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コロナウイルスから何を学ぶべきか?未来の廃棄物管理の在り方を考えてみよう!

今回の記事は日本の廃棄物資源循環学会と韓国の廃棄物学会が連携25周年に開催する記念シンポジウムでの講演内容を記事にしてみました。この記念すべきシンポジウムで基調講演をさせていただける名誉な機会です。皆さんに感謝申し上げます。

今回の僕の出番は、UNEP日本人職員として世界におけるコロナウイルス廃棄物管理の現状と今後の管理体制に関する考え方や戦略についてのお話しをさせてもらうことです。新型コロナウイルスの世界的大流行が発生してから2度目の春を迎え、2度目の梅雨時期を迎え、今年の夏はどうなるのだろうかと思う日々です。今回の記事は、コロナウイルス廃棄物管理に対して、自然科学的、環境学的、経済的、哲学的アプローチを用いて書いてみました。どうぞお楽しみください

1.はじめに

我々の廃棄物管理はコロナ廃棄物に対応しているだろうか?
この一年間で学んだことは何であろうか?
新型コロナの世界的大流行を踏まえて、廃棄物管理の在り方は変わるのだろうか?

この3つの問いは、廃棄物業界においてこの一年間様々な議論が行われています。今日のシンポジウムにご参加のみなさんもご自身のお答えをお持ちだと思います。
この皆さんがお持ちの答えの質問を基本として、私から新型コロナウイルスから学ぶべきポイントを考えてみたいと思います。

そして、私たちは何を学ぶべきでしょうか?

2019年の常識はもはや二度と戻ってきません。私達の普段の生活もしかり、そして廃棄物管理もしかり。何もかもが変わってしまいました。何が起きたのでしょうか?

新型コロナウイルスが発生し世界的大流行となった、それが事実です。でもその本質は何でしょうか?それを明確に理解し、その原因を理解し、正面から正直にしない限りは、根本的な課題を解決できません。残念ながら、我々人間は過ちをくりかえしています。目の前の利益、目の前の問題に対して小手先の対策を取り続けている私達に気が付かなければなりません。

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2.歴史的転換点

第一次産業革命から約270年後の未来の今日世界の総生産力は110倍に膨れ上がり、過去30年間の間に約30か国が所得倍増を遂げ、世界平均のGDPは60年前の欧州レベルに達しています。世界の極貧生活の人口比率も90%から10%程度まで下落し、世界は中流階級に移行しています。世界平均的に見ると、韓国や日本から半世紀ほど遅れて、豊かな生活を手にしつつあります。

過去70年間の世界的な動向をみると、程度の差はあリますが、高所得国では政府が教育、公衆衛生、インフラ、農業・産業開発、職業訓練、社会保障、貧困削減などに投資しているのが共通です。目の前の利益を求めるのではなく、時間をかけて、社会基盤の大本となる市民一人ひとりの教育を丁寧に行ってきた結果が、今の高所得国の共通の努力と言えるでしょう。

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しかし、一つだけ全ての人が忘れていたことがあります。それは、富と引き換えに自然資本をぶち壊しにしたこと。地球資源開拓しそれを活用し人間社会を発展させていくのは、ある意味ダーウィンの進化論の人工版ともいえるかもしれません。しかし、人工版には、人間がそもそも持っていた人間社会と自然との共生を完全に失い、人々の目は自然資本を人間の富に変えていく目の前の利益に目くらんでしまいました。気が付いた時にはすでに遅し、これがありとあらゆる環境問題に共通する本質です。

残念ながら、私達人間の耳には地球の声が良く聞こえません。気が付いた時には大惨事になっています、気候危機、生物多様性危機、化学物質と廃棄物による汚染危機もしかり。茹でガエルの法則と言ってよいでしょう。人間の時間軸とは違う軸における気温上昇、生物喪失、汚染の拡大は、残念ながら人間は気が付かないし、気が付いたとしても見て見ぬふりをする、というのが人間の本性でもあるでしょう。

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でも今回は違いました。本当であれば今日のシンポジウムも韓国か日本のどこかで皆さんと直接お会いして開催するはずでした。UNEPでも、この1年間、ナイロビでの国連環境総会やグラスゴーでの気候変動COP、ジュネーブやニューヨークでの国際会議などすべてがオンラインとなりました。私達全76億人の私生活においても、なるべく外出しない、外出するときはマスクをする、学校や仕事もオンライン、友人や親せきに合うのもオンライン、と、全ての生活がたった一つの見えないウイルスで激変しました。過去の常識が非常識に、過去の理想や想像が常識になりました。

第一次産業革命以降、我々は様々なウイルスに直面してきました。でも今回は全く違います。新たな脅威です。人間社会が高度化されるにつれ、自然の驚異の前では完全に脆弱であることをまざまざと見せられました。新型コロナウイルスが世界的パンデミックになるまではわずか数か月、それから2度目の春を迎えた今日、我々は突き進んできたグローバリゼーションの脆弱さに直面しています。グローバリゼーションは諸刃の剣であることを。

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3.コロナ禍における廃棄物について

我々の廃棄物管理はコロナ廃棄物に対応しているだろうか?この一年間で学んだことは何であろうか?新型コロナの世界的大流行を踏まえて、廃棄物管理の在り方は変わるのだろうか?

