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ステンドグラスの向こう

 引越して来て初めて出来た友人が教えてくれたカフェは、車通りの少ない田舎のメインストリートから少し入った林の中で、大きな窓に向かう一人掛けのソファに腰掛けて、木漏れ日が移り変わり揺れるのをただ眺める、そういう時間がとても心地のいい店だった。広いウッドデッキに茶色く乾いて丸まった枯れ葉が落ちて、風が吹くところころと転がっていく。
目の前の小さな林のお陰で、温かい日差しは入るけれど、私の座るソファにはちょうど届かず、ほかほかと温かい。

彼はきっとこの店を気にいるだろう。
そう思った。
もしまた彼と会えたら絶対にここへ連れてこようとも思った。

店のメニューは飲み物のみ。いくつかのコーヒーと紅茶、ほうじ茶と抹茶。食べ物はほうじ茶にお餅かあんこが付くだけだ。

この静かな空間も、自然の中の木漏れ日も、大きな窓に向かう木製のソファも、数種類のコーヒーも彼はきっと好きだ。

太い丸太の梁も、薪のストーブもそれに向かうように丸く並んだ一人掛けのソファも、彼はきっと好きだ。

秋の肌寒く強い風に飛ばされてきた蟷螂を見ていた。ウッドデッキに置かれたオブジェにゆっくり確かめるように登る蟷螂は今にも落ちてしまいそうで、母親になったような気分で窓越しに身を乗り出しながら見ていた。
彼とならそういう時間さえいとおしいだろう。そんなつまらない時間さえ、いい思い出になるだろう。
そう思えるけれど、そう想いながら一人でいるこの時間もまたいとおしい。


彼の誕生日のケーキを買うお店も決めていた。
休日は昼まで寝ている彼を起こすための美味しそうなモーニングのお店だって知っているし、インスタを見れば彼の好きそうなものばかりが目につく。

今は、まだ、彼にはそれを贈れないけれど
私は捨てきれていなくて、いつかと未来を信じている。

熱くて飲めなかったほうじ茶が冷めた頃、風がやんで、冷めたほうじ茶を飲み干した。

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