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即興×競作【即興小説】2022/6/16

以上のキーワードから、3つ以上使う。制限時間15分。

 消しゴムでサラダを作ろう。
 そう思ったのは去年の春のことだった。駅でもらう塾の勧誘のチラシと一緒に入っている消しゴムを集め続けた私は、大学生になった今、大量の消しゴムが引き出しを占領していた。そして、結局自分は消しやすい消しゴムを買って使うので消しゴムはたまる一方だった。
 「なんで使わないのに消しゴムをもらい続けるのか?」
と思うかもしれないが、私は一生懸命塾のチラシを配っている人を見ると絶対に断ることができないのだ。そんな訳で増え続ける消しゴムを使って何か作ろうかと思った時に思いついたのが、よくレストランの前で見る料理のレプリカだった。

高校2年生

 キュ、キュ…そんな不快な音が、僕が生まれて初めて聴いた音だった。全身がまさぐられているようなこそばゆい感覚を感じ、心の中で叫んだ。もし僕が口を動かせたのなら、生物が死ぬ間際に放つような断末魔を叫び散らかしていただろう。
 何せ、僕の体のすぐそばを桃色の刃の槍が通り、頭のすぐ横の壁を風のように素早く突いたのだ。僕が恐怖で固まっていると、桃の槍はすぐにどこかへ飛び去り、いなくなったと思えば、すぐさまさっきよりも濃い色の刃の槍が現れ、壁を突き始めた。不快な音に耐えながら、僕はここから逃げようと体に力を込めて外へ行こうとしたが、壁の表面にいる僕が出られるはずもなかった。
 脱出を諦め、僕はただ槍が飛び出していく様を眺めていると、突然太陽のような光を浴び、思わず目を瞑ろうとした。しかし、僕にはまぶたも何も無いから、ただ眩しさに耐えるしかなかった。徐々にそれに慣れていき、僕は光の差す元を見返すと、そこには白く濁った海の中に浮かぶ、茶色と黒色の中間色のガラス玉があった。
 そのガラス玉に写っていたのは、サラダボウルのように緑や赤で彩られた、花壇の映像だった。花と花との間には、不自然な白い隙間があったし、花びらはスカスカだったけれども、花は笑っていた。その笑顔が眩しかったのだ。
 そして、その映像の端に僕がいた。他の花のような満面の笑みではなく、ぎこちなく笑うチューリップの花だ。
 映像の中心が僕に移動して、僕の顔を白色の破城槌が突いた。体が引きちぎられる痛みと、どんどん全てが消えて無くなっていく虚無感が僕を包み込み、
やがて僕は無になった。
 幼女は手に持った消しゴムで、崩れた笑顔の花の絵を消すと、色鉛筆で満面の笑みで微笑む花の絵を描き直した。その出来に満足したようで、少女は花のように微笑むと、色鉛筆で新しい花を画用紙に描き込み始めた。

中学2年生

 男は暇だった。今日は仕事もなくかと言って遊びの予定があるわけでもない。そのため男は朝から昼ごろまで、布団にくるまってダラダラと過ごしていた。ようやく起きたはいいものの、食欲がなく昨日の晩飯のあまりに少し口をつけただけで終わった。男は考えた。外に行ってもいいが、目的もなく歩くのはあまり好きではない。
 しばらく考えると男は部屋に置いてある一つのパソコンへと目を向けた。男はそのパソコンを開くと開くと、とあるサイトにアクセスした。そのサイトは様々な商品を扱っているが、男は他の商品には目もくれず、一つの商品コーナーへとアクセスした。海、山、川、他には犬やキリンオラーウータン、果てには女性や男性まで売られている。もちろんこれは決して違法な裏サイトなどではない。ここに売ってあるものは全てバーチャルなのだ。
 二十年ほど前、とある科学者の発案を元として空間内に実際にバーチャルを生み出し、それに触り心地などの全ての情報を反映できるシステムが確立された。これによって人々はバーチャル用の部屋を購入し、それに様々なものを購入して反映できるようになった。

中学2年生

 彼は大のゲーム好きだった毎日のようにゲームをしては寝るこれを繰り返す生活だった。だから学校の英語の授業中、What do you do after schoolと聞かれた時、かれにはゲームをする以外答えることがない。彼の友達は心配して趣味の一つや二つ作ったらどうだと勧めるがこんだけ毎日のようにゲームだけをしてきた生活を何年も続けてきた彼にはそんな発想はできなかった。そんなある日、学校から帰っていると聞いたこともない愉快な声が聞こえてくるではないか。声を頼りに行ってみると、そこには1人のラッパーがいる。ラッパーが話していることは実に刺激を与えてくれる良いもので、彼はその声に感動した。その日の夕方彼が家に帰ってゲームをやろうとするとテレビのニュースで「新しいゲームが発売されました」との放送があった。次の新聞でも、そのまた次の日のニュースでも、ついには作者の特集まで組まれるようになった。なんでそんなにも報道されているのか不思議に思った彼が導き出した結論はただ一つ。実際に買ってプレーしてみることのみだった。ちょうど何ヶ月分かためていたお小遣いを使い果たしてしまったので、母のお手伝いに勤しんでいると母が「あーちゃん、これ買いたいんでしょ。ずーと攻略本とか読んでるし。なんせ溜めてたお小遣い攻略本のために全部使っちゃったんだからね。そんなにも買いたいのならいいわお小遣いあげる!」なんと、なぜか溜めていたお小遣いは攻略本のために使ってしまったようなのだ。そんなことないはずなのに。。。

中学1年生

30xx年、東京

 そこはもう都市とは呼べなくなっていた。
 100年前に起こったA国とR国の戦争が過激化し、日本も巻き込まれ、核ミサイルも4つほど東京に着弾した。
 なんとか16年前に戦争は終結したが、東京は荒れ果てていた。
 立て直すのを嫌がった日本人はvrを大量生産した。そしてそこに国を作った。日本の技術は高く、どちらが現実か区別がつかないほど精巧だったという。人はその世界を神々の国と呼ぶ。
「バーチャルの世界はいいよな」
と孝が言った。
「いやわかりきってることだろ」俺は仕事の途中なので適当に返す。
「だってよー、前VR機器外したらさ、もう誰もいなかったよ」
と孝が興奮したように喋り続けている。
「この世界にいれば、現実に戻ってご飯を食べなくてもいいし」
と孝が言ったところで、俺も仕事が終わったのでちゃんと対応してやることにした。
「まあ、確かに、いろんなものをダウンロードして食べた感味わえれるし、花とかもいっぱいダウンロードできるしな」
「それだけじゃないよ、映画、漫画、文房具…あ、文房具でおもいだしたんだけど、」急に声を顰めて俺の耳元にこしょこしょと話してくる。
「殺人消しゴムって知ってるか?」殺人消しゴムなんて聞き慣れないし、そこまでかっこいい名前でもない。
「なんか、その消しゴムを使うと、バーチャルの世界からその人を消せて、消された人は2度とバーチャルの世界に入れないんだって」

中学1年生

Photo by Mick Haupt on Unsplash


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