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福士蒼汰 初監督・脚本 映画 「イツキトミワ」を象徴する月の話。

WOWOWの企画で毎年開催されている、俳優がショートフィルムの監督を手がける素敵な企画、アクターズ・ショート・フィルム。

別の記事でも書きましたが、先日、福士蒼汰さんが監督と脚本を手がけた「イツキトミワ」の監督登壇イベントにお邪魔してきました。

その後、今回の企画で監督を務めた千葉雄大さん、仲里依紗さん、森崎ウィンさん、そして福士蒼汰さんの4人が一同に介した完成報告座談会の生配信も行われ、それぞれが作品に込めた思いや撮影秘話がたっぷり語られました。

作品についてネタバレもOKの座談会だったので、映画を鑑賞された後に観るの推奨ですが、監督それぞれの個性がよくわかる内容ですごく面白かった!

WOWOWさんの公式youtubeでアーカイブ映像も公開されているので、見逃してしまった方はぜひ見てみてくださいね。

WOWOWの公式チャンネルでは現在、「イツキトミワ」を3分間にまとめたダイジェスト映像も公開されています。

この主演のお2人のサムネイル画像にもあるように、イツキトミワには物語を象徴するように「月」が印象的な場面で登場します。

昨日、事務所主催で行われた生配信の中でも「実はいろんなところに仕掛けを散りばめてるんですよ」って感じのことを話していたのだけど、このダイジェスト映像の中だけでも、背景にさりげなく散りばめられた月のような丸い照明やお皿たちが目に留まり、何度か観ていく中で見つける小さなこだわりに驚くばかり。

「月が綺麗だな、と思っただけ」

「けど、俺は死んでもいいわ」

2人のこの台詞はそれぞれ別々の場面で登場するのだけど、文学的な意味でのこのフレーズはとても有名なんですよね。

夏目漱石が「I love you」を「月が綺麗ですね」と翻訳した話。

二葉亭四迷がロシアの作家、ツルゲーネフの「片恋」を翻訳した際に「Yours」を「死んでもいいわ」と訳した話。

英語版のタイトルにしたという「Yours」はもしかしたら、ここからきているのかもしれないね。

福士蒼汰監督が持つ純粋でロマンチストな部分と、一方でそれだけではない、孤独も経験してきた人生の深みの部分、この作品ではどちらも魅力的に描かれていて、何度も言うけど本当に初監督・初脚本?!って思ってしまうような、とても印象に残る作品です。

「死んでもいいって覚悟持ってる人は、それくらいの試練を与えられてるっていうか」

「人生って重くて軽いんだよな」

この辺りの台詞も、福士監督が周りに見せない中でたくさんの試練を乗り越えてきた中で生まれた物語なんだなと、グッときてしまいます。

満月の夜の後、ミワがどんな思いでこの世を去ったのか、そこには正解はなくて、それは観る人に委ねられています。

「私たちってさ、なんで生まれてきたんだと思う?」

と、問いかける、先の見えないミワの人生の中で、きっとイツキは少し先を照らしてくれるような存在だったのだろうなと。

イツキは、自分の一言がミワにその決意をさせてしまったと、絶望の淵に立たされたような気持ちになったかもしれないけれど。

ミワはイツキに出会えたことで救われたと、私は思いたいです。

ミワを失った悲しみの中で、ラストのキャンバスに描くイツキの手から発せられる音が、心の痛みを象徴するようでとても苦しいけど、でもその絵はとても美しくて。

そして、絵の制作に没頭するイツキの後ろでは外から微かに子どもたちがワイワイ元気に遊んでいるような日常の生活音が聴こえてきたりする。

人には日常の中にそれぞれの物語があり、光の部分も闇の部分も意外とふとした瞬間に訪れる、それが人間なんだ、そんな中で分かり合える人との出会いの大切さ、そんなメッセージを私は受け取りました。

イツキとミワの日常の中にある陰陽が素敵な隠語のメッセージに隠れてる。

本編映像はWOWOWオンデマンドですでに配信中ですが、テレビでは3/22(金)に放映されます。

ぜひたくさんの方に届きますように。

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