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50代60代は何の影響を受けているのか?

どうも裕本恭です。

「私たちは何の影響を受けいているのか?」の連載2回目今回は50代60代にフォーカスをあてていきます。

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小劇場はカウンターカルチャーの繰り返し
大前提でお話すると、小劇場という世界はカウンターカルチャーの繰り返しと言えるかもしれません。
歌舞伎から始まり、歌舞伎に対して型にとらわれないということで、新劇というものがはじまり、その新劇に対して、アングラ演劇というものが始まりました。アングラ演劇というのは、言葉にするのがなかなか難しいのですが、それまでの新劇を「起承転結を軸とした何かメッセージ性のあるもの、つまりはドラマ性のあるものとする」のであれば、それに対して「劇構造から疑い、意味のないものを作ろうとする試み、実験的な要素が強い演劇のこと」だと思います。

小劇場第1世代(60年代〜)…寺山修司(天井桟敷)、唐十郎(状況劇場)

小劇場第2世代(70年代〜)…つかこうへい

小劇場第3世代(80年代〜)…野田秀樹(夢の遊眠社)、鴻上尚史(第三舞台)

小劇場第4世代(90年代〜)…三谷幸喜(東京サンシャインボーイズ)、中島かずき(劇団新感線)、成井豊(演劇集団キャラメルボックス)


と、かなりざっくりと演劇の歴史を話しましたが、今回の50代60代というのは小劇場第3世代である、夢の遊眠社の野田秀樹氏や第三舞台の鴻上尚史氏が影響を受けたものは何だろうという話でございます。


小劇場第1世代、第2世代と高度経済成長期
この時代を話すとなると、もはや歴史なんですが、前回の東京オリンピック前後の高度経済成長期のお話になるんです。
教科書通りのお話をすると、幼少期に日本が目に見えて、成長していくのを体感したのが今の50代から60代であります。
ただ、その一方で、学生運動等、急成長する日本に対して、「何か失っているものはないか?」「本当に資本主義は正しいのか?」という疑問を投げかけていたのが、小劇場第1世代なんだと思います。(全部が全部そうではないので、あしからず)

見世物小屋の復権を試みた寺山修司氏には、どこかで忘れ去られるマイノリティの人たちの生きる姿に魅せられていたと感じています。唐十郎氏も特権的肉体論と言って、そこに存在することの尊さというものを大事にしていたのかのではないかと私は思っております。
メディアでは、明るいニュースばかりが流れ、坂本九が「明日があるさ」なんて歌っていた時代です。
また一方で、学生運動でインテリ層が毛沢東に傾倒していった時代でもあったので、「高度経済成長に対するアンチテーゼ」といったものがあったのかもしれません。
その後、逞しく生きる人間の姿を臨場感たっぷりに描き、エンターテインメントとして昇華させたつかこうへい氏が登場します。


第3世代の登場「明るく、楽しく、自由に」
さて、ようやく50代60代、第3世代の話になります。
結局、学生運動も山岳ベース事件(1971年〜1972年)やあさま山荘事件(1972年)ですっかり下火になりました。
打倒資本主義やなんやというのは一部の過激派の影響で世間に冷笑される対象となりました。
そこで登場する第3世代なのですが、やはりそういう何というか「革命!」とか「哲学!」とか堅苦しいものに対するアンチテーゼなのかなと思っております。

「明るく、楽しく、自由に」というのが最も合うのかもしれません。
野田秀樹氏の運動量と詩的な言葉のマシンガンで圧倒する明るく楽しい自由な演劇というのが世間に受け入れられたんですね。(劇団として躍進していったのはその後のバブル経済も関係あると思いますが…)

ある意味、鬱屈したもの、小難しいもの、訳の分からないものに対して、明るいもの分かりやすいものが流行るというのは必然かもしれません。

その後、小劇場ブームが巻き起こり、小劇場第4世代なんてものも登場します。
東京サンシャインボーイズの三谷幸喜氏、劇団新感線、演劇集団キャラメルボックス等ですね。

ここから小劇場→商業という道筋ができ始めたのかなと思います。(つまり、演劇=夢追い人というイメージはこの頃から始まったのではないかと考えられます)ちなみに、フリーターという言葉が定着し始めたのは1987年頃です。

50代60代はパリピ?(今の50代60代が影響を受けたものとは?)
ということで、まとめですが、今の50代60代が求めたのは、「明るく、楽しく、自由に」といったものだと思います。
鬱屈したものへのアンチテーゼというのもあると思いますが、幼少期から成長する過程で日本が目に見えて豊かになっていくのを見てきた世代にとっては、単純にそういった分かりやすく面白いものを望んでいたのかもしれません。それは観客も含めて。そして、バブル経済まで経験してるのですから、そりゃもう今の若い世代とは見える景色が全く違うだろうなとも思います。

そう考えると今この世代が演劇の世界に限らず、企業の世界でも上役としているのであれば、それは確かに何だかちぐはぐするよなぁとも思いつつ、元気な日本を知っている最後の世代なのかもれないなとも思います。
野田秀樹氏もいろいろと叩かれたり、説教じみた感じになってきていますが、「明るく、楽しく、自由に」やっていた人なんですよね。

実はいちばんパリピなのが今の50代60代な気がしてきました。この年代の人たちがかつて創ったバラエティ番組とかも見てますと、ちょっと企画が(いい意味で)頭おかしいなと思うことありますから。

世代で見ていた景色は違うのは当たり前ですから、それを従来のようにカウンターカルチャーとしてやっていくのか?
これは私自身の主観ではありますが、本当に今の20代前後の若い世代というのはそこをカウンターではなく、課題だけを捉えて、純粋に創作する力というものを持っていると思っています。(単純に面倒な人付き合いを避けるというのは、純粋に創作に打ち込みたいという裏返しかもしれません。)

一方で、従来のカウンターカルチャー的な思想を持たなければいけないと自らを追い込んで創作する人もいるのかもしれないとも思っております。

何にせよ、年輩の方との酒の席は面倒なことも多いですが、身になることもあるので、上手くつきあっていきたいものです。

50代60代がやってきたことを現代に翻訳するのが我々若い世代のミッションなのかもしれないと最近、常々思っております。

来週は、30代40代です。

引き続き、みなさまよろしくお願いします。

コメント頂けたら、喜んでお返しします。

お話いたしましょう。


裕本恭








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