我々は過去の廃棄物管理の歴史から何を学んだろうか?循環経済を目指す我々の社会においては、韓国や日本をはじめ、直線型廃棄物管理から循環型廃棄物管理にシフトしつつあります。これも全て過去の経験を踏まえて、着実に廃棄物管理をアップグレードしてきた結果が出ています。

新型コロナウイルスに係る廃棄物管理に直面した私たち。私たちが実施している廃棄物管理の中に応用できる対策はあったのだろうか?何か過去の歴史を踏まえて、コロナ関連廃棄物に対応できたのであろうか?

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過去20年間においては、2003年のSARS、2012年以降のMERSが記憶に新しいところです。SARSは5か国で約8000発症・774人死亡、MERSは27か国で約2500発症事例・2574人死亡であり、今回の世界的大流行の新型コロナウイルスの約1億6千万発症事例と約340万人死亡と比較すると、今回の新型コロナウイルスがいかに桁違いで厳しい状況であるかを認識します。SARSとMERS時における廃棄物管理はどうだったかというと、当時の罹患者は入院していたこともあり、通常の感染性・医療系廃棄物管理で対応できました。このため、当時、SARSやMERS時に対して特別な対策を講じた記録は残っていません。しかし、この時私たちは重要なことを学んでいました。緊急時においては、既存の政策・制度・技術を応用して対応するべき、ということです。これは、ウイルスや感染性廃棄物対策だけでなく、自然災害における緊急時の廃棄物対策の中心的な考えとなりました。

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しかし、今回の新型コロナウイルスはその考えをはるかに超えていくものとなりました。1年前ごろ、UNEPでも各国の要請を踏まえて、新型コロナウイルス緊急対策を開始していました。UNEPでは、①医療と人道的な緊急事態フェーズ、②自然と人への変革、③未来に向けた投資、④地球環境カバナンスの近代化の4本柱を立て各種対策を実施してきていますが、そこに共通する課題が廃棄物管理です。ここでの中心となった考え方が、既存の廃棄物管理をフル活用するということでした。各国・各都市で廃棄物対策・状況は異なりますが、既存の廃棄物管理体制、その中でも環境上適正な管理・技術と使用可能なありとあらゆる施設を最大限に活用することが重要です。

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今年3月に開催された the 3R International Scientific Conference on Material Cycles and Waste (3RINCs) における新型コロナウイルス関連廃棄物管理セッションにおいても、既存の法制度やその一部改正による対策強化、既存の施設を活用した環境上適正な処理処分の実施、環境上適正な処理処分に関するガイドラインの作成や情報公開の重要性、使い捨てプラスチック製医療機器や個人保護器具、衛生面を考慮したプラスチック製品の廃棄物管理の現状や対策、コロナ禍における資源性廃棄物のリサイクルと処理処分等について議論が行われました。コロナ禍における廃棄物の全体像はまだ見えていませんが、我々が目指している循環経済を中心に起きつつも、衛生面・安全面を確保しながら環境上適正な処分・リサイクルの高度化を目指していくことが重要です。

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日本では3回目の緊急事態宣言下、インドでは新型コロナウイルスの爆発的拡大、それに対して比較的に抑え込んでいる欧州、ワクチン接種が進んでいるアメリカ等、世界的規模でみるとコロナ感染を抑え込んでいる国と抑えきれない国等様々あります。今回のコロナ禍においては、感染拡大防止対策としてロックダウンを実施した国や都市が多くありました。近代歴史において初めてとなるこのロックダウン、人の移動や接触を制限したため、廃棄物管理の考え方にも変化がありました。それは、廃棄物管理の原則でもある、廃棄物発生源に近いところで処理処分を行うことです。廃棄物管理の歴史を見ても、ほとんどの廃棄物の処理処分は各国の地方自治体レベルで完結しているのが現状です。ロックダウン化においては、それまでリサイクルされていた資源も、感染抑制防止の観点から最終処分に回される事例が増えてきています。また、ロックダウンに伴い、廃棄物回収や最終処分の極小化の必要性も求められるようになりました。循環型経済社会においてはリサイクルの高度化が必要ですが、コロナ禍においては感染防止対策としての廃棄物管理対策、すなわちリサイクルよりも最終処分の重要性が求められています。

