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映画『ザ・バットマン』②【ネタバレ感想】正真正銘 まさしく「THE」バットマンだった

メインビジュアル:© 2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & © DC

※この感想は過去の別ブログから移行してきたものです。

ここでは 映画『ザ・バットマン』【ネタバレ感想】① の続きをつづっていきます。

■ ナメてました……

正直、特に期待はしていませんでした。クリストファー・ノーラン版、ザック・スナイダー版の後に、太刀打ちできるバットマンなんてムリやろ、と。私の友人や知人も期待値低め。ナメてました……が、まさかあんなにオモロイとは!

リーヴス監督、すんませんでしたァァァアア!!

原作も読んだことの無いにわかバットマンファンの私でも、疲れた体で鑑賞した3時間、あくびもせずに見入ってしまっていました。

冒頭、市長宅を双眼鏡で警護的な意味でのぞくバットマン、かと思いきやリドラーで。次、キャットウーマンの部屋を双眼鏡でのぞいてるはバットマンで。

俺があいつで、あいつが俺で、みたいな。バットマンと捕(と)らえられたリドラーとの対話にもありましたが、バットマンとリドラーは紙一重な存在。そこを描く演出も面白かったです。

■独立した面白味のあるバットマン

ダークでヘヴィな作りは、ノーラン版バットマンの影響もあるかもしれませんが、どっちかというと旧作のサスペンス作品やノワール作品からのインスパイアのほうが濃厚なんじゃないかと。

例えばデヴィッド・フィンチャー監督作『セブン』や『ゾディアック』(というかそもそもバッドマンの原作漫画は、ゾディアック事件を参考にしているようです)、ゾディアック関連作品である『ダーティハリー』。
他にはロマン・ポランスキー監督作『チャイナタウン』といった作品からのインスパイアを感じました。

なのでノーラン版バットマン系の作品じゃなく、ちゃんと独立した面白味のあるバットマンだと私は感じています。

ラーメンで言えば二郎系じゃなく、ちゃんと二郎の看板を背負ったラーメン二郎直系店のラーメン。
オーダーで言うと
麺:硬め ── バットマン:硬派
量:多め ──上映時間:3時間以上
ヤサイ:マシマシ ── 雨:マシマシ
ニンニク:マシマシ ── 犯罪者:マシマシ
アブラ:マシマシ ── 画面の暗さ:マシマシ
カラメ:マシマシ ── 謎解き:マシマシ
といった具合に……って無理やり感マシマシな例えじゃねぇかオイ。

■アクションだけでなく大勢が映っているだけでカッコイイ映像

バットマンのアクションシーンも私が好きな肉弾戦主体でカッコ良く、加えて大勢が映ったグワッと密度の濃いカットも非常にカッコ良い!

駅のホームでのバトルや連続殺人事件現場。爆破で気を失って刑務所で目を覚ますシーンや市民を救出するシーン。
それらの大勢が映りこんだカットは、カメラアングルや明暗、人物配置と空間の奥行きなど調和と緊張感があり、めっちゃカッチョエエ!。

もしカラヴァッジオ(ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオ 1571年生まれのイタリア人画家)が生きていたら、明暗法と写実的なタッチでぜひ『THE BATMAN』のアートを描いてほしかったなぁ。

■挿入歌が作品をより色濃く彩る

土砂降りの街角シーンで90年代っぽい洋楽がかかり、なんか曲の感じがニルヴァーナっぽいなと思ったら、っぽいと言うかニルヴァーナでした。
 
「Something In The Way」という曲のようです。
 
その重いギター音が、犯罪がはびこるゴッサムシティと、こじらせ青年ブルース・ウェインの不健康で気だるく不道徳な感じさえも醸(かも)し、彩(いろど)ります。

すでにネットの記事にもこの曲を切り口にした解説があるので、気になった方は一読することをおススメします。『THE BATMAN-ザ・バットマン-』がより深く楽しめるようになります。
執筆者は映画や音楽の評論で有名な長谷川町蔵さん。(記事:udiscovermusic.jp ニルヴァーナと映画『THE BATMAN-ザ・バットマン-』の関係:“孤独を歌うロック・アイコン”の激突

■正真正銘 まさしく「THE」バットマン

そのほかにも気になったのが、タイトルの「BATMAN」前につけられた冠詞の『THE』
過去作のタイトルでは「BATMAN」の後や副題にTHEがつくことはありましたが、「BATMAN」の前につくことはありませんでした(あったらすみません)。

