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チャンス到来!?コロナ禍がもたらしたニューノーマル【賃貸不動産】

中小企業にとって、賃貸不動産事業(オーナー業)は、本業以外での安定的な収益向上、税金対策の為の新たな事業として欠かせないものになりつつある。しかし、コロナ禍によって、市況は大きく変化している。コロナ禍がもたらした賃貸不動産のニューノーマルについて4回にわたってお伝えする。第1回は、船井総研賃貸支援部松井哲也が、コロナ禍における賃貸不動産の現状について紹介する。


コロナで激変 賃貸不動産市況

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株式会社船井総合研究所 賃貸支援部 松井哲也

2020年、賃貸不動産市況において、最初の緊急事態宣言下では、あえて引っ越しをしない人が多く、また引っ越すのも必要に迫られた希望者が中心で、入退去に大きな動きはありませんでした。
しかし、第二波、第三波と進む中で、支出の削減などを考慮して「実家に帰る」「より安い家賃態に住み替える」などの傾向から退去が一部進み、入居が減って入居率が下がり、家賃が下落する傾向が起こっています。
また、こうした動きの背景には「巣ごもり」の中でたまった自宅への不満もあります。日がな一日自宅にこもっていると、広い部屋や便利な住宅設備が欲しくなる。それを指し示すように緊急事態宣言の発出前後から「書斎」や「騒音」の検索数が急増しています。
事業用不動産においては、コロナが収束の気配を見せないことから、リモートワークなども増え、オフィスはより郊外へ、より狭い物件への退去が増えていきました。
また、店舗においては、厳しい事情の業態(飲食、サービス)などを中心に退去が続出し、空きテナントが増えています。
これらの傾向は、都市部に近い(政令指定都市など)エリアほどより顕著に現れ、地方都市でも、少なからず影響は出ています。
しかし、裏を返せば、今までより家賃が下がり、空室が増えているのです。これを機会ととらえた投資家が、手が出しやすい空きテナントを活用したり、売却募集された物件を購入する動きも、徐々に増え始めています。
こうした事情から、不動産投資に向けられている視線は日に日に熱を帯びています。特に注目を集めているのが「東京」です。これまで東京の賃貸不動産市場において、家賃が下がる、物件価格が落ちるといった傾向は、数少ない不況下での一時だけでした。
コロナはいつかは収束に向かうとはいえ、まだまだ東京の賃貸不動産市況は良好とは言えません。しかし、一部の投資家は、アフターコロナ以降のインバウンドの回復や、企業活動の活発化を見据えて、積極的な投資に動いています。


止まらない東京からの「転出超過」 進む郊外移住

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2020年9月、総務省統計局が発表したレポートが「郊外への住み替えの動きが起きている可能性がある」と記載され話題を呼びました。同省が発表している「住民基本台帳人口移動報告」によると、20年5月におよそ7年ぶりに東京都の人口が転出超過となり、その後も続いています。
在宅勤務によって通勤が不要になり、都心に住む必要がなくなったので、住環境に優れて面積の広い住宅が安価で手に入る郊外に移る。そんな動きが起こりつつあるのです。
大手不動産ポータルサイト(SUUMO)では、賃貸に限らず、売買においても、10月のページ閲覧数で前年同月比で23区外の伸びが顕著になっています。特に都市部から50~100km圏内、新幹線や高速道路で繋がれた内房総(木更津)や三浦半島(横須賀)、伊豆半島(伊東、熱海)が増えていました。
その中でも千葉県房総地域は、アクアラインでの移動により、車で1時間程度で、東京23区、横浜・川崎と行き来できます。これらの安い土地を購入し、賃貸住宅の建築から家賃収入を得るという投資家層も増えています。
また、成田空港、羽田空港、東京湾への移動もしやすく、輸送拠点、製造工場などの観点からも注目されています。
これらの地域は土地の価格や家賃も上昇傾向にあり、コロナ不況ではなく、コロナバブルが起こっていると言っても過言ではありません。ぜひ動向を注視してください。
一方、都市部では、コロナ不況が伝染し始め、失業率が上がり、生活困窮、低所得者層が増えています。中には、ネット難民のための住居斡旋として、年間300件ほどの賃貸契約をした都内(池袋)の会社も出てきています。最近では、生活保護層の仲介相談もNPO法人などを通じて増えてきているようです。
また都市部では、企業が経費を抑え、TV会議などで対応するケースが増え、法人の単身赴任が減少しています。またWEB授業との併用で講義を進める大学なども増え、地方からの学生下宿者が減少、さらには入国制限から、外国人の新規入居者が大きく減少しています。
会社や親御さんによる経費捻出で、比較的優良な賃貸に入居していた層が減少することで、賃貸不動産会社では入居契約が減少する傾向もあります。


密や対面を避ける中で進む、不動産業界のオンライン化

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コロナによって、賃貸不動産のビジネスモデルも大きく転換しています。例えば、わざわざ来店しなくとも、オンライン上で接客、案内、契約などのすべて業務を進める「専門店」も出てきているほどです。
そうした会社では、あえてリアルな来店、接客、案内はせずに、地域に限らず、遠隔地のお客様を多く取り込み、効率的に売り上げるスタイルが、今後ますます増えていくでしょう。
また、空いた事務所、店舗などを活用し、テイクアウト専門レストランや、リモートワーク部屋などへ活用している業態も生まれてきました。今までより安く借り、高く貸す、また利益を生み出すビジネスモデルになっています。
元々、賃貸不動産は、空いた物件を、価値のある方法で貸す事ができれば、それでモデルになります。比較的安い家賃、安い価格物件などを仕入れ、トレンドになっている利用者・入居者に借りてもらう形が増えていくと思われます。
一方、コロナに左右されず、安定的に収益を確保する上で押さえておきたいのが、高齢者賃貸の需要の高まりです。団塊世代が70代を迎え、高齢者、後期高齢者層が急増してきています。
夫婦、単身で郊外の大きな持家を所有して住んでいたのが、病院や家族の近い地区の、住みやすい高齢者専門賃貸に移り住む動きも加速しています。
高齢者の住まいを扱うビジネスも進化してきており、単なる高齢者賃貸の仲介だけでなく、老人ホームの紹介、身元保証人代行ビジネスも増えてきました。また当然高齢者ですので、今後の不動産を活用した相続対策も出てきています。
今まで大量に入国していた外国人が、コロナにより一気に減ってしまったことで、外国人用に用意された賃貸物件、また民泊や短期賃貸物件の空室が問題化し、その物件を高齢者賃貸として転用しようとする動きも出てきました。
中小企業にとって、自分たちの事業以外に、安定的な資産形成による収益向上や、税金対策などの目的で、賃貸不動産の購入・運用といった法人投資は非常に増えてきています。
コロナ禍において、上記に表したように賃貸不動産の動向は大きく変わってきています。改めて上手に運用できる、「コロナ禍での賃貸不動産への投資」を考えてみてはいかがでしょうか?
なお、賃貸不動産事業に安易に手を出すことは危険です。バブル期や、その後も「本業は順調だが不動産で抱えた負債が原因で倒産」した会社はたくさんあります。
不動産が原因で会社をつぶしては、本末転倒です。必ず地域地域の賃貸不動産専門に扱う賃貸管理会社などに相談することをオススメします。

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