雷恐怖症の生き方
私は雷が苦手です。
正確にいうと、落雷の音と致死傷性が嫌いです。雷恐怖症というより落雷恐怖症といったほうがいいのかもしれません。
ひとくちに「雷が苦手」「雷が怖い」といっても、その内容は多岐にわたると聞きます。音は大丈夫でも閃光がダメな方、雷の存在そのものが嫌いすぎてゴロッという音を聞いただけで過呼吸を起こして倒れてしまう方など、様々なタイプの方の実情を今まで聞いてきました。
私は光や単にゴロゴロいう音は大丈夫です。雷雲が真上に来たとしても、光ってゴロゴロいいながらそのまま通り過ぎていくだけなら問題ありません。
そいつがこっちめがけて爆音とともに降ってくるのがダメなんです。
とてつもない音で驚くのももちろん嫌ですし、直撃すれば普通に死にます。
致死性がある&どこに落ちるか分からないという点で、冗談抜きで落雷は空襲や無差別殺人犯と変わりません。「そっちに雷雲が行きます」というのと、「そっちを空襲します」「そっちに無差別殺人犯が凶器を持って向かってます」というのと何が違うんですか。
資金があれば落雷を制御するR&Dに無尽蔵に投資したいくらいです。
今回は、そんな雷が苦手な私がどうやって雷のあるこの世の中で生きていっているのか、どのように対策を立てているのかについて書いてみます。
雷雲から逃げる(地下がおすすめ)
雷が苦手な人にとって最も理想的なのが「そもそも雷雲と出くわさない」ことなのは100%間違いありません。「雷が来たときにどう耐えるか」について対策を巡らせるのも重要ですが、まず「雷が来ませんでした」で終われば何一つ問題はないのです。
とすれば、最高の雷対策は雷雲から逃げることをおいて他にありません。
とはいっても、雷雲が近付いてから逃げるのは自分に直撃する可能性もあるのできわめて危険です。建物の中から絶対に出てはいけません。
天気予報アプリなどを駆使し、これまでの雷雲の動きから、自分のいるところに直撃することが見て取れる場合に、まだ安全なうちにその雷雲の動きの範囲外に避難すれば理論上はそれが最善策です。
……とはいっても、現実的にそんな広範囲を逃げ回ることができるのかという問題があります。雷雲は数十km以上の大きさであることが多いので、「おー雷雲来たか、逃げよ、よし逃げきれたー」となることは現実ではほとんど不可能でしょう。
そういう場合には手っ取り早く地下に逃げるのが一番です。大雨のときには浸水の可能性があるため「地下一択!」と絶対的に勧めるわけではありませんが、地下の遮音性は圧倒的に高く、すぐ近くに落ちても本当に無音です(実際に、1kmも離れていないところに落雷が直撃しても全く気付かず、天気予報アプリのレーダーを見て初めて落雷があったことに気が付いたことがあります)。「雷雲が近付いてきたらここに逃げよう」という地下のスポットをいくつか確認しておき、雷の多い時期に避難経路を常に意識しておくことは非常に有用な対策だといえます。
私がよく使うのは、地下鉄の駅などにある↓のようなブース型のワーキングスペースです。
地下+耳栓+(周囲の目が気にならないのであれば)イヤーマフの三点セット(?)で不安や恐怖は少なからず抑えられるかと思います。「直撃しているけど音も聞こえない&光も見えないし、(地下のため)身体への危険もない」という状況であれば相当安心できるでしょう。
職場など周囲の理解を事前に得る
雷雲から避難する方法にしても、業務時間中であれば職場がそれを許すことが必要です。「雷が怖いなんて子どもっぽいと思われるのが嫌だ」といった理由でカミングアウトができない、という方の話も複数聞きますが、恐怖症に大人も子どもも関係なく、恐怖症を「子どもっぽい」と断じる人間こそ大人として他者を理解する力のない子どもなんです。自分のメンタリティを素直に自分で受け容れてカミングアウトし、「雷が来ても逃げられない」状況を作らないよう自分で自分の仕事をデザインするくらいの気概が必要ですし、現に私はそうしています(避難した場合は避難先でテレワークできるようにしています)。雷が来たときに仕事から逃げられないのが辛いなら、雷が来そうなら逃げられるように下準備をしておけばいいんです。幸い私の職場は温厚な方が多く、私が雷が苦手なのを理解してくれるのですが、「雷ごときでグダグダ言ってんじゃねえ!」とか言ってくるような職場だったら即転職してます。