で、先日「THE」に関するネット記事が目に止まりました。
どうやら冠詞の「THE」は、共通認識という発想なのだそうです。

共通認識できるものとは?
theは、あなたと私(そこに居合わせた人みんな)で共通に認識できるものに使います。
みんなで「せ~の……」と一斉に指をさせるならtheを使う感覚です。
この発想だけでtheの用法を解明していきます。
例えば、The sun rises in the east.「太陽は東からのぼる」は、「天体・方角にはtheをつける」と説明されますが、もし「太陽を指さしてみましょう」と言われれば、みんなで指をさせるので、theを使うと考えればOKです(the moon/the earthも同じ発想)。

日本人が苦手な「aとtheの違い」完全理解する方法 東洋経済オンライン2ページ目

といった感じで「THE」を使うのだそうです。それを踏まえて、物語を振り返ると──。

ゴッサム・シティにあふれる恐怖を、恐怖で征してきたブルース・ウェイン。それまで暗く屈折した正義を振りかざしてきた彼の心境にも変化が起き、クライマックスへ。

洪水から市民を救助するためにバットマン自ら姿を明るみにさらし、居合わせた人々やTV視聴者にも目撃され、バットマンが共通認識できる存在になります。まさに『THE』がつく特定の人物になったのです。

それはまるで光の屈折のよう。例えば水が入ったコップの中に、水と同質で屈折率が同じ物がしずんでいても、その物は見えません。水と質も屈折率も違う物であれば見えます。
 
暴力への復讐を目的としていたバットマンは、荒れる街と犯罪者に同化した恐怖と影の存在。でしたが、市民を救いたいという心境の変化により、自らを明るみにさらし、ヒーローへと昇華します。

ラストのキャットウーマンとの別れのシーンで、ブルースはゴッサム・シティは変わると希望を伝えます。なぜならゴッサム・シティの闇と一体だったブルース自身が変われたからです。

そして淡い恋心……アオハルか!
でもってちょっと続編のフリとなるだろうキャラなどを映して、最後にタイトル『THE BATMAN』ドーン!! ときて、グッと余韻にひたれました。

タイトルロゴ:THE BATMAN-ザ・バットマン-© 2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & © DC
© 2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & © DC

ということで、新しい面白味のあるバットマンシリーズ作が誕生して、またひとつ楽しみが増えましたね。
ロバート・パティンソンが演じるブルース・ウェインも、マット・リーヴス監督のことも、こじらせおじさんな私は応援しまっせ!


■ 作品情報

2022年製作
時間:176分
製作国:アメリカ
原題:The Batman
配給:ワーナー・ブラザース映画

監督:マット・リーブス
製作:ディラン・クラーク マット・リーブス
製作総指揮:イケル・E・ウスラン ウォルター・ハマダ シャンタル・ノン・ボ サイモン・エマニュエル
バットマン創造:ボブ・ケイン ビル・フィンガー
脚本:マット・リーブス ピーター・クレイグ
撮影:グレイグ・フレイザー
美術:ジェームズ・チンランド
衣装:ジャクリーン・デュラン
バットスーツ衣装デザイン:グリン・ディロン デビッド・クロスマン
編集:ウィリアム・ホイ タイラー・ネルソン
音楽:マイケル・ジアッキノ
音楽監修:ジョージ・ドレイコリアス
視覚効果監修:ダン・レモン
ブルース・ウェイン/バットマン:ロバート・パティンソン
セリーナ・カイル/キャットウーマン:ゾーイ・クラビッツ
ジェームズ・ゴードン警部補:ジェフリー・ライト
リドラー:ポール・ダノ
オズ/ペンギン:コリン・ファレル
アルフレッド:アンディ・サーキス
カーマイン・ファルコーネ:ジョン・タトゥーロ
ギル・コルソン地方検事:ピーター・サースガード
ジョーカー?:バリー・コーガン
ベラ・リアル:ジェイミー・ローソン
ケンジー:ピーター・マクドナルド
ドン・ミッチェル・Jr.市長:ルパート・ペンリー=ジョーンズ


#映画レビュー , #映画感想文 , #ネタバレ , #ザ・バットマン , #マット・リーヴス , #ブルース・ウェイン

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