしてきたぁ。そしてまた私は、とりとめもない妄想にふける……『ザ・バットマン』と『古畑任三郎』をかけあわせたパロディを妄想中。   
 
 古畑役をバットマンが演じるパロディ。あの低音ボイスで古畑の口調をマネる、いやマネないほうが良いか……。
 今泉慎太郎役をゴードン警部補がやるか西村雅彦のままでバットマンとからませるか……。
 そんな妄想をしながらひとり私は、ホアキン・フェニックス版ジョーカーのように突如笑いだすのであった──。
 
 そう言えば、『古畑任三郎』の脚本を書いた三谷幸喜が、脚本家として脚光を浴びるきっかけとなったドラマは『やっぱり猫が好き』やんけ。


#エッセイ , #映画感想文 , #ネタバレ , #ザ・バットマン , #マット・リーヴス , #ブルース・ウェイン

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