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「ヤマト少数民族文化論」工藤隆

「ヤマト少数民族」という語感が若干わかりづらく、興味を惹かれて手に取ってみました。一言で言ってしまえば、「日本という国は少数民族によって建国された」ということなのですが、この説明だけだと色々な解釈が可能です。

まず、そもそも「国家」を形成した時点で(著者も指摘している通り)「少数民族」とは言えません。また、国家全体が単一の「少数民族」によって建設されたのか、あるいは「先住民族」を「少数民族」が支配した、というような論調なのか、という論点もあります。本書では、日本は複数の「少数民族」が混ざり合ってできた、というような歴史的・あるいは民俗的な過程が本書の主題としてまず一点。

そして、より大きなテーマとしては、「国家形成」に至った民族が「少数民族的」というような解釈があって良いのか、という根本に関わる問題を扱っています。

「少数民族」という概念がそもそも、相対的なものでしかないので、じゃあ具体的に何なんだよ、というようなことを、少数民族の定義から始まって、神話と祭祀をはじめとしたフィールドワークと、先行研究の成果を引用して紐解きます。各地の「少数民族」の文化に触れることができる本でもあるので、好きな人にはいいかも知れない。

私がこの本で好きな箇所は2つあります。まず一つは、冒頭の「日本人は世界中でも稀な、『騙すよりも騙されろ」という国民性を持っている」という気づき。

日本では美徳、かも知れませんが、国際基準でみたら生存に関わるこの価値観は美徳でもなんでもなく、特異な国民性と言って良いと思います。わたしはかねがね、こういった国民性、相争うことを嫌う点、などを挙げて、日本とは「世界の色んな民族から、ケンカの下手な人が流れてできた国なんじゃないか」と考えてきました。本書はその感覚値を民族の移動の過程として検証してくれる研究であり、ありがたく読ませていただきました。

もう一点本書で好きな点は、「神話の現場の八段階」という分類です。集落の中で歌・踊りの中に現れる神話から始まり、外の者に語り聞かせる話、文字化されたもの、最終的に「古事記」のように国家の伝承として遺されるもの、という神話の発展段階を追っています。これらは各地の神話の継承の考察に広く当てはめることができる切り口で、要素ごとの知識移転の濃度と組み合わせると、より詳細な伝播の考察ができるように思います。

以上、大変に濃密な内容を含みつつも、語り口は平易であり、豊富な写真資料とあわせて非常に読みやすい本です。内容が網羅的でもあるので、「日本民族の起源」というようなテーマに関心のある方の最初の一冊としても、オススメのできる本です。


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