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【映画紹介・レビュー】『女神の継承』を見て夜も眠れない

皆さまどうも。
未だにホラー映画を見た夜はちゃんと眠れなくなる大の大人、田吉だ。
今回皆さまに紹介するのは、2021年に公開されたタイ・韓国合作のホラー映画『女神の継承』だ。

このビジュアルに惹かれて思わず鑑賞

以前から存在は知っていたが「タイ映画」、「女神の継承」と聞いて「なーんかB級ホラー臭がするな」といった大偏見でなかなか見るに至らなかった作品だが、ポスタービジュアルを見て考えが一変。
「なんかおもしろそうじゃん!」という手のひら返しで即視聴するに至った。
いわゆる「ジャケ買い」みたいな感じだ。
それでは早速始めていこう。

【注意】最後の感想で少々ネタバレを含みます。

ストーリー

小さな村で暮らす若く美しい女性ミンが、原因不明の体調不良に見舞われ、まるで人格が変わったように凶暴な言動を繰り返す。
途方に暮れた母親は、祈祷師である妹のニムに助けを求める。
もしやミンは一族の新たな後継者として選ばれて憑依され、その影響でもがき苦しんでいるのではないかー。
やがてニムはミンを救うために祈祷を行うが、彼女に取り憑いている何者かの正体は、ニムの想像をはるかに超えるほど強大な存在だった……。

映画『女神の継承』公式サイトより引用

本作の見どころ

・主演ナリルヤ・グルモンコルペチの怪演

この映画の見どころとしてまず挙げられるのは、なんといっても主演のナリルヤ・グルモンコルペチの体当たりかつ迫力のある演技だろう。
何かに取り憑かれ、次第に壊れていく主人公ミンの苛立ちや悲しみを見事に演じており、見ている側もミンに感情移入してしまい、可哀想で悲しい気分になる。
それに対して、取り憑かれた影響で奇行を繰り返すミンの言動や表情は、彼女を人間とはかけ離れた何か異質なものに感じさせてしまうほど不気味であり、見ている側に恐怖や不安を感じさせる。
非常に強烈なセリフや動きから、演じるにはかなり勇気がいる役だと思ったが、それを見事に演じ切ったナリルヤ・グルモンコルペチの役者魂を感じることができた。
しかもこの方、普段はとても笑顔が可愛いアジアンビューティーである。
そのギャップが衝撃的な演技をより際立たせていたのではないだろうか。

通常時のナリルヤ・グルモンコルペチ
最恐モード。鬼の形相である。

・モキュメンタリーによるリアル感

この映画は終始ドキュメンタリー風の演出で物語が進んでいく、いわゆるモキュメンタリー形式の映画だ。
「タイ東北部の村で脈々と受け継がれてきた祈祷師一族。美しき後継者を襲う不可解な現象の数々…」と一見すると、あり得ない超常現象とか起きそうな設定ではある。
しかし、本作はこのモキュメンタリーという表現によって、少々ぶっ飛んだ場面に遭遇しても「タイではこういうことあるもんなのか…?」、「これって実話が元になってたっけ…?」と見る側を錯覚させる。
このような錯覚が物語にリアル感を施し、そのリアル感は見る側の恐怖をより引き立たせる。
もし本作が普通のホラー映画と同じ演出だったとしたら、少しわざとらしさを感じてしまっていたかもしれないが、モキュメンタリー演出により、それを感じさせにくい作品になっていたのではないかと考える。
そのため、本作はモキュメンタリーと上手くマッチしていた映画だと言えるのではないだろうか。

感想(ネタバレを含みます。)

上映時間2時間11分と決して短い映画ではないが、前述した魅力や要所要所の意外な展開により物語に引き込まれ、途中で飽きることなく楽しめた。

また、結局ミンに取り憑いていた悪霊の正体ははっきりわからないまま、というぼんやりとした終わり方も見た人に様々な考察をさせることができ、良かったと思う。
こういう様々な考察をさせる映画は、一度だけでなく、二度、三度と楽しめるため私は好きだ。

ただ、いくらモキュメンタリーでリアル感があるとはいえ、最後の儀式でその場にいた全員が凶暴化しカメラマン達を一斉に食い殺すという、はちゃめちゃゾンビ映画展開はちょっと無理があるだろ…と思ってしまった。

そして重要なのはラストシーン。
ニムが最期のインタビューで、バヤンの存在を最初から感じていなかったという衝撃のコメントを残すのだ。
つまり彼女は祈祷師としての仕事もミンを救うための儀式も全て、意味があるのかわからないが意味があると自分に言い聞かせ行なっていたということである。
そして結局、信仰や祈りによって誰も救われることなく物語は完結する。
このことから本作は、信仰の無根拠性や凶大な問題に対する信仰の限界と非力さを伝えたかったのではないかと私は考えた。
ただこの部分に関しては、本作を見た人それぞれで様々な考察があるはずだ。
本作をご覧になった方には、是非その見解を共有していただきたい。

そんな映画『女神の継承』が気になった方は是非ご鑑賞いただきたい。
恐怖し、考察させられ、私のように夜眠れなくなること間違いなしの作品だ。

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