フリーランスを「使い捨て」にするベンチャー企業の実態。 ウェブ制作X社が駆使するやり方とは。(エピソード2)
ウェブ制作X社にて、プロジェクトマネージャー兼ウェブディレクターとして業務委託契約のもと常駐勤務をしていたフリーランスのAさんと、Web制作全般を担当していた元社員であるBさんがブラック企業ユニオンへと加盟しました。
そして2019年5月20日に団体交渉を申し入れ、現在交渉中です。
今回の投稿はAさんに寄稿いただいた事件の経緯を説明するための文章の続きです。
前回の記事はこちら。
https://note.mu/sguion/n/n265ada0b4566?magazine_key=m96fa40bed4e5
4月1日の勤務初日。
10時の出勤後は特段のオリエンテーションも無く、とりあえずの作業スペースへと案内され勤務開始となりました。まずはプロジェクトメンバーとして事前に伝えられていた3名のスタッフとのコミュニケーションからスタート。
ウェブチームのメンバーとして紹介されたのはプログラマーのBさん、デザイナーのCさん、そしてインターン生のDさんの3人でした。
Bさんは小学生の頃からプログラミングの経験があり、ウェブサイトのコーディング、プログラミングを全て1人で担当していました。ウェブ制作X社では前任のウェブデザイナーが退社した後はほとんどウェブサイト制作の仕事を処理する事ができず困っており、そのあとに入社したのがBさんとのこと。
そしてデザイナーのCさんは、元々グラフィックデザイナーとして広告等の制作業務に従事していたようですが配置転換され、ウェブサイトのデザインを任されるようになったようです。これまでのウェブチームの制作フローはCさんが作成したグラフィックデザインを基にBさんが全てコーディングするというもので、ブラウザ上で動作するアニメーションなども含め技術的な部分は全てBさんが制作していました。
そしてインターン生のDさんはウェブアプリケーションのUI設計や、開発を外注している外部のフリーランス技術者とのコミュニケーション窓口を担当していました。
初日は3名の興味関心やデザインの好み、これまでの作品等を見せてもらいながらそれぞれのスキルレベルを把握し、今後の方策を立てることに集中しました。
スキルレベルに関していえば、Cさんはまだデザイナーとして主体的にデザインを構成するだけの能力は無いものの適切な指示があれば客先に出しても恥ずかしく無いものを仕上げられるレベル。Bさんはなぜかデザイン面での権限を与えられていないもののウェブサイト制作に必要な技術の多くを備えていて洗練されたアニメーションの実装が可能なレベル。Dさんは現状スキル面ではプロレベルには達していないものの意欲や興味関心は高いので今後の指導によっては化ける可能性があるレベル。
現状このメンバーで同業他社との品質競争に耐えうるレベルの制作物をコンスタントに生み出していくことは困難であることを早い段階で社長と営業担当に伝えると、その事に理解を示してくれていました。
当初の依頼ではこのメンバーで株式会社北風と太陽のウェブ制作案件を継続的に処理していける体制を作って欲しいとのことでしたので、CさんとDさんにはまず洗練されたデザインを制作するために必要な考え方を、Bさんにはウェブサイトの制作技術以外にもより複雑なバックエンドでのプログラミング技術等を身に付けてもらう必要がありました。
そのための教育的な課題を課していきながら3人を育成する旨を社長に提案し、本社近くの本屋に3人を連れていきデザインの専門書や技術書を見ながらのディスカッションや書籍の購入をする許可を頂き、実際に実施しました。
進行中のウェブ案件も納期にかなり余裕があったため、この段階では社長の協力的姿勢もありウェブチームの組織作りに力を入れることができていました。
ただ、Bさんとコミュニケーションを重ねていく中で気になる点もいくつか出てきました。それは実際のウェブ制作業務においてBさんにかなり負担がかかりすぎているという点と、Bさんがウェブ制作過程の意思決定において何の権限も与えられておらず不満を抱いているという点でした。Cさんはグラフィックを起すまでのデザインはできるもののプログラミングの知識は一切なく、それを補完する為の仕事は全てBさんが受け持っていました。
指導的立場にある社長も知識が一切ないのでBさんに過度な負担をかける結果となっている、といった状況に見えました。社内でのBさんの発言権についても、社長の意向であまり認められていないようでした。社内でBさんが社員全員の前で社長から理不尽に馬鹿にされるような場面を目にすることもあり、私も社風に疑問を持つことがありました。
Bさんの中に渦巻く不満解消は私の課題でもあり、少しずつ2人に働きかけていかなければならないと強く感じていました。
その後もチームマネジメントに時間を割きつつ業務の全体像を把握しようと動いていましたが、勤務初週の金曜日である4月5日に不穏な話が飛び込んできました。
ウェブ制作X社が運営するウェブサービスBの開発を依頼しているフリーランス開発者Tさんとの間にトラブルがあり、開発を断念するとのことでした。
Tさんとの連絡窓口を務めるインターン生のDさんから相談を受けたり社長からの聞き取りをする中で分かってきたのですが、開発は当初XX万円規模から始まるも実装する機能の追加や要件の変更、追加などを重ねて最終的にXX万円程度まで膨れ上がっていき、ウェブ制作X社側の要求を満たすことができないまま納期を過ぎて数ヶ月経つとのことでした。
まずあの規模の要求内容をXX万円程度の小額で発注していることに驚きましたが、会社側はあまりそのことには触れて欲しくないようでした。
私に対しての相談内容としては、次のようなものでした。
①ウェブサービスBの開発を東南アジアの開発業者に安く発注した場合に、プロジェクトマネージメントはできるか?
②Bさんを中心とした社内での開発を進めることは可能か?
③新しく開発を依頼するフリーランスの開発者を選定する場合、協力してもらえるか?
そして①は一度打診された後すぐ立ち消えになり、②と③で準備を進めることになりました。この時の社長の方針は二転三転し、勝手にプロジェクトメンバーに話を持ちかけたりと混乱がありましたが、まずはBさんと過去の資料を見ながらウェブサービスBのデータベースを含めたバックエンドを精査してみることになりました。
SE経験のある方ならその危険性が分かるかと思われますが、このウェブサービスBについては、過去に4〜5人程度の開発者が開発に携わってきたとのこと。
またこの時にDさんから開発者Tさんとのやりとりの記録や契約書とされる書面を見せてもらう機会がありました。Tさんは残されていたやりとりの記録から開発技術や知識面では概ね問題が無いように見受けられましたが、実際にDさんから見せてもらった契約書とされる書面を見る限りでは契約書の作成や要件定義プロセスに関する知識が乏しかったようで、大変な苦労をされたようでした。ウェブサービスBの構成等の情報はここでは書くことができませんが、かなり大変な案件でした。
その後Bさんを中心として開発を進めることで本人に了解を取った矢先に、社長から新たにウェブサービスBの開発を依頼できるかもしれない外部のフリーランサーを見つけたので面接に参加してほしいとの打診がありました。
面接日は勤務2週目の金曜日、4月12日でした。
結果的にその面接を境に、社長は私に対する態度を豹変させることになります。
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