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「白村江の真実 新羅王・金春秋の策略」中村修也


新羅の武烈王こと金春秋が、王位につく前からいかにして新羅という国を守るために東奔西走してきたか、という大河ドラマのような一冊。

7世紀朝鮮半島(と日本の)情勢シリーズ。高句麗・新羅・百済の三ヶ国の確執を、史書の記述を中心に若干の物語仕立てを交えながら構成しているために非常にわかりやすいです。

人物・出来事・地理的な位置関係を豊富な写真と共に記述していて、ビジュアルにも印象豊か。出典も史書が中心のため、気になるところは後追いも容易です。

石渡氏の本の紹介でも書きましたが、6−7世紀の日本の情勢を知るためには、朝鮮半島の情勢を知ることが不可欠です。本書は、そのあらましを、中国も含めた東アジアの一大事件である白村江の戦いに結びつけながら時系列で知ることができます。

本書ではタイトル通り、金春秋(王位即位前の呼称として、本書ではこのこの呼称で統一されています)を中心として、あたかも全てが金春秋の策略通りに動いたかのように書かれています。筆者はよほど金春秋に思い入れがあるのでしょう。実に活き活きと、魅力的な人物に描かれています。このような深謀遠慮と忍耐心に富んだ政治家が現代にもあればなあ、と思わずにはいられません。


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