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即興×競作【即興小説】2022/5/12

  • よみがえる

  • ゲーム機

  • 世界一しょぼい

  • 株式会社

  • キャプテン

以上のキーワードから、3つ以上使う。制限時間15分。

 果たして誰が言い始めたのかは、もうわからなかった。
 ただ、風は感じた。世界一の風が、久しく感じたことのない風が。

 インディーゲームを作ろうと、高校で友人が言い出した。なかなかに趣味の合うやつで、発想力もある、まさに天才という輩だった。こいつにならとぞろぞろ人が集まり、その人たちで、様々な意見を交換し合った。いや、楽しかった。自身がぼそりと言ったアイデアが拾われ、他の人のアイデアとともに昇華される。本当に、その時が最も自分にとって青春している時だったのだろう。
 そんな折だった、そいつが失踪したのは。誰だって心配した。当たり前だ。なんの前触れもなく、家族もろとも消えちまったんだから。そして、高校受験に差し掛かった時に、かなり有名な会社からゲームが発売された。ああ、それを見た時には愕然としたものだ。なんせ、俺たちが作り上げようとしたものとほとんど変わりやしないんだから。怒り狂うやつもいたし、泣きじゃくるやつもいた。何人も、何人も、仲間が減っていった。それでも、まだ俺を含め、酔狂な奴がいたんだ。これをチャンスと捉えた奴が、まだゲーム制作への道を諦めてきれていない奴が。
 大学に入った後に、グループラインに連絡をした。まだ、ゲーム作りに興味はあるかと。帰ってくる返事はほとんど無かった。が、しかし、それでも返事を寄越してきた奴がいた。そいつらは学校も離れていたが、でも頻繁にそれぞれの家で会議まがいのことをした。ああ、まがいにしかなれなかったよ。なんせ以前まではあいつが進行もやってたんだから。

高校2年生

 ゲーム機の株式会社に勤めている私の友人はいつも朝食にバナナを乗せたトーストを食べる。彼は休暇中、流星群を見るために車で出かけた時も、バナナと食パンとチョコソースを忘れずに持ってきた。
 彼のバナナの切り方は実に華麗だ。

高校2年生

 うちの部活は世界一しょぼい。そう言われている。学校内はもちろん、他校や県外にもそう呼ばれているという噂もある。何かしらの大会に挑んでも必ず一回戦で敗れ、その弱さに愛想が尽きたのか部員も勝つ気をなくしている。最近では人数も減り、大会の申請もしなくなった。顧問の気まぐれでエントリーしたこともあったが部員のほとんどが出場を拒み、人員不足で不戦勝。
 他から見れば救いようのないダメ部活だが、僕たち一年生にとってはとても大切な新しい居場所。入っていくときの緊張でさえ後に大事な思い出になるんだろう、ここにいる先輩達と、笑いながら話のタネにする日が来るんだろう。そう思うと周りからの評判がどうであれ自分達の部活が愛おしく思えた。何の部活か尋ねられ答えると、引きつった笑顔を向けられたことでさえ、それが涙の滲むほど悔しかったことさえ、どうでも良かった。

中学2年生

 私は小説家だ。小説家、一度は皆が夢に抱くものだろう。
 小説を書くだけでお金がもらえる。最高の職業だ。
 しかし、皆才能がなくてその夢を諦める。
 私も似たようなものだ。才能がないのに、小説家をやっている昔、10年前ぐらいは人気作家だった 大ベストセラー以外はださない作家だった。
 しかし、今はもう廃れている。
 そんな作家に依頼などくるはずがない。
 そんなことを思いながら、近所の公園を歩いている。昔この公園をよく歩きアイデアを出したものだ でも今は…
「あれ、こんなところに会社なんかあったっけ」
 公園の中に建物が立っている。
 この公園にはつい先日来たがこんな建物はなかった。
 看板にはあなたをよみがえさせるゲーム株式会社とある 意味がわからない。
 まあ、でもネタにはできそうなので取材のためドアをノックした。

「すいません小説を書いているものなんですが、お話よろしいでしょうか」
「はーい」
 そして私の前に現れたのはちょっと厨二病感を漂わせる服を着ている青年だった。
「取材ですね、どうぞこちらへ」
 私が案内されたのはえっ社長室?
「あ、あの玄関などでよろしいですよ」
「いえいえ、私たちは人をよみがえさせる会社なので」
 は?
「まずはこのゲームをプレイしてください」

