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プラスチック問題の現実と深層と真相

いよいよプラスチック製レジ袋有料化が目前となり、レジ袋有料化に関するニュースや情報があふれる中、私も、もう一度プラスチック問題に関する記事を書いてみたいと思います。でも、今回は、現実を見ながらプラスチック問題を別な視点で考えてみたいと思います。その問いは、「何がここまでプラスチック問題を主流化とさせたのか?」です。今回の記事は2本立てです。先ずは、レジでみられる現実の戦い、そしてもう一つは、プラスチック問題の深層と真相は何か?です。

現実 - レジでの戦い:プラスチック製レジ袋 vs マイバック、これに加えてバイオマスレジ袋 vs 紙製バック

この戦い、ここ最近、皆さんが買い物に行ったときに繰り広げられていませんか?プラスチック製のレジ袋有料化目前に控えて、ニュースやウェブ上でも多く取り上げられています。スーパーやお店でこのポスターを見かけませんでしたか?私は職業柄、こういうポスターに目が行くのですが、多くの皆さんは多分見たことがないと思います。先週、近くのコンビニの入り口ドアに貼ってあったので、勝手に調査していたら、約10分間でお客さんの出入りが結構あったのですが、誰一人として、このポスターに目線を向ける人はいませんでした。ちなみに、この時、ほぼ全ての人(15名程度)がレジ袋もらってました。少なくとも、コンビニとスーパーでは違うアプローチが必要である、ことが明確です。

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以前書いたマイバックは地球環境を救うか?の記事では、有料化そもそもについて考えましたが、今回は、多くの皆さんも疑問に持っている、プラスチック製レジ袋 vs とその他との違いは何なのか、について先ずは考えてみたいと思います。レジ袋 vs バイオマスレジ袋 vs 紙製バック vs マイバックの戦いは、既に色々な本や記事になっているので、皆さんも、「既に知っているよ」と言うかもしれませんね。でも少々お付き合いください。

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さて、議論を深める前に先ずは基本情報を集めてみましょう。先ずは、国の方針から。2019年6月に開催された大阪G20サミットに合わせる形として「プラスチック資源循環戦略」を同年5月に策定。ちなみに、G20大阪サミットでは「G20 海洋プラスチックごみ対策実施枠組」が採択され、それを実現するために日本政府イニシアティブとして「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」がスタート。この国際的な背景を踏まえて、国内においても、プラスチックの利便性、そこから得る生活の恩恵がありつつも、資源や廃棄物の観点による諸問題に対応するために、経産省と環境省はプラスチック製買物袋有料化実施ガイドラインを作成した、と言うのがざっくりした背景。

ガイドラインにも明確に書いてありますが、レジ袋有料化とは、プラスチック製レジ袋を有料化にすることが重要、ではなく、「過剰な使用を抑制していくことが基本」、です。ゼロかイチか、の目的ではなく、これをきっかけに「皆さんもう一度考えてみませんか?地球環境を守ることを」と言うのが、この有料化の一番大きな問いです。ウェブとかの色々なニュースを見ると、完全になくすには生ぬるい制度、と言うトーンが多いと感じるのは僕だけでしょうか?

ここで簡単に基本的な説明。7月1日から、あらゆるお店でお買い物する時、以下の状況に遭遇します。
①マイバックを持っている あなた:胸張って「マイバック持っています」と言いましょう。
②マイバックを持っていない あなた:お金を出してレジ袋を買ってください。お店で値段設定は変わりますが、1枚3円から5円くらいが相場です。
③マイバックを持っていない あなた その2:今まで通り、レジ袋が無料でもらえる場合があります。

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③は何で、と思うでしょう。プラスチック製買物袋有料化実施ガイドラインによると、1)フィルムの厚さが50マイクロメートル以上あって繰り返し使えるもの→要は、分厚くて何回も使えるもの。2) 海洋生分解性プラスチックの配合率が 100%のもの→要は、間違って海に流れ出しても最終的には分解するも。3)バイオマス素材の配合率が 25%以上のもの→要は、バイオマス素材が25%入っていると二酸化炭素排出削減に貢献する、からである。なお、その他いくつか例外もありますので、ご注意を。

ここでもう一つ、お店側では以下の状況が発生します。例えば:
①スーパーでお客さんがマイバックを持っている場合:お会計に消費税8%加算
②スーパーでお客さんがレジ袋も購入した場合:食料品の消費税は8%、レジ袋は10%
③スーパー側が上記の1-3)のレジ袋を無料で渡した場合:お会計に消費税8%加算
④スーパーで、お客さんがお弁当を買ってイートインする場合でレジ袋も購入する場合:お弁当とレジ袋に消費税10%加算

