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〈THE BEATLES〉という永劫不滅のブランド

〈THE BEATLES〉について語ろうと思う。

あまりにも有名な存在で、世界中で多くのひとに語り尽くされているため、あえて今さら、私が語る必要はないかもしれない。

〈THE BEATLES〉は、本人らの想像をはるかに超えたひとつのブランドとして確立されてしまった。


デビューして60年近く経った今でも、それは圧倒的なブランドバリューを持つ。


だから今回は〈THE BEATLES〉の音楽ではなく、ブランドに注目してみたい。

ただし、〈THE BEATLES〉というロゴにはあまりにもインパクトがある。


新聞の膨大な文字量のなかにたったひとこと〈THE BEATLES〉という文字があるだけで、
ファンなら、ただちに見つけて、その文章を読んでしまうのだ。

それはピカソであり、ドストエフスキー、あるいはトルストイであり、メルセデスであり、リッツ・カールトンであり、NYである。


つまり、美術界や文学界、車界それぞれに王者があるように、〈THE BEATLES〉はロック界を象徴し、トップに君臨する存在なのだ。

〈THE BEATLES〉がブランドとして成功した6つの理由をまとめてみた。

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1 メンバー全員がイケメンだった
ビートルズはデビュー当初、”アイドル”として売り出されている。もちろん、当人たちが望むところではない。しかし、レコード会社の戦略として当時、ミーハー女子はポール、渋め女子はジョンかジョージ、日本ではリンゴ・スターが「かわいい!」と人気。

2 メンバー全員が才能に満ちあふれていた
名曲の大半は、ジョン・レノンとポール・マッカートニーによる合作。これはベートーベンとショパンが一緒に音楽をつくるようなものだ。ちなみに二人をサポートしていたジョージ・ハリスンも後半は作曲を手がけ、アルバムにいくつか収録されている。解散後は全米ヒット曲も出した。


3 曲が短くてキャッチー
一曲あたり2分前後のものが多い。名曲ほど「あれ、もうおわっちゃった。もうちょっと聞いていたいんだけどな」と思ってしまい、これが心地よい余韻となる。美味い寿司をたべて「もう一人前食べられそうだけど・・・。まあ、また来るね」と思うのに近い。なんども繰り返し聴きたくなる。

4 歌はそれほどうまくない
これはファンとしては認めたくないのだけれど、ジョン・レノンもポール・マッカートニーも、歌がものすごくうまいわけではない。エリック・クラプトンしかり、ほかにうまい歌手はいくらでもいた。けれどその透き通るような声を通して、彼らのイノセントな部分は、聴く人の心にダイレクトに突き刺さってくる。歌はうまい、へたなんて関係ない。心を揺さぶるか、揺さぶらないかなのだ。

5 イノセント
先述したが、メンバー全員が純粋無垢だった。それは〈THE BEATLES〉を世に送り出したブライアン・エプスタインが亡くなったときの、メンバーの狼狽ぶりを見ればわかる。親を失った子供のように、ただただ途方にくれた。ジョンに至っては、後に出会う8歳上のオノ・ヨーコに母親の面影を探していた。母へのあふれる想いに満ちたその胸を、撃ち抜かれる1980年まで。

6 ストーリー性がある
ファンでなければ、ここまで紹介した中で、せいぜい知っているのは3くらいなものだろう。「ビートルズ?レットイットビーだよね。いい曲だね」という感じ。「井上陽水の少年時代っていい曲ね」というのと、ほとんど変わらない。

ただし〈THE BEATLES〉の曲に少しでも興味を持った人々は、そのバックグラウンドを知ろうとする。それを知ってしまうと、もう後には引き返せない。完全にどっぷりビートルズ漬けにされてしまうのだ。ここからブランドにおいて重要なファクターとなるのだけれど

ビートルズには、ストーリーがある。

イギリスのリバプールという小さな街で、後に世界的スターとなる4人の男児が生まれる。
リバプールというのは、日本で言うところの〈博多〉のようなものだといっていい。


地方都市で、それなりに活気があり、荒くれ者が多い。どうよく見積もっても洗練された街とはいえないけれど、かつて博多の街が多くのミュージシャンを輩出したように、若者のエネルギーに満ちている。

4人とも決して裕福とは言えなかったし、十分に幸せな幼少時代を過ごしたとも言えない。
ポールは母親がいなかったし、ジョンにいたっては両親ではなく母親の姉のミミ伯母さんにあずけられていた。

そして、思春期に母親を交通事故で失ってしまう。

鬱屈した青年だったジョンは、母が買い与えてくれたギターで熱心に作曲をはじめる。
高校生だったジョンに、中学生だったジョージがギターを教えてもらっていたのは有名な話だ。

そのうちに、ポールとともに〈クオリーメン〉を結成する。そのころのロカビリーヘアでギターを握るジョンやポールの写真を見ると、まるで若かった頃の兄の写真をみるような親しみを感じる。

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そうなってしまったら、もう私たちはビートルズのストーリーにどハマりしたことになる。

その後、ジョンとオノ・ヨーコとの出会い、ジョージとパティ・ボイドとの破局(原因はエリック・クラプトンにある)、ジョンの射殺、ポールの妻の死など、メンバーは多くのドラマティカルな私生活に包まれる。(リンゴだけは、比較的平穏な生活を送っていたような気がする)

つまり、〈THE BEATLES〉のファンは、音楽はもちろんだけど、その背景にあるストーリーに、抗いがたいくらいに惹かれてしまっているのだ。

そして、〈THE BEATLES〉がただのロックミュージシャンではなく、自分自身を代弁してくれる分身となる。


もはやファンとは言えない。自分自身の一部なのだ。


その日から〈THE BEATLES〉という文字に、過敏なまでに反応するようになる。

〈THE BEATLES〉という文字に、とてつもない大きな力が生まれ、ひとつのブランドとなる。
そのブランドが廃れることはない。

なぜなら、その存在がもうこの世にはないから。

人々がベートーベンやパスカルに永遠に敬意を払い続けるように、私たちは〈THE BEATLES〉に対し、絶えることのない羨望を抱き続ける。

そうして未来永劫に輝く、かけがえのないブランドが生まれるのだ。

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