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2020年振り返り。本編

2020年は小説・随筆・自然科学の本を中心に59冊の本を読みました。その中でも特によかった10冊をまとめてみます。

紙の動物園/ケン・リュウ

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すごすぎ。タイトにまとめ上げられた作品群が色とりどりの輝きを放つ宝石のようにどれも魅惑的。短編集に収められている一話一話を読むたびに溜息ものでした。

旅の断片/若菜晃子

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「旅に出た気分」を今年1番もらえる本だった。土埃まみれのバックパックを背負ってローカルバス乗り場に並んでいるような著者の姿がありありと浮かぶ親密さがある。装丁もステキ。

急に具合が悪くなる/宮野真生子、磯野真穂

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ここ数年で最も衝撃的な本だった。僕も生死に関わる大病を患ったことがあるので、自分の経験と深く繋がりをもって読み進めることができた。本についての感想は消化できずまだ塊のまま残っているのでまだ何も言えない。

庭とエスキース/奥山淳志

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すごく良い本で、ずっと手元に残しておきたい一冊であるのは間違いないのだけど、どのように良かったのかを書こうとすると一向に言葉が出てこない。冬の朝の光がどうして美しいのかについて特に何も言えないようなものかもしれない。

猫を抱いて象と泳ぐ/小川洋子

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今年は小川洋子の本を過去のものから新作まで途切れることなく読み漁った。儚いもの、弱いもの、密やかなもの、静かなものへの著者の嗅覚がものすごくて、それに触れるたびに自身の殻が剥かれて裸になるような恥ずかしさと快感がある。小川洋子の作品はアートだと思う。

土と内臓/D・モンゴメリー、A・ビクレー

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「土と土壌の違いは何か? 月にも土はある。しかしそれは土壌ではない。そこで生命は育たない。土壌とは有機物と無機物が混ざり合った多様な生命の営みが行われる場のことだ。そこで野菜は育ち、花は咲く。」というような一節に心打たれた。足元の環境に限ったことじゃなく色々なことのメタファーになりそう。

炉辺の風おと/梨木香歩

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梨木さんの本からは、いつも「強さと優しさと面白さ」をもらえる。ひとことで言うと「マジで最高」だけど、強さも優しさも面白さも自然とそこに在るものではなく、そう生きようと決めることなのだ。と無言で示す梨木さんのダンディズムがとても好き。

オリーヴ・キタリッジの生活/エリザベス・ストラウト

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苦みや渋みや痛みといった感覚もある種のミネラルのように生きる上で必要なものであることを味わせてくれる滋味に富む一冊。アマゾンプライムでドラマシリーズもあるようなので見てみたい。

魂の駆動体/神林長平

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この本を読むのを止められなくて一時期寝不足になった。凄まじい熱量と疾走感。とにかく登場人物たちの会話が良い。何かをつくることへの根源的な楽しさについて、どストレートな豪速球がバンバン投げ込まれる感じで心が躍った。

分解の哲学/藤原辰史

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以前ペドロ・コスタの映画を観たときに「時は進むものではなく、積み重なり、そして崩れていくものである」というようなことを時間芸術である映画で表現できることに驚いた。この本では歴史の事象や日々の行いを「分解」という観点から解きほぐしてくれていて、読後にペドロ・コスタの映画を思い出す後味だった。

その他、2020年に読んだ本

特によかったものに○をしてます。

○ルシア・ベルリン「掃除婦のための手引書」
松家仁之「光の犬」
須永剛司「デザインの知恵」
○藤原成一「かさねの作法」
A・タブッキ「島とクジラと女をめぐる断片」
小野圭介「デザインのつかまえ方」
アリ・スミス「両方になる」
ローベルト・ゼーターラー「ある一生」
○Piet Oudolf「Landscapes in Landscapes」
いとうせいこう、竹下大学「植物はヒトを操る」
ジル・クレマン「動いている庭」
村上春樹「一人称単数」
○村上春樹「1Q84」
村上春樹「猫を棄てる」
○小川洋子「ことり」
小川洋子「ブラフマンの埋葬」
小川洋子「海」
小川洋子、河合隼雄「生きるとは、自分の物語をつくること」
小川洋子「博士の愛した数式」
小川洋子「小箱」
小川洋子「人質の朗読会」
梨木香歩「エストニア紀行」
梨木香歩「風と双眼鏡、膝掛け毛布」
梨木香歩「西の魔女が死んだ」
梨木香歩「ほんとうのリーダーのみつけかた」
多和田葉子「地球にちりばめられて」
ポール・オースター「サンセット・パーク」
○俵万智、野口あや子、小佐野彈 編「ホスト万葉集」
深澤直人「ふつう」
ポールオースター「ブルックリン・フォリーズ」
レイモンド・カーヴァー「Carver's Dozen」
梶山富蔵「小品盆栽をはじめよう」
荻原範雄「四季の宿根草図鑑」
園田純寛「はじめての苔テラリウム」
デビッド・A・シンクレア「ライフスパン」
○平民金子「ごろごろ、神戸」
俵万智「未来のサイズ」
早川義夫「たましいの場所」
○ケン・リュウ「もののあはれ」
ケン・リュウ「母の記憶に」
須賀敦子「須賀敦子全集別巻」
○伊藤亜紗「手の倫理」
林望「すらすら読める風姿花伝」
ジェームズ・クリアー「複利で伸びる1つの習慣」
○榛原昭矢「かんたん!きれい!失敗しらず!育てて楽しむ手のひら園芸」
関野正「新装版 小さな盆栽づくり」
梶山富蔵「小品盆栽をはじめよう」
メイソン・カリー「天才たちの日課」
加藤周一「日本文化のかくれた形」

通勤がほとんどなくなり電車の中で本を読む時間がなくなったので、寝る前に長めに本を読むのが習慣に。その影響かビジネス書や実用書は余り手に取らなくなった。今年はもっと古典を読んでいきたいけど、どこから手をつけていけばいいのか分からないのが困る。

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