コイン【Alice in Boon-gain-boon】

収集番号0002

　ある日、ハートの女王が主催するコンサートが開かれた。そこで歌を披露した帽子屋だが、歌のリズムが一定でなかったことを女王から咎められ、死刑宣告を受ける。
　ハートの王は女王を諫め「コインで決めた方が面白いだろう。表が出たらその生意気な帽子を奪い、裏が出たらポケットの懐中時計を奪ってしまおう」と提案する。
　女王はハートのエースから受け取ったコインを帽子屋の方へ放り投げると、「もう飽きた、次だ次！」とコンサートの再会を命じた。
　コインは裏面を上に向けて静止したため、残された王は帽子屋から懐中時計を奪った。
　しかし、バラバラのテンポで歌った帽子屋に一番憤りを覚えたのは女王ではなく、普段から正確なリズムを刻み、帽子屋の頼みとあらば時間を飛ばしたり止めたりしていた「時間」そのものであった。不貞腐れた「時間」は時を刻むのをやめてしまったため、王は懐中時計を不良品と勘違いして帽子屋に突き返した。
　以来、時計は帽子屋の言うことを聞かなくなってしまい、お茶会の6時のまま「時間」は止まってしまった、というのは誰もが知っている通りである。

　その時の物語の脇役で、お茶会での帽子屋の回想からも省かれた哀れなコインがこれ。資料が残っていないため、今となってはどちらが表でどちらが裏だったのかも不明である。

キュレーター　沢志菜 統堯（高校2年）

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