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ここで重要なのは、今回の新型コロナウイルスの影響を踏まえて、医療系廃棄物管理体制を改善していくことです。医療廃棄物管理・処理体制はその病院ごと、地域ごと、国ごとで異なりますが、既存の管理体制をベースとした環境上適正な環境技術の導入・アップデート・実施を継続していかなければなりません。しかし、低所得国や中低所得国では、医療廃棄物処理技術が十分にそろっていない場合が多いため、どのような医療廃棄物処理技術を導入していくかということも同時に進めていかなければなりません。そこには、過去の信頼された技術を導入するのか、最先端技術を導入するのか、自らの能力にあったシンプルな技術を導入していくのか、それを持続的に運用していく体制は整っているのか等の包括的なアセスメントが重要です。野焼きは明らかに環境上適正な廃棄物管理ではありませんが、そもそも環境上適正な管理が難しい国や都市においては、緊急事態下においては感染防止対策の観点から必要に迫られた対策となるでしょう。他の選択肢がない場合の緊急措置として、必要最低限な管理体制下での野焼きは必要となるかもしれません。

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この考え方は、災害廃棄物対策の考え方と似ています。しかし新型コロナウイルス対策においては、その感染拡大の規模があらかじめ想定が難しいこともあり、どの程度の廃棄物管理体制を構築しておくべきかが見通せません。先ほども例を挙げましたが、2000年代のSARSと今回の新型コロナウイルスは、そもそものウイルスの特性が全く異なるため、感染拡大規模も全く異なっております。しかも、今回の新型コロナウイルスにおける廃棄物管理は、いつ終わるのか、どのような廃棄物がどこからどのように排出されるか見通すことは難しい状態です。しかも一般ごみの中にも感染の可能性があるかもしれない廃棄物が混ざっている可能性が高いため、感染拡大を抑えるための手段が必要です。各国・各都市で廃棄物対策・状況は異なリますが、今ある廃棄物管理体制、その中でも環境上適正な管理・技術と認識できる使用可能なありとあらゆる施設等を最大限に活用することが重要です。ここで学ぶ点は、通常の廃棄物管理体制の一部に緊急対策手法を入れ込んでおくこと、各処理施設の容量の把握、包括的な緊急対応体制を構築していくことになります。

2030年のSDGs、その先にある2050年脱炭素化社会における循環型経済は世界のグローバル化に推し進められて突き進んでいます。しかし、新型コロナウイルスは私たちにこのグローバル化社会を再考(Rethink)することを求めているのではないでしょうか?グローバル化が我々の突き進む道であり、循環経済を構築するために重要な廃棄物管理も、グローバル化・循環型廃棄物管理が求められてきましたが、それを新たな目線で考え直さなければなりません。

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4.今回の新型コロナウイルスから何を学ぶべきか?

我々の廃棄物管理はコロナ廃棄物に対応しているだろうか?
この一年間で学んだことは何であろうか?
新型コロナの世界的大流行を踏まえて、廃棄物管理の在り方は変わるのだろうか?

ここではこの3つ目の問いを掘り下げていきたいと思います。今日はグローバル化と環境的価値観について深堀したいとおもいます。

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まずはグローバル化の意味を考えてみましょう。そんな事は知っている、と言われてしまいますが、新型コロナウイルスの影響を受けた目線で見ると、違う意味のグローバル化がみえて来ます

2019年12月以前の社会は戻ってきませんが、その時においては世界はグローバル化の波が押し寄せてきており、グローバル化こそがSDGsや脱炭素化・循環経済を推し進めるという考えをしていました。それはなぜですか?生産消費社会のグローバル化に伴い、リサイクル産業のグローバル化が進んできたのがここ20年余りの動きでした。バーゼル条約や各国法体制に基づき、リサイクル資源をグローバルに回していくことは、循環経済社会構築において重要な考え方です。もちろん各国が責任をもって最終処分することは重要ですが、各国国内で適正に廃棄物を処理しリサイクル資源として生まれ変わらせ、それをグローバル社会に循環させていくのが、グローバル社会におけるの考え方の一部となっています。皆さんが普段使っている製品の中で、製造・物流・マーケット・処理・リサイクルのすべてが一つの国で完結しているものはありますでしょうか?あまりないと思います。これがグローバル化です。国という単位はもちろん重要ですが、世界はつながっているのです。デジタル社会を迎え、世界は一瞬でつながりました。グローバル化とデジタル化は、2030年と2050年の大きな目標に向けた両輪です。

