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ある六月の物語②

旗めく洗濯物を、網戸越しに眺めていた。

仕事休みの日の晴れに、今日初めて感謝する。


休みの日は携帯のアラームをかけない。

体が起きたい時間に起きて、

こうやって11時位に、

溜まった洗濯物を洗濯機に放り込み、

その間にテレビを見ながら、

カフェオレとトーストと、有り合わせのもので

サラダを作り食べる。  


今日はルッコラとハムに、

同僚の新婚旅行のお土産の

人参ドレッシングをかけた。


先週、千都は34回目の誕生日を迎えた。

激しく雨の降る月曜日に、

お祝いしてくれるはずだった人は

予定が合わず、早々と午前中のLINE。


すまない。

店にキャンセルの連絡入れておく。

お祝いはまた改めて必ず。


わかったよ。 大丈夫。


何回目だろうか。 

何時からか、理由も聞かなくなった。


そして何日も来ない連絡に、

千都は疲れ始めていた。


もう私からは連絡しない。


もう1人の狡い自分が、

相手にその先を委ねてしまう。

もう34歳か。

こんな生活ずっと続くのだろうか。


ドレッシングがやけに酸っぱく感じて

フォークを静かに置き、

テレビから声高に流れる

些細な芸能ニュースを見ながら

「つまんない。」

千都は呟いた。


と同時に携帯が鳴った。

(お祝いをしてくれるはずの人)からだった。


鳴り続ける携帯の音量を下げて、

クッションの下に、携帯を仕舞い込んだ。


外の洗濯物が、ブルーに輝いた空の中を

踊りながら心地良い音を鳴らす。


そして、今日晴れた事に

千都はまた感謝するのだった。

    ……………………………

     読んで頂き、ありがとうございます。
             誰かに届きますように。

                        LOW

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