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渇望【即興小説】

 不意に虫かごに入った虫を眺めたくなったので、虫を捕まえることにしました。
 まずは虫かごを買わなければなりません。虫取り網も必要でしょう。必要なものを書き出さなければなりません。それは数秒で済むことでした。
 100円ショップに向かいます。私にとっての110円ショップです。皆さんにとっては何円ショップでしょうか。まだ108円ショップの人はいますか?時代遅れですね。まだ105円ショップの人は?あの頃に100円ショップってあったのでしょうか。
 100円ショップ、108円ショップ、110円ショップに着きました。ちゃんと多様性には配慮していきましょう。店に入り、少し奥にいったところに虫取り網と籠がありました。真緑です。どうしてこんなに緑なんでしょう。草むらに紛れるためでしょうね。こんな簡単なことを考えてはいけません。全くバカなんだから。
 では、服も緑の方がいいのでしょうか。きっとそうなのでしょう。私には道理を理解することは難しいですが、推測を立てることならできます。間違いありません。しかし、緑の服なんてものは見当たりません。奇抜な服ですが、一着くらいはあると思ったんですがね。しょうがありません。迷彩のタオルを買いましょう。頭に巻いておけば、少しの役には立つはずです。
 向かう場所はどこにしましょうか。森がいいとは思いますが、近場の森はなかなか遠場なので困ってしまいます。森がなければ林です。森でなくて林であるところは、確か付近にあったと思われます。早速向かいましょう。しかし、今更になって伸縮可能な網を買わなかったことに後悔してきました。これでは重いですし、首に負担がかかります。折れてしまってもしょうがない。折れてしまったがしょうがない。まあ気にすることではありません。確か森ではないが林としての基準を満たすほどに木がある気がするところは徒歩圏内だったはずです。足が心配ですが、大丈夫でしょう。
 思ったよりも遠かったです。虫取り網が虫取り網としての役目以外に松葉杖としての役目を果たしてくれることを期待しましたが頼りなく、虫取り網まで折れてしまっては困るので最寄りのコンビニで傘を買うことにしました。傘を杖代わりにするなんて、なんたるお下品なことかと思いますが、今から松葉杖を取りにいっては時間がありません。妥協しましょう。
 曇天にも関わらず、ビニール傘を買う私が物珍しいのかエゲツない目で見てくる店員を横目に店をでます。嬉しいことに、ビニール傘は傘としての役割以外に杖としての役割を果たしてくれるようでした。松葉杖としては頼りないですが、杖としての役割を果たしてくれるのならば話は別です。日傘としての役割も果たせない子ではありますが、ありがたく使っていきましょう。
 またそれから、しばらく歩いて目的地につくことができました。ここは、森でしょうか、林でしょうか。思ったよりも木が多い気は大いにしますが、木漏れ日が強く、広くさしているので林としての条件も満たしているように思います。微妙なラインです。
 熟考の結果、木がある場所として扱うことになりました。木がある場所は木がある場所であるから木がある場所なんですね。単純な結果に多少味気なく思いつつも、本来の目的を忘れてはなりません。そう、虫を虫かごに入れて、家で眺めるのです。決意を新たに、私は木がある場所に踏み出しました。転びました。
 そういえば足元の状況が悪いところは補助がないと厳しいかったように思います。これは困りました。どうにかして起きあがろうとしますが、首が座らず、バランスも悪い。しょうがないので、転がって帰ることにしましょう。しかし、その前に虫を見つけなくてはなりません。近く、手の届く範囲にある大石をひっくり返すと運よくダンゴムシがいました。今日のところは、これで妥協することにしましょう。片手では取りづらいですが、どうにか取れる範囲で取り、虫かごの中に入れようと苦戦しているところで警察と救急車を呼ばれました。とりあえず、呼んだ方に虫かごの中にダンゴムシを入れることをお願いします。
 ようやく、虫かごの中に虫がいる様を見ることができました。悔いなくいくことにしましょうか。

窮敏(高校1年)


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