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即興×競作【即興小説】2022/8/5

Midjourneyにより生成

今回は、選んだキーワードをMidjourneyに入力して生成した画像を用いて、即興。(なお、キーワードは、この投稿の末尾に記載します)
制限時間15分。

「やぁ、ジュリエット」
「こんにちは」
「くぅ〜今日も冷たいね〜」
「商売相手ですので」
「いやいやぁ〜、でもさ〜、今度飯とか」
「結構です。お代のご準備は」
「もちろんしてるさ。これこれ、この箱だよ」男は胸を張った。
「こちら、品物です。湿気には弱いのでご注意を。それでは」
「え〜もっとゆっくり…」
 
 彼女はドアを閉め、高層ビルから出た。
 
 人間は愚かだ。目先の幸せにとらわれ、後に降りかかる危険に見向きもしない。

 その「目先の幸せ」を人々に提供するのが彼女の仕事。彼女は運び屋だった。人々が、運んだ薬に沈み、埋もれ、壊されていく。だが恨みの矛先は売人でも彼女でもない。初めに手を出した本人自身なのだと。誰かのそんな言葉のおかげで彼女は、多方面からの怨念に怯まずに生きていくことができる。
 何度も殺されかけている彼女だが、武道の腕は一流でそんじょそこらの筋肉バカには負けなかった。

中学2年生

 樹里は夫が運転する車の助手席に座っていた。試験帰りの娘の繭を駅まで迎えに行く途中である。二人は無言だった。
「どうだったんだろうな」
「上手くいっていればいいわね」
「そうだな」
 窓から空を見上げると、青空にいくつか雲が浮かんでいる。車はトンネルに入った。一瞬にして空は遮られ、暗闇にオレンジの光が

高校2年生

 たった一つ残されたのは、スマホの待ち受け画面に表示される写真だった。
 夜の車窓から見る景色は、どこまで行っても真っ暗だ。しかし、僕の姿がガラスに映ることはない。ただ、真っ暗なのだ。
 スマホの画面も、十五秒で真っ暗になる。だから、その度に僕は画面に触れて、彼女の写真を呼び出す。パスワードが分かれば、その写真を手に入れることができたのかもしれない。しかし、パスワードを知っている当の本人は、もうこの世にはいない。
 待ち受け画面に自分の写真を設定していたのは、彼女が自分自身を嫌っていたからだ。スマホを手にするたびに、忌むべき自分の姿が目に入る。依存症から脱却する一つの方法だと、先生は言っていた。
 彼女は、スマホからもこの人生からも逃げてしまった。僕が彼女を見つめるのも、彼女にとっては重荷だったようだ。僕の瞳に映る自分の姿を嫌ったわけではない。それなら、僕の目を潰せば済むだけの話。
 そうじゃない。
 僕の目は彼女の目だった。僕の顔は彼女の顔だった。彼女が僕の前から姿を隠そうとするなら、僕が彼女になるしかない。結果的に、彼女が僕の姿を見なくなるのだとしても。
 真っ黒なガラスには、自分が映る。しかし、自画失認を発症した人には、鏡に映る自分が見えない。だから、先生は彼女の写真を待ち受けに設定させた。写真は自我から切り離されているので、見つめることができるのだという。
 スマホの依存と、自画失認と、彼女が治すべきはどちらの病だったのだろう。
 真っ黒な車窓を見つめながら、そこに何も映っていないのは、僕には苦しい。僕を邪魔する人間もいなくなった今、せっかく彼女を見め続けることができると思ったのに。
 僕が治したいのははっきりしている。

顧問

 窓の外を見るとそこはトンネルの中だった。
 トンネルは嫌いじゃない。一瞬見ただけは、暗いとしか思わないがよく観察すると時折見える謎の扉。奥に行くほど間隔が狭くなって見えるライトなど不思議な物は数多く見受けられる暗闇の美術館ともいえてしまう程だ。展示品は数知れず、時期によって見に来る人も様々になる。
 こんな大きい美術館に来たのは初めてだ。
 そう思った。
 いままで町のはずれにある小さなトンネルは何度も通ったことがあったが光の扉からかなりの距離があるこのトンネルには興奮を抑えられなかった。
 光が少ない分、自然に目立つライトや緑の人を応援したくなるというもの。
 出口に向かって走る緑の人はどこに向かってるのだろう。
 そう思ったその時だった。
 いままで緑の人が緑の森林へと飛んで行った。
 緑の人は森林にまぎれ見えなくなってしまった。
 じきにその森林も途切れると、今度は本当に緑の人はいなくなってしまった。

中学1年生
examination, Passenger Seat, bartender, smart phone, savings box, Juliet

【覚書】
たまたま選ばれたキーワードが、具体物ばかりだったせいか、出来上がった画像に含みがあまりなく、書きにくいと感じた者が多かった。
また、キーワードを先に共有してしまっていたので、画像を用いてと言いながら、元の言葉に引きずられた者が多かった。
一方で、普段、あまり使わない頭の使い方をしたため、新たな発見があったことも確か。
今後、方法を工夫して、再度チャレンジすることにする。
(顧問記す)

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