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即興×競作【即興小説】2022/7/25

以上のキーワードから、3つ以上使う。制限時間15分。

 僕は、ポケットから動物園を取り出した。
 空には雨雲が広がっているが、まだ雨は降りだしていない。傘を持ってきていないので、早く勝負をつけて家に帰りたい。
 動物園を両手でつかんで広げると、目の前にはゾーンごとの説明が現れる。右手で大きくスワイプして、ネコ科肉食獣のゾーンをパンチする。扉が開く演出の後に、トラやライオン、ジャガーやチーターの檻が展開する。
 一方、対戦相手は猛禽類のゾーンを展開している。ワシやタカの鋭いくちばしが、僕の呼び出した肉食獣たちに狙いを定めている。
 選択を誤ったか。いや、大丈夫だ。トラやチーターの機敏な動きなら、相手が空中戦を選択したとしても、十分に戦える。
「邪魔なんだよ、ガキ!」
 突然、背中に衝撃が走り、前ののめりに倒れ込んだ。何が起きたのか分からない。
「遊ぶなら、もっと広いところで遊べや!」
 だぼだぼのパンツを腰ばきした男が、僕の頭をまたいで進んでいく。
「ダメ! やめて!」
 手を伸ばして男のパンツを掴もうとしたが、届かない。次の瞬間、悠然と立ち上がったオスのライオンが右前足を一閃、男の上半身はちぎれ飛び、肉食獣たちが二つの肉塊に食らいついた。
「ひどい……。せっかく完璧な状態に飢えさせておいたのに」
 肉食獣は、満腹度によってその能力に大きな差が出る。飢えれば飢えるほど、筋力と敏捷性にボーナスが付き、知性にペナルティが付く。ただし、飢えが七割を越えると、逆に筋力と敏捷性にもペナルティが付く。この、微妙なラインを狙って飢えさせるために、二ヶ月間の調整を要した。
 頭上からコンドルの高笑いが降り注いだ。対戦相手の歓喜の声が聞こえるようだ。
 いや、まだチャンスはある。この男の肉は猛禽類にとってもごちそうのはずだ。
「メスライオン!」
 僕の呼び出しに応じて、メスライオンが悠然と現れた。

顧問

「なう」

 2丁目の高架橋。カップルや遊びに行く少年たちの定番の待ち合わせ場所だ。そんなたくさんの「幸せの始発点」で俺は、こんなにも絶望している。やるせなさを振り払おうとスマホを開く。1つ1つ、SNSをチェックする。俺はいまだに、あんなに痛い思いをさせられた人間と繋がろうとしている。そんな自分にまたやるせなさを感じながらも、ストーリーを更新する指は一向に止まらない。かつての友人、恋人の、幸せそうな写真がスワイプされていく。
 一種の中毒だ。そう言っていたのは友人か。テレビで見た専門家だっけか。そんなことももうどうでもいい。街灯に照らされた河をぼんやりと眺める。ここにスマホを捨てられれば楽になるだろうか。でも結局は、孤独が怖い。こんな板一つを捨てることが自分の人生二十三年間を捨てることに思えて、ひどく打ちひしがれた。

中学2年生

暇だな…そう思いながら僕は布団に寝転がる。しばらく天井を眺めて、時間を過ごした後、近くにあったスマホを取る。最近暇になると大体これだ。行けないとは思うが実際これくらいしかやることがないので、しょうがない。20分ほどゲームをやっていたが、特にイベントもやっていなのでただの退屈な作業だった。

中学2年生

ある休日、男は暇なため、レストランの屋外席でなんとなくサラダを注文した。 その時、スマホのブザーがなった。何かと思い見て見ると、雨雲が近づいていることがアプリからわかった。ここは屋外席しか空いていないので、「こりゃ困ったな」と男は言った。しかしサラダを頼んだ以上、食わずに帰るわけにはいかない。 しかし、いくら待ってもサラダが来ない。そして雨が降り出し、男は我慢の限界を越えそうな時に、「こちらサラダでございまーす」ついにサラダが来た。男は「雨に濡れながら物を食うのは嫌だ、中のどこでもいいから中で食べさせてくれないか?」と聞く。「どこも空いていません、申し訳ございません」と言われる。(こんなのなら家で食ったほうがマシだ)と思いながらサラダを食べていると、雷の音がする。雷の白い光が見えた。家の方角だった。サラダは美味いが自分にとってはまずい状況だった。家の近くで雷による火災が発生しているのが見えてしまったからだ。

中学1年生

「歩きパソコン」

 いつからだろうか。スマホとパソコンの立場が逆転したのは。
 私が動物園で久しく会っていない娘を待っている間、暇で辺りを見渡すと、道を歩くとある若者はスマホではなく、パソコンを手で持ちながら歩いていた。
 昔はあちらこちらの看板に「歩きスマホ」を禁ずるといった旨が書かれていたのだが、今は文字数が多くなったからか、少し小さめのフォントで書かれた「歩きパソコン」を禁ずる看板に変わっている。
 パソコンの小型化もその理由の一つだが、やはり最大の理由はなんといっても光学立体コンソールの存在だろう。空中にキーボードを投影し、スマホとは違い、より速く、正確に入力することができるのだ。
 若者が今も昔も用いるチャットアプリを使用する上ではこの上ないメリットだ。
 公共交通機関の中でもパソコンを用いて仕事を行う者はちらほらいるし、オンラインゲームを拡張機能のマウス機能をダウンロードしてプレイする子供が多く、本を読む者など何処にもいない。
「………あ…」
 妻と離婚してから早六年、久しく会っていない、日々成長し続ける娘と思われる少女が私を見て手を振る。その手には、パソコンが握られていた。

中学2年生

 ポツポツと降り出した雨は次第にザーザーに変わっていく。
「チッ、スマホの雨雲レーダーだと今日一日快晴って書いてあったのに」大きな舌打ちをして、まだ5歳のユイに目をやる。そうして大きなため息をついてから、言う
「ユイ、もう雨が降ってきたから帰ろうか?」
 ユイは急に泣き出して
「やだ!まだパパといたい!動物さん少ししか見てないし!」
 できればその願い叶えてあげたいしかし、雨が降るとユイの喘息が悪化するかもだし、とそこまで考えたところで電話が鳴った。目をやるとうわ、クソババアだ。
「はい、もしもし。」しょうがないから応答する
「雨が降ってきましたよ。さっさとユイを返しなさい。あなたは離婚されて親権も持ってないんですよ。もう私の娘は死んでしまいましたが、ユイは私が守るんです」あーだこーだとクソババアが喚き立てる。
「良いでしょ、もうタバコもやってませんし、この後は水族館に行く予定だし」タバコをやってないと言うのは嘘だが、これくらいの嘘は法律だって裁こうとしない
「あなたといるだけでユイには悪影響なんです!」普通に酷いことを言う。確かに俺は妻のミオには離婚されて親権を取られたがミオの母のあのクソババアにそこまで言う権利はないはずだ。
「ユイだってね、俺と一緒にいたいんですよ、なあユイ?」
 スマホをユイに近づける。うん!と大きな声で叫ぶユイ
「なあ、わかっただろ。」俺は思いっきり通話終了ボタンを押す。

中学1年生

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