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珈琲の大霊師116

「あぁ~~、…………珈琲が飲みたい。飲みたい、ぐうぅ……」

「あんた何やってるさ」

 リフレールとエルサールが互いの近況を話している最中に、ジョージが机に突っ伏したので、ルビーがたしなめる。

「ぅぅぅ、あぁ、珈琲の香りが恋しい。モカナぁぁぁ、俺の珈琲淹れてくれぇ~」

 あまりに情けない声に、リフレールは苦笑いし、エルサールは目を丸くしてジョージに視線を移した。

「モカナは、ツェツェにいるさ。しっかりするさ!」

「うるせえな。分かってるよ。俺はもう、何年も珈琲を飲んでない気分なんだよ。分かるか?珈琲を愛してやまない俺がだな、飲みたいのに飲めないってのを、何年も続けてみろ。狂うぞ?今の俺なら珈琲の為に人を殺せるかもしれねぇ。ふへっ」

 ジョージの目が座っている。

「ちょっ、リフレール!こいつ、いつからこんなになったさ!?」

「最近は、食後と3時のティータイムになるといつもこんな感じなんです」

「それ、使い物になるんさ?」

「それ以外はいつも通りですから。ただ、だんだんこうなる時間が増えて来ている気が……」

「リフレール、コーヒーとは何だ?麻薬の類いなのか?」

 尋常ならざるジョージの様子に、真面目に心配し始めたエルサールに、ジョージが睨み付けるように立ち上がり肉薄した。

「あぁっ!?麻薬だと?あんなチンケな物と珈琲を比べるたぁ、おい、それは俺に対する挑戦か?コラ」

 まるでチンピラのように前王に噛みつくジョージに、さすがのリフレールも慌てて止めに入ろうとした。が、それをエルサールが制した。

「何が理由か分からぬが、良い気迫よ。そこまで言うのだ。コーヒーとやらを知らぬ俺にも、それがどんなものか説明できるのだろうな?」

「おう。喜べよ?世界で二番目に珈琲を良く知る俺が、直々にその魅力を余すこと無く語るぞコラァ。珈琲ってのはな、そう、究極の癒しだ。天国を口寄せする黒き泉だ」

 油断のならない状況そっちのけで、長い長い語り部の夜が始まったのだった。

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