しかし、この考え方が当たり前であった以前の社会は二度と戻ってきません。私たちのグローバル化の考え方が変わってきました。それまでは、全てがグローバル化の渦の中にあると思われてきましたが、増えるグローバル化と減るグローバル化が見えてきたということです。ではこの二つを考えてみましょう。

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増えるグローバル化は、廃棄物の環境上適正な管理を実施していくための科学的な知見や関連情報のグローバル化を意味します。今日のシンポジウムも増えるグローバル化の一つでしょう。10年前なら今日のようなシンポジウムの開催は不可能だったかもしれません。開催できたとしても、今日のようにスムースな議論を行うことは無理だったでしょう。その頃は今のようなデジタル化が進んでおらず、打ち合わせ程度であればオンラインでもいいけど、このようなシンポジウムや会議でのオンラインは失礼にあたる、という考え方でした。今ではこの考え方が逆です、人と人が物理的に会う会議の方が失礼かもしれません、なんせ、新型コロナウイルスに感染する可能性を増やしてしまうので。

情報のグローバル化も進むでしょう。新型コロナウイルスの世界的流行化において、皆さんが気にされているデータは、毎日更新される感染者数でしょう。さすがに廃棄物分野の情報は日々更新されず、数年後に歴史として統計情報が出る程度ですが、各国の廃棄物管理状況は各国政府等のウェブサイトから、現場の情報は専門家や個人のSNSから大量に拡散されています。ツイッターやGoogleで「新型コロナウイルス」「廃棄物」と入れると、どれを見たらよいかわからないくらいの情報が出てきます。これらの情報を100%完全に鵜呑みにするのは危険ですが、少なくとも我々は一瞬でコロナ禍における廃棄物管理情報を得ることができます。これらの最新情報を調べながら、専門家同士でオンランで対策を考えていくのが、今の私たちの常識です。誰でも情報をすぐに得られる時代、情報の共有化や情報のグローバル化が当たり前の時代において、我々廃棄物管理の専門家の重要性が増しています。グローバル化された情報の中で、どの情報が正しいのか、どの情報が今必要なのか、今後何が必要なのか、専門家の目線で必要な情報を捕らえてその精査化・統合化・高度化、そして適材適所に活用していくことが、将来の新たなウイルス対策における廃棄物管理体制の構築につながるでしょう。

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では減るグローバル化は何でしょうか?経済社会のレベルでは人の移動が減るグローバル化の一つです。人の移動に伴って発生していた廃棄物量は劇的に減少しています。特に観光業で成立っていた街では廃棄物発生量が1/10になった聞かれます。言葉を変えるとそれだけの経済損失を受けてしまった、と言えます。

ではリサイクル資源のグローバル化はどうなったでしょうか?これを把握するには少なくとも数年必要ですが、新型コロナウイルス発生直前の状況、特にプラスチック問題を鑑み、減少するのではという見解が多く聞こえます。プラスチック製品のグローバル化に伴い、適正な取引が担保される形で、資源性プラスチックゴミの越境移動は循環経済の一部であると認識されますが、プラスチックゴミや海洋プラスチック問題を踏まえた社会的課題の重要性を踏まえ減少するのではと見込まれています。そして父になる新型コロナウイルスによる使い捨てプラスチック製品のニーズの向上踏まえ、プラスチックゴミにの発生量も増加が予想されていますが、越境移動によるリサイクルや処分は増えないのではないかと思われます。これが減るグローバル化となります。

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次に環境的価値観について考えてみましょう。皆さんは2年前と今では環境に関する考え方は変わったでしょうか?今日参加されている皆さんは廃棄物管理の専門家なので、もちろん答えは「はい、そうです、特に廃棄物管理に関して」、でしょう。私も皆さんと同じです。

私も皆さんと同じように、仕事のど真ん中が廃棄物管理です。UNEPの廃棄物担当者としてかなり難しい仕事を実施していました。でも、こんな私でも廃棄物管理に関する考え方以上に、環境に対する価値観が変わりました。私は日本の大阪市内に住んでいます。公園もいくつかありますが、基本的にコンクリートジャングルの中です。でもコンクリートジャングルの中でも私自身に変化がありました、「意外ににたくさんの動物が周りにいるな。」と。以前は風景の一つでしかなかった、野良猫やハト、渡り鳥が目に入るようになりました。つまり、私自身の自然に対する価値観が変わったと言うことです。