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聞いているとなんか複雑に感じませんか?昨年の消費税が8%と10%に上がってから、多くの方が把握するまでに少々時間が必要でしたね。今回も状況次第で、少々消費税が変わりますのでご注意を。と言っても、事業者が決められる切り捨て、切り上げ、四捨五入したら変わらないともいますが。でも既に業者さんは対応を決めています。例えば、吉野家すき屋KFCサイゼリアすかいらーくなど、お客様の利便性とお持ち帰りの状況を考えて、企業努力としてバイオマス素材配合のレジ袋に切り替えて無料化しています。一方、違うアプローチのファミマ、バイオマス素材を30%配合したうえで有料化。7月以降の動向に注目です。日本の企業はすごい、常にお客様を第一に考えている、なので、お客様側も気持ちよく買い物ができる、という、おもてなし、ですね。

さてここで、以下の簡単な表を作成してみました。数値で見る、レジ袋 vs バイオマスレジ袋 vs 紙製バック vs マイバックの戦い。なお、この表は情報源の異なるウェブ上の数値をまとめているため、かなりざっくりしたデータです。この表の目的は、あくまでも傾向を見てみよう、というものなのでご注意ください。

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ではこの戦いを数値で見ると、以下の傾向となります。

①汎用のレジ袋(ポリエチレン0.012 mm厚)の価格を1とした場合:レジ袋(ポリエチレンハード。繰り返し使えるもの)11.6倍、バイオマスレジ袋(バイオ素材25%)1.2倍、生分解性ショップバッグ15.3倍、FSC認証紙製バッグ11.7倍、不織布製レジ袋12.7倍、マイバック(オーガニックコットン100%)78.7倍、マイバック(ポリエステル)309倍。

②汎用のレジ袋(ポリエチレン0.012 mm厚)の製造中の二酸化炭素排出量を1とした場合:レジ袋(ポリエチレンハード。繰り返し使えるもの)0.24倍、バイオマスレジ袋(バイオ素材25%)0.83倍、生分解性ショップバッグ1.92倍、FSC認証紙製バッグ4.86倍、不織布製レジ袋14倍、マイバック(オーガニックコットン100%)30倍、マイバック(ポリエステル)55.8倍。

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この数値をどう読むか?データをより集めて、二酸化炭素排出量も研究室で計測すれば、学術的な研究論文作成はできそうですが(誰かにやってほしいのですが)、今回はこれ以上のデータ深堀りはしません。ポイントはそこではないからです。なぜか、数値の比較は面白いのですが、レジ袋有料化で問われている質問は、単純にレジ袋を有料化したら、数値で比較してこれがベストオプション、ハイ、おしまい、ではないからです。

一つ言いうのであれば、汎用性レジ袋とバイオマスレジ袋(バイオ素材25%)の価格差があまりないので、お客様を第一に考えると企業努力としてそのコストを転換した方が良いというのが、ここ最近の傾向となっていると感じるところです。でも、有料化制度の大義とその心得を考えると、種類に限らずレジ袋は一切無料で配布しない、1枚1000円で販売とか販売して、その一部は優良事例に寄付とかして良いのでは、と個人的には思います。

プラスチック問題の深層と真相

レジ袋有料化に関するニュースを聞いていると、ゼロかイチかと言うトーンが多く聞かれます。本当にそうでしょうか?国のガイドラインには、「レジ袋有料化義務化(無料配布禁止等)」を通じて消費者のライフスタイル変革を促すこととした。」、と明確に書いてあります。レジ袋使おうが、バイオマスレジ袋使おうが、マイバックを使おうが、私たちは二酸化炭素を排出することには変わりはありません。前回の記事「プラスチック問題を地球1個で考えると?」シリーズの最大の問い、「プラスチック問題は誰のせい?」、とその答え「私たち人間のせい」の戦いこそが、私たちが本当に戦うべき相手です。

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レジ袋有料化制度に問題があるという声が聞かれますが、それは問題点がすり替わっていると思います。レジ袋有料化制度と言うのは、あくまでも現状を踏まえて今できる応急措置であり、この応急措置についての賛否両論は、本当に問うべき私たちの問題がすり替わってしまっているともいます。皆さん、ここを間違えないでくださいね。皆さんがマイバックを使う、3円でレジ袋を購入するというのは、その瞬間の問題を解決するためではなく、使わなくてよいものをなるべく使わないようにして、環境に優しい暮らしを自ら考えましょう・実行しましょう、という、サステナビリティアクション・サス活の心を鍛えるのが真の目的という事を。

それを理解するために、背景を少し見てみましょう。なぜここまでの短期間で、一気にプラスチック問題やレジ袋有料化が、環境問題に関する世界のステージの真ん中に来たのか、という事です。世界では、2015年に採択された持続可能な開発目標2030(SDGs)から徐々にプラスチック問題、特に海洋プラスチックごみやマイクロプラスチック問題が取り上げられるようになり、こんな映像やこんな映像で衝撃の事実が世界中に広まり、その流れはあっという間に地球規模課題として認識されるようになりました。私たちUNEPが2018年に策定した使い捨てプラスチックに関する報告書ビデオ、など各種作成して、科学的な知見や一般向け普及啓発活動を実施しています。でも、この説明では腑に落ちませんね。なんでだろうか?

