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数学月間

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社会と数学の架け橋=数学月間(7月22日--8月22日).この期間は,π(22/7=3.142..) とe(22/8=2.7..) に因んでいます.この期間に,数学への関心を高め…
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#COVID19

新型コロナの数学モデル研究(2)

新型コロナの数学モデル研究(2)

7月22日の数学月間懇話会(第19回)の報告の続き:
(2) 新型コロナウイルス感染症のデータサイエンスと政策科学;土谷隆(政策研究大学院大学)

■2000年1月から2021年末まで(前半戦:デルタ株まで)

10月以降下がるのはワクチンの効果.
12月増加するのはオミクロン
発症者数=5日後の新規陽性者数×0.65(非常に役に立つ経験則)
(オミクロンやBA.5では数値が変わるが類似式が成立)

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新型コロナウイルス感染症と統計数理,土谷隆(政策研究大学院大学)

新型コロナウイルス感染症と統計数理,土谷隆(政策研究大学院大学)

■数学月間の第2日(7.31)は,表題のzoom講演を実施しました.
本講演時点で行政が把握していた累積国内感染者は,約903,324名(都内210,610名),死亡者は,15,175名(都内2,288名)でありました(2021/7/30現在).今,振り返ってみれば,この時期は第5波の成長途上で,この半月後に第5波のピークを迎えます.これは,7月23日~8月8日のオリンピック開催による人流増加が関

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数学月間第2週講演ビデオ

数学月間第2週講演ビデオ

数学月間第2週の講演は7月31日に実施しました.44名参加で盛況でした.新型コロナウイルスの急激な感染拡大が続いています.東京の陽性率は20%に達し,検査数は増えていないので,PCR陽性(感染源になり2週間の隔離が必要)であるが未発症の患者の取りこぼしは大量に起きているのが現状です.新型コロナウイルス感染症と統計数理,土谷隆(政策研究大学院大学)の講演ビデオを公開しますので,多くの方にご覧になるこ

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数学月間第2週目

数学月間第2週目

数学月間は,毎年いつも暑い最中ですが,今年は,特に,コロナもオリンピックも重なり鬱陶しい限りです.
7月22日(数学月間の初日)の第1週の講演は40人の参加で盛況でした.ZOOMではいつも何かしらのトラブルがあるので大変バタバタし疲れました.
講演会の配布資料は,数学月間のwebサイトの「SGK通信☆会員交流広場」に置きました.講演会参加者,および,数学月間の会会員限定で,ダウンロードできます.一

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7月22日は数学月間の初日(22/7≒π)

7月22日は数学月間の初日(22/7≒π)

もうすぐ数学月間(第17回),7/22ー8/22です.参加登録お急ぎください.数学月間は,いつも暑い最中ですが,今年は特に,コロナもオリンピックも重なり鬱陶しい限りです.今回もZOOMですので,数学月間の会SGKのバーチャル・ルーム(作製:ミノカズヤさん)を作りました.自由に操作してお楽しみください.
https://door.ntt/scenes/sNwUpc8
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■今年(第17回

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PCR検査は何のために

PCR検査は何のために

(要旨)◆PCR検査の感度と特異度は,遥かに1に近い確率でした.偽陰性や偽陽性を理由に検査数をコントロールする理由は成り立ちません.検査を拡大し有病者を発見し早期隔離しましょう(感染から5日目頃が最もウイルスを放出し,有病者の半減期は10日位です).◆日本の陽性率は7%と計算できますが,最近の変動の勾配(末尾に掲載)から見ると10%を越えたように見えます.このグラフがそのように見えるのは,検査数を

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有病者(現時点の陽性者)を求める

有病者(現時点の陽性者)を求める

コロナの感染拡大が続いています.気をつけてお過ごしください.
毎日,新規陽性者数が発表されますが,色々な統計量があり混乱しますので復習します.
■有病率の考察
日本疫学会の定義によると,有病率とは,ある時点で,疾病を有している人(罹患者)の全人口にたいする割合です:
(定義)有病率=その時点の罹患者数/集団の人数
この有病率と混乱しそうな概念に,罹患率というものがあります:
(定義)罹患率=ある期

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学校を安全に再開・・・・・連続接触検査

学校を安全に再開・・・・・連続接触検査

英国では3月8日に学校が再開しました.再開にあたり接触者継続検査(SCT)という検査戦略をとりました.英国,JUNIPERコンソーシアムの研究者達は,この課題を研究して来て,いくつかの非常に興味深い結果を出しました.学校を再開すべきかどうかが研究されたわけではありません.安全に再開するにはどのような検査が良いかを研究したのです.

ウォーリック大学の疫学准教授であり,JUNIPERコンソーシアムの

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PCR検査の統計

PCR検査の統計

これらのグラフは,人口100万人あたりの1日の新規確定症例数(横軸)に対する1日の検査数(縦軸)を示しています。

The Our World in Data COVID-19 Testing datasetのサイトのデータを用いています.ここには,各国の感染症の規模に対する検査の程度を示すデータのまとめがありますが,例として日本とイギリスのグラフを掲載します.日本とイギリスでは,患者数は16倍,

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PCR検査から有病率の推定

PCR検査から有病率の推定

陽性率を,p(+)=累積陽性者数/累積PCR検査数と定義すると,東京都の2021.3.17までのデータや厚労省の公表データを用いて,陽性率は,東京都で約6.5%(全国で4.9%,厚労省)になります.しかし,PCR検査の感度と特異度の情報(酒井健司,朝日デジタルなど)を入れてベイズ推定し,陽性的中率p(罹患|+)や偽陰性率p(罹患|-)を求めました.

ランダム・サンプリングのデータがないので,今回

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PCR検査の統計

PCR検査の統計

検査陽性者数
日本国内(2021.03.23)

東京都(2021.03.17)

検体採集日と,判定確定日や発症日は医師判定までのタイムラグを含む.
検査数はPCRだけでなく抗原検査も含む.
*ジョンズ・ホプキンス大学,東京都,厚労省のデータを用いました.

・検査陽性率=陽性者数/検査数 はどのくらい?
上のデータより,国内では4.9%,東京都では6.5%と推定するのが適当であろう.

1.サ

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pcr検査から罹患数を見積もる

pcr検査から罹患数を見積もる

前回の推定は1年間の時点でしたので,今回は,東京都(3月15日)のデータを用いることにします.罹患者を推定したのですが,罹患者とは何かの定義が難しい.ここでは,発症したもの(あるいは,入院+宿泊+自宅待機+調整中)を罹患者と仮の定義にしようとしましたが,色々疑問があります.検査陽性者のすべてが,タイムラグのあるものの罹患者になるのだろうか.実用的には,罹患者は感染力のあるものと限定したいのだが,そ

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