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ロウソクメフュエンカズン

例えば、気に入った本があったとして、それを絵本にしてみる。いや漫画の方がいいか、それを姪だか甥だかに見してみる。きっと喜ぶだろう。こんなに面白いものがあるのかと目を輝かせるだろうし、こちらを見る目は羨望の眼差しだ。ただそんなもんは仮初の姿でしかなくて自分の手柄でも何でもない。確かに漫画にしたという所と、それが彼らにとって娯楽になったという意味では少しは役に立ったかもしれないけど。結局のところはルーツがあって。ルーツがあるのは悪いことじゃないけど、自分はあるものの見方というか表現を変えただけじゃあんまり胸を張れなくて。たとえば今ではずいぶん印象が変わったけど、昔なんかはDJとか言うのはあんなもん何をやってるのかさっぱりわからなかった。人が作ってきたものを我が物顔で鳴らしているだけの人たちだと思っていた。でも本当は埋もれているたくさんの良い音楽を掘り起こしてみんなに教えてくれたり、それを組み合わせて新しい楽しさを作ったり。今なら少しだけわかる。でもやっぱり借り物なんだよなぁとも思う。まぁ、要するに妬ましいんだと思う。手柄の横取りっていうか、本質的には自分にはできないこと、あんなに楽しそうにやって、しかもみんなが喜んでいると言う、それが気に食わないんだろう。もし自分にそれができたら、きっと肯定して1つの文句も言わなくなるだろうし。現に気の合う人間と好きな音楽の話をするのは楽しい。こんな音楽もあるよ。それが好きならこれはどうだい。とっても良いよ。その時よりこっちの方が。ありがとう。君にはこれがきっと似合う。なんだよ、自分もやってんじゃねーかって。あれが気に食わねぇとか、これが気に食わねぇとか言ってると意外と自分のことがわからなくなって無意識でやってる行動が自分が嫌だ嫌だって言ってることそのものになったりする。なんでかってそのできれば1秒だって考えたくないはずのその嫌なことについて考える時間が多くなりすぎるからだ。強烈な自己暗示。そのことが嫌いであることが好きな人間になっちゃう。たまんねえよ。ずーっとそうなんだ。そうするしかねーんだから。この前だってそうだ。実際それが心地良かったりすることもあるし。いいことばかりだとそわそわもす、え?よせよ。だから、ちびっこのあいつらにはこんなことになってしまう前に、世の中にはこんなに面白いことがあるんだぜっていうのを知って欲しい。傲慢だよなぁ。分厚い本を読むのは大変だ。勝手に始まって勝手に終わっていくアニメや映画を見ていた方が気楽かもしれないけどさ。動いたりキラキラするものの魅力は凄まじい。人間はそれを目で追ってしまうようにできてるからそれは仕方がないんだ。なるべく人の興味を引くように、人間の機能と性質を研究してこれでもかってくらいに音と光で設計された映像の前ではどうしたって受動的になる。それに比べて文字を読むっていうのは能動的だと思うから、読もうと思った時に、いろんな環境でいろんな作業の合間に、いろんな音の中で、止まったり戻ったりもしながら、昔のことを思い出して、これからのことを考えてみたりして、ラノベでもなければ挿絵もなくて、自分の経験に基づいた想像上の場面を思い描きながら読む。花の名前を知らなければ、その花すら思い描けないし、かと思えばその花はどんな姿にでもなり得ることにもなる。旅先の風景なんか描写された時は、全然わかんねぇなって時と、全然わかんねぇけどなんかすごそうだって時がある。そんな時は、あるものないもの、頭の中に浮かべて、勝手にその世界が出来上がってしまう。きっとそれが自分の中にある、かなり素敵な場所なんだって思う。だから、実際その場所に行ったりなんかしちゃうと、どうやったって想像超えられなくて、ちょっと寂しくなったりもする。その分しっくりきたら嬉しいんだけどさ。それが怖くて、好きな場所とか、好きな人には、行きたくないし、会いたくないなってどこかで思ってる。この前もやっと会えたミュージシャン。見た目はやっぱりかっこいいけど、アンプのセッティングミスってんだか音も変だし、タバコも電子タバコで、レモンが山ほど入ったレモンサワーに、自分の名前をつけて”〇〇スペシャル”なんて呼んでるのを見たときには、頭では目の前のその人に興奮してるんだけど、どっか心の中では冷めちゃってるのがやっぱり悲しかった。5,6杯は飲んだけどね。そりゃ。〇〇スペシャル。酸っぱいの好きだからうまかったし。そのかわり、もうあの人は自分の中で「おいしいレモンサワー考案おじさん」になってしまったんだなって。自分の中で練り上げた空想上の理想の人物。こうあるべきとかこうあって欲しいとか、そういうの塊。まぁ超えらんないよ。だからあの子たちには正直に言うよ。この漫画はおじさんがいちから描いたんじゃないんだって。彼らの中に漫画の上手なおじさん像ができあがる前に。オリジナルがあるんだって。ショーシャンクじゃなくてリタ•ヘイワースなんだって。それからロウソクでお話を作ってもらうかな。別にロウソクじゃなくっていいんだけどとりあえずロウソク。火がつくのを知ってるのかな。危ないし触らせてもらえないだろうからなあ。見たことがないかもしれない。まぁ何せロウソクのことを知って、しかもそれが自分だけのロウソクになるようにしてもらう。でも、自分だけのロウソクはすぐには手に入らないから今からこのロウソクを自分だけのロウソクにしてもらう。指で触ってみたり、ポッケに入れて歩いてみたり。舐めてみたり、火をつけてみたり。どこかに落としたり、誰かが拾ってくれたり。折れたり、溶けたり。飽きたり、忘れた頃にまた出会ったり。そしたらいつか大きくなったあの子たちからおもしろいロウソクの話が聞けるかもしれない。別につまんなくてもいいし。え?おじさんなんの話?なんて言われたって平気だ。

描いてみたら?ってずるいよな
みんな誰かが背中押してくれるの待ってる

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