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過去にも日本ではレジ袋有料化という議論はされたのであろうか?舟木先生の”「レジ袋」の環境経済政策”、によると、過去にもレジ袋有料化と言う動きはあったみたい。1965年頃から低密度ポリエチレン製のレジ袋が登場し、1972年に手提げが付いた高密度ポリエチレンレジ袋が関西で登場、そこから一気に全国に広まった、超便利だし。それから30年近くたった2001年に「全国マイバックフォーラム in 静岡」が開催されたのが、日本で最初の全国規模のマイバックキャンペーン、言い換えればレジ袋削減キャンペーンです。その後、全国都市清掃会議のごみ減量化推進国民会議、そこから様々なキャンペーン活動が展開していった。

日本は1997年に容器包装リサイクルが制定されており、その10年後の改正時において、当然レジ袋有料化の議論が行われていた。この資料によると、2006年の中央環境審議会においてレジ袋有料化の議論が行われていたが、日本チェーンストア協会は一貫してレジ袋有料化を主張していたが、小売業界の中で足並みがそろわなかったため、引続き、自主的な取組に委ねられた。2008年には、「日本中に広がるレジ袋禁止・マイバッグ持参のうねり」もあったみたい。

この同資料によると、その5年後、2013年における改正容器包装リサイクル法施行5年後の見直しにおいて、再びレジ袋の有料化の議論が中央審議会等で繰り広げられた。日本チェーンストア協会は一貫してレジ袋有料化の法制度を主張、日本百貨店協会や日本フランチャイズ協会は有料化の反対を主張、再び業界内での意見が対立し、法制度化は見送られた。あれだけキャンペーン活動が盛り上がったにもかかわらず...

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そして、今、なぜこのタイミングなのか?そこに隠されているのは、誰が主体となって物事を動かしたという点です。2006年と2013年においては、レジ袋有料化に向けた市民活動はあったものの、結論を導く出す役割を持っていたのが中央審議会等の国の会議であった。つまり、国や業界主導での論点から、当時はレジ袋有料化が見送られた、と言うのが事実でしょう。でも、今回は?環境省や経産省の合同会議やその他関係会議の議事録を読んで感じるのは、これらの会議を開催する前に既にレジ袋有料化することは決まっており、どのように有料化するかと言うのが論点であったという事です。では、レジ袋を有料化にすることを決めたのは誰でしょうか?

それは、私たち、一般市民です。歴史が動く瞬間は、いつも市民の気持ちが世界を動かす時です。歴史を振り返ると、皆さんもいくつか思い浮かぶと思います。誰かの気持ちに多くの人が共感して、その共感を呼び起こした問題が自分事となり、多くの人が自分の意志で「こうしたい」と思うその大きなうねりが、歴史を変える、世の中を変えています。こう言うと難しいように聞こえますが、「他人から言われることには本気で取組めないが、自分の意志で決めたことは本気で取組める」、皆さんもそうでしょう、人から「こうしなさい、こうあるべき」と言われると気持ちが入りませんが、「よしこうしよう、これを目指して頑張ろう」と思った瞬間に、本当の気持ちがオンになりませんか?

日本における過去のレジ袋有料化の議論は国や業界主導で進んでおりましたが、今回は、一般市民の目線から海洋ごみ問題を含めたプラスチック問題が提起され、その情報や現状がSNSを通して拡散するうちに、多くの方が共感し、自分の問題として認識するようになった、と言うのが事実でしょう。この市民の強い意志が世界各国の政府関係者や業界を動かし、非常に大きなプラスチック問題に挑むための一つの身近なサステナビリティアクションとして、プラスチック製レジ袋の有料化を実施するようになりました。有料化すれば、少なくともレジ袋の使用は減らせるのではないか、マイバックを持つという意思を持ってもらい、その意識から自分の心の中で「サステナブルな暮らし」を自ら考えてもらえるのではないか、その小さな一歩が積み重ねていくことが、未来のサステナブルな暮らしに繋がります。

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