鈴木 vs 世界【 鈴木爆発 】(PS1)
シュールな世界とイカれた爆弾
大容量の光メディアの実装による美麗なムービーとポリゴンを携えたプレイステーションの登場は元来のゲームの表現方法をガラリと変えた。「せがれいじり」「俺の料理」など既存のゲームの考えに捉われない実験的なゲームが次から次に販売され、若きSF007少年はそんなゲームたちに心底心酔していた。そしてそんな変わったゲーム達の中に本作「鈴木爆発」もあったんだ。
ストーリーは普通の女性「鈴木さん」の目の前に次々といろんな形の爆弾が現れ、鈴木さんはその爆弾たちをドライバーやニッパーなどの道具を駆使して解体していく。ストーリーというにはあまりにも不条理すぎて意味があるのかさえわからない展開が面白くも「次はどんな爆弾が出てくるんだろう」とワクワクさせてくれる。
爆弾解体パズルとして
本作は雰囲気やストーリーも変わっていて個性的であるが、謎解きパズルゲームという面でも、唯一無二の個性としっかりとした面白さを持っており、様々なギミックやトラップに仕掛け、謎解きと個性的で歯応えのあるパズルが登場するので一つ一つの爆弾の満足感はかなり高い上に、爆弾解除までのカチカチ音やタイムリミットなど最後にケーブルを切るまで緊張感を煽りまくる演出が最高だ。
そして最後にケーブルを切った時の走馬灯が見えんばかりの緊迫感と、解体成功した時の肩に入っていた力がスッと抜けるような開放感が味わえる。いやーたまらんね!
愛すべきイカれ爆弾たち
せっなくだから個人的に好きな爆弾をご紹介
爆弾 月
月!?デカすぎない!?と家電量販店のゲームの試遊台で遊んでいて叫びそうになったのを覚えている。
納得いくかは別としてこのスケール。めちゃくちゃが好きなんだ。
体験版だとこのステージまで遊べて、僕は購入を決意した。
爆弾 アイスコーヒー
鈴木さんが喉が渇いたというだけで飛行機に乗って赴いたリゾート地で飲んだアイスコーヒーはなんと爆弾。分子レベルにズームして花占い的に爆発するかしないか選ぶ展開も面白すぎる。
爆弾 海
月が爆弾なら海だって爆弾さ。
潜水艦を魚雷で破壊すんだよ。
わけわかんないがそれがいいんだ。
爆弾 影
海だって爆弾なら影だって爆弾に違いない。
彼女の目に映る全てが爆弾なんだよ。もうわけわからんが、この世界観がワクワクするし楽しいんだ。
そしてこの別角度から見た時のカッコ良さはヤバい。
狂気と緒沢凛とFPM
そして本作は演出面も、低いテンションで淡々と繰り広げられる静かな狂気的な展開が楽しく、主演である緒沢凛は「鈴木さん」を非常に魅力的に演じているし、その可愛さが非現実的でシュールな世界観と上手にマッチしている。音楽面でもホラーにもなり得る狂気的な状況をユーモラスに見せるFantastic Plastic Machineの楽曲が良い働きをしているぞ。
それから本作が発売して一年後、まさか極楽とんぼの加藤浩次と結婚してそのまま芸能界から一歩先に卒業してしまうとは…。今は芸能事務所の社長さんのようで、思えばその後の彼女のキャリアも見てみたかったなぁ…。
ちなみに両名の出会いのきっかけは本作のようで、人生を変える一本になりましたね。すごいや。
新たなメディア表現
このゲームを買った中学生の頃は考えてもいなかったけれど、思えば本作は、実写映像に強い光メディアハードによって可能になった「アナザーマインド」や「街 -運命の交差点-」などの実写ゲームと同じ、主演俳優を置いて実写映像とゲームを織り交ぜた写真集や映画、ドラマとも違う、俳優を使った新しいメディア表現を目指した意欲的なゲームの一つのような気がする。
そしてその中でも本作の完成度はトップレベルだろう。
今回改めて本作を遊んだがやはりこのゲームは楽しい。なんせ自分の好みとバッチバチにマッチしているからなんだよね。
僕のゲームの好みは中学生のあの頃と変わらず、現代世界と似ているようでどこかズレた世界観と、今まで遊んだことのないゲーム体験だ。そしてその頂点であるゲームの一つがこの「鈴木爆発」なんだ。
DATA
鈴木爆発
発売 :エニックス
開発:SOL
対応ハード:PS1
発売日:2000年7月6日
ジャンル:爆弾を解体するゲーム
ちなみに製作者による講演記事も一読の価値ありだ!
映画鑑賞と積みゲーの資金となります…たぶん