即興×競作【即興小説】2022/8/1 5 文芸部@世田谷学園 2022年8月1日 12:24 以上のキーワードから、3つ以上使う。制限時間15分。 家の前にメガネが落ちていた。誰のかはわからない。 グラデーションのような色合いで、赤と茶透明が混ざり合っている。赤色ということは女性のものだろうか?しかしこれだとは思わなかったが、食べてみないことには仕方がない。 ということで、適当な調味料を買ってくることにした。百貨店に行こうか、安いところへ行こうか、そこそこ迷ったけれども、とりあえず遠出をするのは面倒なのでコンビニで済ませてしまうことにする。 今日は熱帯夜、日差しはないが、蒸し蒸しとした暑さが私に襲い掛かった。水筒を持ってきといた方が良かったかもしれない。道中、キノコが生えていたが無視をする。あんな危険なもの、食べられたもんじゃない。 コンビニだ。明るい。眩しい。いらっしゃいませの声は掠れたようにしか聞こえず、いつもの死にそうなおじさんしかいないことを理解する。とりあえず、何が合うのかを考えてみた。小麦粉等も考えたが、メガネ本来の味を失うことになってしまうのではないか?いや、いや、それでは天ぷら屋を否定することになってしまう。天ぷらは、確かに素材を活かした調理法だ。しかし、少し気乗りがしなかった。 仮に三本……、いや二本程度あれば、天ぷらを選択したかもしれない。しかし、一本だけ、一本だけなのだ。やはり生で食べた方が良い気がする。いや、確実に良い。ならば、何を買うべきだろうか。 家に何があったかを思い出す。確か、たこ焼きソースとお好み焼きソースならあった。しかし、醤油はなかった。ついでに言うならば、わさびもつい一昨年あたりに切らしていた記憶がある。今回は刺身風に、わさび醤油で食べることにしてみよう。 レジに渡し、醤油とわさび、ついでに味変用員として一味唐辛子を買っておく。七味唐辛子も好きなのだが、私はどちらかといえば一味唐辛子の方が好きだった。理由は特にない、ような気がする。ただ、子供の時、親がよく買ってきてくれたのが一味唐辛子だったからかもしれない。高校2年生 倒れ込んだ。もう一歩も歩けないほど気持ち悪い。6時間前は踊ってたりしてたのに。何回吐いたかは覚えていない。もう参加者が誰かも覚えていないさっきから、視界もよくない。後悔してもしょうがない、地を這って家に行こうとする。おえ、また吐き気がしてきた。でも地面をよく見るといろんなものが落ちてるんだな。おえ、鞄、靴、メガネ、帽子、なんだ人まで落ちてるじゃん。「おい、起きなよ、おーい 」返事はない。ちっむしかよ。もうなんかもらっててやろう。ていっても、鞄とかなんか赤くなってるし嫌だな。あ、メガネは大丈夫っぽい。もらって帰ろう。これつければ視界良くなるんじゃないかな。メガネをつけると何かの起動音がした。 ギュイーン、人を察知しました。起動します。繰り返します、人を察知しました、起動します。電源ボタンには触らないでください。 機械的な音声が聞こえたと思ったら、目の前が暗くなった。そして周囲が見えるようになった。思わず後退りした。夜道なのに、昼間みたいに明るい。メガネを外すと、また暗くなる。つけると周囲は明るく見える。こりゃいいな。そう呟いて、帰ろうとした。そしたら、また機械的な音声が何かいった。あなたの家をマップに記入しますか? なんのことかわからないけど全部イエスと言っといた。そしたらまた頭に響く声で、記入に成功しました。送り届けますか? イエス。その次の瞬間、俺は玄関にいた。中学1年生「メガネメガネ!」 それは昭和の伝統的漫才の反復ではない。かつて、伝説の漫才師は、メガネを探す姿でお茶の間を爆笑の渦に巻き込んだ。「メガネメガネ!」 絶叫する相方は、既にメガネをかけている。 そのメガネは、激辛だった。レンズにもツルにも鼻あての部分にも、ハバネロのペーストが塗りたくられていたのだ。「メガネメガネ!」 相方が叫び続けているが、俺にはどうすることもできない。それを外してやろうにも、手袋もタオルもない。棒のようなものでもあれば、引っ掛けて外してやれるが、残念ながら、舞台の上には何もない。 せめて、お客さんが笑ってくれていればいいのだが、残念ながら、誰も笑っていない。そりゃそうだ。二人の漫才師が出てきて、突然、そこに落ちていたメガネを拾って掛けた男の方が絶叫し始めた。シュールすぎて、誰もついて行けない。俺だってついて行けない。「メッガッネッ! メッガッネッ!」 