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今日も2軍の靴を履く

盛れない日はいつも雨だ。
しがない30代半ばに差し掛かったOLには、10年前から彼氏がいない。

趣味も女友達も仕事も充実した日々で、いつも秋から冬、そして花火大会がある夏に「彼氏が欲しい」とぼんやり思っていた。

『今年のクリスマスこそはイルミネーションを彼氏と見に行きたい』
『今年の花火大会こそは浴衣デートする』
とその時期に友達に公言しては、「毎年聞いてるよそのセリフ」と笑われていた。しがないOLのテッパンネタである。

そんなOLにもまさかの転機が訪れる。

皆さんは、大人になって恋をしたことがあるだろうか。
「もう好きとかないよ。いい大人だし。学生じゃないんだから」と周りで結婚した友達に言われたのを思い出した。

しがないOLは10年間、恋というものをしたことがない。
正確には『一般人には』恋をしなかった。趣味が充実していたのはそれもあり、遠征遠征また遠征。婚期を逃していることを横目で気付かないフリをしながら、休みという休みを趣味で埋め尽くしていたら30半ばまできてしまった。

今まで横目で10000往復ぐらい通り過ぎていたモノに気づかされた原因は、「推しの結婚相手(と言われている人)の写真の左手の薬指の光る指輪」だった。見た瞬間、「あっ…」と自室で声が出た。闇でも嫉妬でもない。『いつも夢を見せてくれている推しが、現実を生きている』ところを目の当たりにしてしまったことへの衝撃だった。

【私は夢の中にいたんだ、そろそろ目覚めないと。】

そんな、しがないOLに渡りに船、某感染症のおかげで土日のイベントが全部なくなり、推しに会える機会がすべてキャンセルになった。とても残念だったが、単純に思った。『これはチャンスだ』と。現実を見ようと。

ど れ だ け の 痛 さ を 伴 っ て も 。

しがないOLには、趣味を存分に楽しめるだけの稼ぎもある。友達もいる。一人ぐらしも充実している。正直人生が楽しい。ずっとそう思っていたけど『一緒に歳をとってくれる人がいない』ことに気づいた。

周りの女友達には結婚している人も少なく彼氏もいない。
だから、『世間でいう自分の立ち位置』をずっと気づかないフリをしていた。

「そうか、そろそろ動くべきなんだな」

こうして、しがないOLは今まで抵抗があった、マッチングアプリに手を出した。…これが、いろんな意味で人生の転機をもたらすことになる。


これは、しがないOLが、恋愛市場価値と闘いながら彼氏を作るまでに奮闘する実録物語である。

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