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昔のことをよく思い出すけどそれも許してほしい

先週、久しぶりに電話して、言葉に迷いながら話した。伝わってるんだな、知ってるんだな、わかってるんだな、疑わなかった。当たり前だった。
一度通ったひとのことはわすれない。信じている。でも、いる場所が違えばその速度とか道が変わってずれていくことはある。たまたまその時に同じようなところにいて、たまたま出会えただけ。それでもいいよ。それだけでわたしはずっと大事に覚えておくよ。駅前の安い居酒屋で話したことも、卒業間際の夜の新宿も、火を見ながら話したことも、わたしだけでも覚えておくよ。

生きてきた中で、そういう人に何人も会えているのはしあわせだ。これをしあわせという。肌がふれるよりも心が合わさっていることの方がずっと大事。何年あいても会いたいし、惜しみなく大切にしていたい。

大学を卒業して自分がだんだん変わっていくのがわかってた。忙殺されて、なんだか少しおかしくて、大切だったことを守れなくなって、ちょっと世界に乱暴だったとき。会いにきてくれて、いつもの中華屋でご飯を食べたけど、自分が走っていることもあなたが一生懸命に変わろうとしてたのもわかってたから、怖くてあんまり話せなかった。がっかりされたくなかった。時間があいたらこわくて連絡できなくなって、もう会えないのかなって考えてたら突然夜中に電話が来た。びっくりして画面に出た名前を何回か目でなぞった。電話、勇気いったんだろうな。それでもわたしが出るって信じてくれたんだろうな。誰に頼ればいいかわからなくなったときにわたしのことを思いうかべたらしい。

その月の末に予定を空けて井の頭公園で池を見ながら何時間も話した。コーヒーはとっくに冷めていたし、空っぽにもなっていた。他の人はわからなくてもあなたはわかってくれると思ったから、ひとつひとつ丁寧に、なるべく思考と言葉がねじれないように。どれだけ時間があいても、どこかの時に違うところにいても、いつかはまた会える。それがあなたでうれしい。

約束を簡単にしないところ、わたしの苦しさを軽やかにしてくれるところ、理解することをあきらめないところ。
自分をわたしの1番大切な存在にさせないところ。こんなに近い距離にいても、わたしをぞんざいにせずに気を遣ってくれている。そのやさしさをいつも受け取っているよ。

ひとに安心できるようになった。どれだけ一緒にいても環境が変われば会えなくなる。それに怯えてしがみつくようにしていた時もあるけど、もう大丈夫なんだと思う。
変わってしまうことも分かり合えないことも悪いことじゃない。誰かに合わせるんじゃなくて、偶然同じ道にいるほうがいい。これが大人になったってことだよ。

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