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あなたより大事なもの、探してくるよ。―映画ギヴン

8月22日公開の映画「ギヴン」を見てきました!
公開初日、朝イチの回。出勤時間とも大差のない早い時間でしたが、この日を待ちわびたオタクがこぞって集まっている姿に懐かしさを覚えつつ、入場。一席ずつ開いた客席ははじめての光景。ああ、いまこの状況の作品としてこの時を思い出すのだろうな~と思いながら購入したコーヒーを片手に上映の時間を待ちました。

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原作の先生には昔からお世話になっているといえど、ギヴンを読み始めたのはこの自粛期間(!)と最近なのですが、漫画に関する記述もこちらにまとめてありますので、よければご覧ください。
連載開始が2014年、そして春樹と秋彦の恋が劇場で実ったのが2020年...!感慨深い。「つづく」ってほんとにすごい。

見る人すべてをその壮大な愛に引き摺り込む空気感を持ち合わせる作品、ギヴン。
紡がれる言葉は、そのひとつひとつに魂が籠っている。シーンが進むたび、何度でも読み、その透明な眩しさに目の潰れるような思いがする。苦しいほどに詰まった愛の言葉が、鍵盤を優しく駆けるような、美しさ。
その惹き込まれるような魔力に心を奪われ何度も読み返した。だから劇場では「つぎはあの言葉」だ、と何度も思い出せました。

ことばの美しさ、愛の重さ、歌の残響。これらが掛け合わされたこの作品は、日常の喧騒さえ色づけてくれる。きっと人生のささやかな彩りとして、多くの人の心の中で静かに息づくのだろう、と暖かい気持ちになりました。

劇場版で描かれたのは春樹、秋彦、そして雨月の物語。それは、複雑にみえていたってシンプルな「おとな」の恋路。ストーリーのテンポ若干走り気味だったかな?とも思ったのですが、原作がかなりテンポの良いストーリー&軽快なおちゃらけで構成されているので、アニメになるとそのあたりが中和されてゆったりとなり、また、アニメで初めて新たに見えてくるものがたくさんありました。例えば、人物たちの「抱きしめる温度」や、「恋人の音」。
あぁ、こんなにも愛おしそうな表情をしていたのか、と改めて気づかされました。
秋彦はどれだけ、春樹に救われたのだろう。雨月はどんなに、秋彦が大切だったのだろう。それでも、前を向いて、桜の下を歩く二人を見てマジで、なんか、心臓が出ました。あと、立夏が「おいで」と真冬を抱きしめるシーンにはかなり衝撃を受けました。
そんなことある?

エンディングテーマ、「僕らだけの主題歌」。この歌は紛れもない、雨月のさいごの恋の歌。そして、立夏との恋を選んだ真冬の、おわかれのラブソング。

真冬のすべてだった前の恋を、どうやって超えていくのか。少しだけ不安だったのですが、この歌でその不安がすべて昇華されたような気持ちになりました。

あなたより大事なもの探してくるよ。何よりも大事な、あなたのために。

切なさと懐かしさと、幾何もの想いを乗せた、明日へのメッセージ。
新しい恋になるのが立夏なら、きっとどんな明日だって超えられる。
そんな思いがして、歌詞と共に流れるメロディにビッシャビシャに泣きました。

また、雨月に関しても聞いていて本当にいろんな想いが交錯します。雨月にあれだけの感情を抱いた秋彦が、あの半地下の愛の巣を飛び出たのは、そこに共に添い遂げたい暖かな春があったから。こんなにもズブズブと心の面積を埋め合った相手との、決別。きっとあれ以上は無い、そんな一世一代の、恋をした。最後の最後でやっと伸ばせた手が届くことはない。あまりにも大きな恋だったと、本当に死にたい気持ちになりました(こっちが)

雨月の夢が、叶いますように。ただただ、膝を折って祈るばかりです。

男同士の恋だとか、「好きになってしまった」という後悔とか。BL漫画という概念が時と共に変化していっていることも感じられて本当に面白かったです。そこに描かれているのは、ただの、どこにでもある、恋の話。その純な思いに、どうしようもなくあてられた。

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苦しいばっかの恋を、
恋とも形容できない「歪み」を、
紡ぐ、新しい一歩を。


真冬という男の声に、そのすべてを乗せて歌う。音楽の力は、言語化できない。そんな圧倒的な愛に呑まれ、それでもいいと、思わせる、引力。

その恋が喉奥まで刺さって、抜けない。こんなふうに、圧倒的な愛に呑まれたかった。ただそれだけだった。

続く前代未聞の状況の中で、この作品を、脳に響くような音と共に聞けて本当に良かった。いま、この作品の公開に立ち会えて、足を運んだこと自体が、これから先も連れ添う思い出になったなと、純粋にうれしいです。

ギヴンありがとう!あと一回は見に行きます。何度でも読み返したい、何度でもあの愛に還りたい。そんな温かい気持ちをありがとう。

そして大ヒット、おめでとう!


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