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2020年の3冊

私が2020年に新たに読んだ本の3選です。いろいろ大変だった2020年の読書録として残しておきます。

今年は外出自粛の影響もあり、たくさん本を読んだような気がしていましたが、振り返ってみると新たに読んだ本はそれほど多くありませんでした。むしろ過去に読んだことがあり、気に入っている本を再読することがたびたびありました。先が見通しにくく不安な状況が続く中で、これまでの愛読書を振り返り、何かしら支えになるようなものを見出したかったのかもしれません。そんな中で、今年新たに読んだ本の中から3冊選び、短い感想を書いてみます。

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テレワークに効く『言葉ダイエット』

1冊目は『言葉ダイエット』(橋口幸生著)。メールや企画書などのビジネス文書の文章術について書かれた本です。仕事で書く文章はなぜか長大化しがちです。それも、際限なく。「させていただく」を多用したメールを書いた経験は、多くの人が持っているはず。著者である電通コピーライターの橋口さんは、この背景を「『主張はしたいけど、嫌われたくない』という心理」と喝破します。必要以上の敬語は、かえって誠実さを欠く。伝えにくいことを伝えたいときほど、無駄を省いて率直に書こうと呼びかけます。『言葉ダイエット』という印象的なタイトルは、ビジネス文章を短くわかりやすく書こうという著者の訴えそのものです。

私自身、「させていただきました症候群」にどっぷりハマっていた時期があり、この本の内容はとても身につまされました。そして思い返せば、相手に不利な内容を伝えるときや自分に自信がないときほど、婉曲でごまかすようなメールや企画書を書いていたような気がします。

このほかにも「一文一意」「抽象論禁止」など、実践的なノウハウが多数紹介されています。それぞれにダメな文章の例と、言葉ダイエット後の文章が掲載されており、前後の違いもわかりやすく理解できます。

この本は年始に読みました。いま振り返って強く思うのは、「コロナ禍の前に読んでいてよかった」ということです。緊急事態宣言の直前から、勤務先も原則テレワークになり、対面や電話でのコミュニケーションが社内外ともに激減しました。一方で増えたのは、チャットやメールによるテキストのコミュニケーション。対面や電話であればなんとなく雰囲気で伝わっていたことを、正確に文章に落とし込むのはなかなか困難です。いかに短く、わかりやすく、的確に文章で伝えるか。『言葉ダイエット』はテレワーク時代に必携の本です。

この本にはとても思い入れがあるため、またそのうちじっくり感想を書きたいと考えています。

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盛岡への愛があふれる家族再生の物語『雲を紡ぐ』

2冊目は伊吹有喜さんの『雲を紡ぐ』という、岩手県盛岡市を主要な舞台とする小説。朝ドラ化してほしい。切実にそう願います。

盛岡には「ホームスパン」という伝統的な織物があります。『雲を紡ぐ』ではホームスパンを題材に、壊れてしまった家族の再生を描きます。母と娘のすれ違い、父と息子の間のすれ違い。ホームスパンを巡る絆が、親子3代のわだかまりを、時を越えてほぐしていきます。

盛岡は私の出身地です。だから作中に登場する盛岡のお店や土地、食べ物の魅力はよく理解している……つもりだったのですが、誤りでした。作者の伊吹先生の手で描写される盛岡の、なんと魅力的なこと。出身者にとっても新鮮な驚きであふれていました。『雲を紡ぐ』を読み進めるうちに、盛岡の良さをどんどん再発見していきました。

そして、やはり盛岡に帰りたくなる。春先にこの本を読み終えてすぐコロナ禍が本格化したので、未だに帰れていません。次に帰省できるときには、この本を携えて帰りたい。作中に登場する喫茶店や飲食店、風景をまわって改めて魅力を感じたいです。

この作品は某所でレビューを書くつもりで準備していました。その前にもともとファンだった伊吹先生の未読作を読んでおこうと、積読になっていた「BAR追分」シリーズを読みだしたところやはり非常に面白く、追分シリーズを読み進めるうちについついレビューを書くタイミングを逃しておりました。だいぶ遅くなりましたが、年明け早々にも執筆に取り掛かりたいと思っています。

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「BAR追分シリーズ」の感想も文章にして残しておきたい……。

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楽しく生きるための哲学『ロバート・ツルッパゲとの対話』

3冊目は『ロバート・ツルッパゲとの対話』(ワタナベアニ著)。この本をどのように説明していいか、言葉に困ります。間違いなく面白く、ハッとすることばかりの本で、その証拠に付箋と書き込みだらけです。事前に内容を伝えるよりも、「面白いからまず前書きだけでも読んでみて」くらいに止めておくのがいいかもしれません。この本が必要な人には、前書きだけ読めばそれが伝わるはずですから。

この本の魅力や面白さについて、いつかしっかり言語化することができたら追加します。

来年は明るい年になるよう、例年以上に切実に願いながら年を越します。そして、来年はもっとたくさん本を読むようにしたいと思っています。

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