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30代40代は何の影響を受けているのか?

どうも裕本恭です。

100日後に死ぬワニ、全部見てないですけど、単純に100日漫画をアップし続けるってすごいことですよね。できることを継続して、少しずつ広げていく。そういう気持ちでやってきましょ。

というわけで、「30代40代は何の影響を受けているのか?」行ってみよう!

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ざっくり小劇場的な流れを振り返る

①「静かな演劇」の登場。平田オリザ氏の青年団が90年代の演劇界に大きな影響を与えます。

②前回お話した小劇場第四世代の後、笑殺集団リリパットアーミーや大人計画等が登場します。小劇場→商業という流れがまだある時代です。

③劇団、本谷有希子の登場。劇団制の終焉。2000年。

④「静かな演劇」のカウンターカルチャーとも言える柿喰う客の登場。2004年。

こんな感じの流れですが、今回はなかでも90年代前半と00年代前半についてとくにお話いたします。キーワードは「世界の中心が自分から、自分がいる場所が世界」です。


40代、セカイ系の登場

今、40代の演劇人は、チェルフィッチュの岡田利樹氏、アマヤドリの広田淳一氏、劇団鹿殺し、イキウメの前川知大氏、五反田団の前田司郎氏等。

アート界隈でもエンタメ界隈でも、第一線で活躍されている世代と言えます。

40代の影響を受けてきたもので外せないのが「新世紀エヴァンゲリオン」ではないでしょうか?いわゆる「セカイ系」という話。

バブル経済の崩壊、冷戦体制の崩壊、湾岸戦争勃発、地下鉄サリン事件…世界が目まぐるしく変化していく一方で、経済的な豊かさはどんどん失われていく世代。しかし、ドラマ等のコンテンツは50代60代が作る明るい話。かなりちぐはぐな世代であったと言えます。そんなときに個の物語が世界に影響を与えるという「セカイ系」というものは大きな影響を与えたといえます。

実際にアマヤドリ(当時ひょっとこ乱舞)の作品というのは個人の問題が世界を動かす話が多かったと記憶しています。「銀髪」なんてまさに。

「銀髪」は、パニックを起こすことを生業とする企業がものすごく急成長し、強大な影響力を持つというお話なんですが、その核にあるのは恋人との流産で経た経験なんです。そんな個人的な思いが世界をとんでもない方向に動かします。

少し上の世代になりますが、阿部サダヲさんや星野源さんやクドカンこと宮藤官九郎さんが所属する大人計画の松尾スズキさんの「ふくすけ」なんてものもまさにそうで。

薬害被害で奇形児として生まれた「ふくすけ」を巡るお話です。社会の醜い部分を痛快に描いているのですが、一人一人の登場人物の抱える状況が社会構造そのものに思えてしまいます。


世界の中心が自分であるという話が多い傾向にあります。

大きく動く世界に対して、小さな自分の世界をつなげようという意識があったのではないかと思います。

すでに50代60代が築いた明るい未来が虚構であることを感じとっていた世代と言えます。


30代、世界は個で完結していく

そして、30代。ちょうど私の世代です。(と言っても私は30歳なので、まだ20代にして欲しいという思いはありますが)

劇団、本谷有希子の登場。これはそれまでの「演劇=劇団」時代の終焉を象徴していると言えます。この辺りを境に物語も急速に「個」に向かっていく傾向があります。世界の中心が自分から、自分がいる場所が世界というふうになっていきます。本谷氏自身は40歳なのですが、ここから個人で何かやろうという雰囲気、プロデュース形式の公演が増えていきました。だって、集団の名前であるはずの劇団の名前が個人名ですよ。当時、結構なインパクトがあったのは覚えております。

http://www.motoyayukiko.com/

本谷有希子さんの作品は、個人的にいちばん好きなのは山田孝之さん出演で映画化もされた「乱暴と待機」なのですが、このお話は天井裏から覗く男と覗かせる女の歪な愛情表現です。世界はもの凄く小さいのですが、言葉に現し辛かった感情がよく表現されております。(ちなみに本谷有希子さんはえんぶゼミナールという演劇スクールで松尾スズキ氏を師事しておりました。)

そして、世界が個で完結していくのに大きな影響をもたらしているのはみなさんご存知のインターネットです。95年にWindows95が登場して以降、今の30代というのはインターネットが当たり前になってきます。

それまで新聞やテレビで、ある程度均質的な情報しか得ることができなかったのに、個人の意見や専門外の人の意見まで手に入るようになっていきます。(2ちゃんねるの登場前は、チャットとかが流行ってましたね。そしてMixi。)

こうして、得られる情報は徐々に個人的になっていき、物語も個人レベルの話が増えていきます。

教育に関してもゆとり世代と呼ばれ、「個性を大事に」というお題目のもとのびのびと育てられた世代です。私自身も前身の劇団東京ペンギンを旗揚げしたときは「ゆとり世代の確信犯」というキャッチフレーズで活動しておりました。

そしてその後、ゆとり教育はすぐに失敗という判断を下されます。


30代40代は中間管理職

さて、私たち30代40代というのは時代が大きく変化していく過渡期の世代と言えます。上にはパリピみたいな50代60代がいて、下にはもっと合理的な現代的な考えを持つ20代…

会社でいうところの中間管理職です。

でもいちばん走り回っているのもこの世代です。

世代的に不遇と言われるのもちょっと仕方ないかなと思いますが、逆に言えば、上の世代のことも下の世代のことも理解しようと思えば理解することのできるハイブリッド世代です。

さて、いよいよ、次回は、未来を担う20代ですね。

裕本恭


深夜ガタンゴトンは2020年8月に新作公演を行います。以降、年2回のペースでの公演を考えております。それ以外にも「新しい気づきのプラットフォーム」をコンセプトに活動していきます。サポートよろしくお願い申し上げます。