相方は、メガネの一音一音に力を入れ始めた。なんだか、メガネコールを要求しているような口ぶりだ。流れのある中で、突然の語りの変化であれば、もしかしたら面白かったかもしれない。実際、客席の何人かは、半笑いになっていたりする。しかし、これでは、爆笑は取れない。俺の欲しいのは爆笑だ。 そもそも、相方にメガネを拾われたのが、今回の間違いだった。気づいたのは、俺の方が早かったのだ。真っ赤に染まったメガネ。それを見つけた瞬間、相方の様子を伺ったのが、間違いだった。顔を上げた時には既に相方は床に倒れ込み、その勢いで、メガネを顔に装着したのだ。「メッガッーネェッ! メッガッーネェッ!」 まるでオペラのような仰々しい語り。両手を広げてアピールしているが、前が見えていないせいで、俺の方を向いてしまっている。せっかく、客席にちらほら笑い声が上がり始めたというのに、これでは効果は半減だ。 しかし、相方の様子はどうもおかしい。ネタとしてアピールしているのではなく、本当に俺に向かってアピールしているようだ。 分かった。「メガネメガネて、君、もう掛けとるやないかい!」 俺のツッコミが、相方の左肩に炸裂した。「どうも、ありがとうございました」 拍手が聞こえる。良かった。俺が舞台をぶち壊すようなことにならなくて。顧問 目を覚ます。午後五時。爽快感もやるせなさが入り混じっているものの、それでいて気だるい。重い体をソファから起こす。 空腹感と、火照った体を冷ましたい欲求から冷蔵庫を開けた。こうしていると、数分放心状態になる。が、警告アラームでふと我に帰った。冷蔵庫の扉を開けっぱなしにしていたせいだ。どうしようもなく安い音。それを聞くたび、正体のわからない虚無感におそわれる。 やっと目の焦点があってきた頃、冷蔵庫にろくなものがないことに気づいた。調味料。スライスチーズ。以前おもむろに食べたくなって大袋で買ってしまった蒟蒻ゼリー。今はもう見たくもない。 スライスチーズを貪りながら部屋着のボタンを外し、Tシャツに袖を通す。(下は部屋着で良いな…)なぜだか一刻も早く外に出たかった。一日まだ一歩も外に出ていない自分を急かす何かがあった。中学2年生 道端で見つけたコンビニに入る。今の僕は欲しいものがある。雷で家が焼けて一週間、アパートを借りたが、ちゃんとした一軒家よりも欲しいもので、激辛味のサラダだ。コンビニで期間限定の代物で、いっつも売り切れている。サラダコーナーを見るが、それらしきものはない。なので帰ろうとすると、メガネの店員に声をかけられた。「何をお探しでしょうか?」「期間限定品の激辛サラダです」 どうせないんでしょと思いつつ答えたら、「それならレジの方で商品をお渡ししますよ。」と言われたので驚いた。レジに並んでそれを購入した。親切だったなあと思いながら、借りたアパートに戻る。火災の日を思い出しながらサラダを食べる。「やっぱ家、買ったほうがいいのかな。なんか窮屈なんだよな。」「む、このコンビニサラダ、添加物は?」添加物表示欄を見る。僕は、添加物には気を使う人なので、こう言うのは気になるから、先に見ておくべきだった。中学1年生 そうだ コンビニに行こう そうだ京都に行こうみたいなノリで言ったのは和人だった。 コンビニまでは徒歩1分。自転車で行けばもっと早く着くがぼくはあえて徒歩で行く。 徒歩で行くと本当に楽しい。もちろん自転車で行っても風を感じることができてとても気持ちがいい。しかし徒歩で行くと何がいいかっていうとそこに名もなき世界が広がっている。 道端で見つけた小さな花。 階段の前にあった赤いポスト。 コンビニにつくまでにも、発見はたくさんあるものだろう。 和人はコンビニの中に入ると、おどろいたようにこちらをむいていった。「改装されている」 ここは数日前に改装されたらしく、おいてある商品もバリエーションが増えた。 いつも買うコーヒーはいつも通りレジの横にあった。 親切な店員さんは、いつも眼鏡をかけている。 今回は眼鏡はかけていなかった。 こんな感じで人の違う一面を見られることだって気分転換にもってこいだ。 今日は和人も雰囲気の違う洋服だったな。 さて今日は何を買おうか。中学1年生 ダウンロード copy #小説 #短編小説 #ショートショート #ショートショートnote #未完成 #文芸部 #即興小説 5 この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか? サポート