自分だけかと思い、同僚や友人に聞いてみても、皆さん同じような答えが返ってきます。また、日本における緊急事態宣言、欧州でのロックダウンを踏まえて、世界各国のUNEPの同僚やその家族・友人、ニュースを見ても、多くの方が公園で楽しむとか自然に触れ合うのが楽しくなった、そこにいる鳥や花の美しさに初めて気がついたなどの声が聞こえます。皆さんはどうでしょうか?皆さんの中でも何か変化していると思います。それは環境に対する価値観が変わっていたことです。逆説的になりますが、新型コロナウイルスのおかげで、人間が本来持っている価値観を再認識したのです。

これは廃棄物管理や環境管理分野からの考え方ではなく、自然科学と哲学的観点からの思考ですが、これに改めて気がつくかどうか、だからこそSDGsが必要なんだ、だからこそ私達がそれぞれの得意分野や専門分野で実学として行動をするべきであるのです。そもそも人間は人の種として自然の一部でした。それがいつの間にか人間が作り出した知識や社会、そして技術は自然に勝るもの、コントロールできるものと大きな勘違いを始めました。それから数百年経過し、気がついたときにはすでに遅し、気候変動、生態系崩壊、化学物質・廃棄物による汚染の三大地球危機を引き起こしました。その一番先に突如出てきたのが新型コロナウイルス。結果として、私達が自然の大切さ、自然と共存するべき責任を再認識するに至ったのは皮肉ではないでしょうか?

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では私達には何が必要でしょうか?自然を再認識した今、何をするべきでしょうか?

身近な事から考えてみましょう。今私たちが求められているのはSDGs的な行動、つまり環境に優しい行動です。ゴミをポイ捨てしない、ちゃんと分別する、なるべくゴミが出ないお買い物をする、などです。SDGs的行動の根本は人間の理性の根本の倫理的な思考と行動が求められています。当たり前なのですが、目の前の利益を求める人間が常に忘れていることです。

私達が手にしている現代社会は残念ながら優先順位を取り違えています。例えば、「そのリサイクルはコスト的に見合うのですか?」や「何でリサイクルコストを払わないのですか?」、など。これらの質問は第一次産業革命以降、私達が作り上げた社会の結果としての問いになります。リサイクルすること、リサイクルできなければ地球に負荷をかけない形で戻す、Sinkさせるのは当たり前であり、そこに必要なコストは人間の経済活動の一部であるシステムが、本来、私達が作り上げるべきシステムではないでしょうか?それには現代社会の再構築が必要です。今までは何かの問題を解決するための政策や制度、技術で対応。これからは問題を起こさないための倫理的行動が最初から求められます。

と言いつつ、韓国や日本に住んでいると、毎日のゴミ出しがなにか変わったかというと、何も変わりありません。でも見方や考え方が変わりました。多くの方が自分たちの生活を見直したでしょう。ゴミ問題は生活の中で一番身近な環境問題です。76億人が毎日必ず何らかのゴミを出しています。2019年までの私達の社会は、問題が起きてから対策を打ってきましたが、一人一人が人間が本来持っている環境的価値観やそれに伴う倫理的行動をとるべき、と再認識するきっかけとなったのもこの新型コロナウイルスではないでしょうか?

言い換えると、私達の生活を最も変えたのは、新型コロナウイルスよりも遥かに大きな危機、つまり気候危機、自然危機、汚染危機を認識したことではないでしょうか?

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新型コロナウイルスはその影響から人間に最悪のシナリオを及ぼしているかもしれませんが、それは端的な考えです。世界を持続可能な軌道に乗せるには30年しかありません。最高のシナリオは、新型コロナウイルスから地球規模の課題解決について学ぶことです。もし学んだ場合、2050年まで我々は持続可能な軌道に乗ることができるかもしれません。

私達は持続可能な社会を作る事を知っています。そもそもの人間社会は、つい250年頃前までは持続的な社会でした。そして今は持続可能性のための知識や技術が日々高度化されています。そして私達は環境的価値観と倫理的行動に目を覚まさないといけません。持続可能な経済に向けて、重要な廃棄物分野も資源循環につながるようにしなければなりません。

UNEPは韓国と日本は世界の廃棄物管理をリードしている事を認識しています。今年は、両国による廃棄物の研究分野の連携が25周年となる重要な年です。UNEPは、韓国と日本のリードで、今の厳しい地球環境危機における新しい社会に必要な廃棄物管理体制・実施につながる高度な知識、そしてその実践が行われる事を期待しています。そして2050年に、「2021年に韓国と日本が切り拓いたから今の脱炭素化・循環経済社会の構築につながった」と言える事を希望しています。

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