中学1年生

 サンタクロースは苦悩した。袋の中には、倉庫の奥に残されていた世界一しょぼいゲーム機しか入っていないからだ。
「多分、この町の子供たちは、明日の朝、ギャン泣きっすね」
 トナカイが唾を吐いた。
 電線の上を滑るように走るソリは、子供のいる家の上にくると、自動的に止まる。サンタはため息をつきながらソリを降り、ベランダに飛び降りた。
「隣町はPS5らしいっすよ」
「あっちはキャプテンだからさ」
 サンタクロースにもランクがある。隣町に向かったのは、髭の長さも腹の丸さも一級認定を受けている通称キャプテン。彼の元に集まるプレゼントも一級品だ。
「隣町ってことは、あそこの小学校、明日、やばいんじゃないっすか」
 子供の数が減っている地域だ。そのため、二つの町のちょうど真ん中にある小学校に、二つの町の子供たちが集っているのだ。
 確かに、ヨーロッパの一部地域ではサンタ格差は十年前から社会問題化している。ある街ではiPadが配られた隣で、ジェンガが届けられ、子供たちが暴動を起こした。世代間のギャップを埋めようと現金を配ることに決めた地域では、ビットコインのコードを配ったサンタがいたために、やはり親が暴動を起こした。
 日本では、そのような格差があまり生じなかった。その背景には、そもそも日本の子供たちがサンタに対して過剰な期待を寄せていないから、という事情があった。二十世紀の日本の家庭では、サンタ依存からの脱却を旗印に、親がサンタの振りをして子供にプレゼントを買い与えるということが一般化したのだ。結果、サンタの配ったプレゼントは子供が起きる前に焼かれ、親の買った高級なプレゼントだけが子供の手元に残る。

顧問

「おい、なんだよこれ?」
 手に持ったDSの液晶に映し出された文章は、僕にかすかな目眩を起こさせるほどの絶望感を僕に与えたのだった。わざわざ攻略本にも載っていない難しいクエストをクリアして手に入れたその指輪の効果は、「落下ダメージで死んでも一度だけ蘇ることができる」というものだったからだ。僕クラスのプレイヤーになると、落下死するなんてほぼあり得ない。
「こんな世界一しょぼいアイテムを手に入れるために僕は二時間を費やしたのか!」
 僕は横にあったランドセルに拳を振りかざした。分厚い布のようで革のようでもあるランドセルの表面は少し凹んだだけで、その様子を見ても少しもスッキリとしなかった。
 腫れた拳を手で押さえながら水を飲みに台所に行く途中、強い風が僕の顔に直撃した。地面は雨粒に打たれてかすかな悲鳴をあげ、風が木を揺らしている。ゲームに熱中しすぎていたせいで、外の天気がこうなっていたことに気づかなかったのだ。
「そういえば………」
 今は外に働きに行っている母親が、僕に洗濯物を取り込むことを朝小学校に行く前にお願いしていた。帰ってくる直前に取り込めばいいと思ってた自分を殴りたい。
 僕はベランダに飛び出し、倒れ込んでいた物干し竿を起こすと、その後ろには手すりに引っかかってる僕のシャツがあった。僕はそれを取ろうと前に倒れ込むと、突然強風が僕の小さい体に直撃し、僕の体は高い手すりを飛び越えて外に吹き飛ばされた。あまりの恐怖で声も出せない状態だったが、地面はゆっくりと僕に迫ってきている。
 僕は目を強く閉め、衝撃を覚悟した。
 しかし、衝撃はいつまで経っても訪れなかった。
 目を開けると、そこは家のドアの前だった。

中学2年生

 バスケをやりたくなる時期が近づいてきたということはあの頃に戻りたいと思うようになった時だ。バスケとはおそらく最もスピーディーなスポーツだと思う。展開の速さと一般人には遠すぎて狙えないと感じてしまうが故にそれがあっさりと(実際は簡単なことではないのだが)決まってしまった時の快感と驚きと尊敬とが混ざり合って「バスケ」というスピーディーなスポーツが生まれる。
 バスケを制するものは人生を制すると考えている。会社における事業も同じだ。会社での事業は丸いものは持たず、四角いものだけを使って仕事をするものだが気合は同じだ世界一しょぼいと罵られても懸命に目標に向かって努力するものだ。
「亜塁真!こっち頼む」いつものように先輩は頼み事をしてくる。先輩は優しいのだが仕事がそれはもうきつい。毎日倒れるかもしれない。と思いながらやっている。
 いつものように仕事をこなしていると頭がクラクラすると思ったら急に頭痛が走るではないか。すると
「どうしたあるま」昔見慣れた顔が目の前にあるではないか。
「あっ記憶が蘇ったのか」
 しかし感覚はある

中学1年生

 自分の家に、待ち望んでいた商品がようやく送られてきた。自分の気持ちが高まるのを感じながらダンボールの包装を剥がしていく。そして箱を開けて中にある包装も外すと、そこには自分の大好きなゲームの最新作である、デルタラクエストがプレイできる、ゲーム機とカセットがあった。それを見ると心の底から嬉しさが込み上げてくる。このゲーム機のセットが発売したのは3日ほど前なのだが、あまりの人気から店先に置かれたものは一瞬でなくなり、ネット通販に至ってはサイトに負荷がかかりすぎて、ダウンしてしまい、今でも使えないくらいだ。自分ももちろん店頭に買いに行ったが開店の3時間前に行ったにもかかわらず、すでに大行列ができており、結局買うことはできなかった。その後も必死になった店を回ったがどこにも売っていなかった。通販サイトや中古販売サイトを見ても、あったのは10倍以上の値段で転売されているものだけだった。ネットに出されたそれらの商品を見ると、彼らが買わなければ自分の元にも商品が来たかもしれないと思い、とてつもなく腹が立った。

中学2年生

Photo by Lorenzo Herrera on Unsplash

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