カミングアウトしていないと、いざ雷が来たときに仕事で周りに迷惑をかけてしまう可能性もあります。怖いものは怖い、それの何がいけないんですか。恐怖症は甘えでは全くないことはもっと声高に主張されるべきだと思います。
恐怖の対象を客観的・具体的に把握する
雷に限らず、ただ漠然と「●●が怖い」とだけ自分のメンタリティを捉えていると、いたずらにメンタルを消耗してしまうおそれがあります。恐怖の対象が具体的ではないと具体的な対策も採りようがないためです。そのため、自分は「これのここが怖い」を客観的・具体的に言語化することが、適切な対策を考える前提として必要となります。
冒頭にも書きましたとおり、なぜ自分が雷が怖いかといえば「落雷の爆音で驚く」「落雷に致死傷性がある」からです。とすれば、「驚くような音が聞こえない」「落雷による死傷の可能性がない」環境の構築が恐怖症への対策になります。実際、例えば雷雲が真上にあって雷が落ちまくっていたとしても、例えば地下鉄の駅の地下深い階のような「驚くほどの爆音の聞こえない」「雷による死傷の可能性がない」環境にいれば怖くないです(もちろん、落雷がある際には豪雨もセットの場合がほとんどですので、安易に地下に逃げると冠水のリスクもあります。そういったリスクを否定し「とにかく地下に逃げろ!」とだけ主張する意図ではありません)。
そのようにして、単に「恐怖症を克服したい」とだけ考えるのではなく、「怖くない環境はどのようなものか」を「具体的に何が怖いのか」から逆引きすることが精神の平静を保つ上では非常に重要といえます。
最後にそれに関連して、私が具体的な雷対策として使っているグッズを紹介いたします(広告ではなく、純粋に今まで自分が使ってきた中で一番高い効果を感じられたものです)。自分と同じく「音がダメ」な方が「遮音」をメインの目的とした対策を考えるにあたっての一助になれば幸いです。
3M E-A-R フレキシブルフィット
これまで十数種類の耳栓を使ってきましたが、「遮音」という性能に特化していえばこれを超えるものはありませんでした。遮音値35dBという文字どおり圧倒的な遮音性能があり、雷のみならず広く大きな音が苦手な人におすすめできます。
耳栓には大きくフランジタイプとフォームタイプとがありますが、(全部が全部そうというわけではありませんが)フランジタイプは簡単に装着できますが遮音性能が低め、フォームタイプは遮音性能は高いですが装着が面倒(耳の穴の形によってはうまく装着できず耳栓の役目を果たさない)と、長所・短所がそれぞれあります。
しかし、このフレキシブルフィットは遮音性能がきわめて高い&簡単に装着できるというそれぞれのいいとこ取りをした画期的な製品です。フレキシブルフィット発売のニュースを聞いたときは「これは最高のものが来た!」とかなり嬉しかったのを覚えています。
同じく雷恐怖症の友人にこの耳栓を紹介したところ、着けて寝たら近くに雷落ちたけど気付かずにそのまま寝ていられたという超ナイスなエピソードが生まれました(次の日のニュースで落雷の事実を知ったとのことです)。
ただ不思議なのは、この耳栓、これだけの傑作であるのにもかかわらず異様に知名度が低いです。一人でも多く雷の爆音が嫌な人にこの耳栓の存在を知ってほしいです。
3M PELTOR X5
正確にいうと私が使っているのは “X5A” というモデルなのですが、公式サイトに紹介ページが見当たらないので現行モデルと思しきX5を紹介します。
こちらも純粋な「遮音」の性能でいえば経験上世に出回っているイヤーマフの中では最強クラスなのではないかと思います。かなりゴツい構造のため持ち運びはそれなりに大変&着けると目立つという点はありますが、それを差し引いても遮音性能の高さが他に試したイヤーマフを明らかに上回っていたことは確かですので常用しています。ゴツい構造ならではの安心感(?)もあります。
自分は普段、雷鳴が聞こえてきたときにはまず↑のフレキシブルフィットとこのX5 (X5A) を一緒に着けて精神の平静を保つよう努めています。実際装着しているときに近くに雷が落ちたこともありますが、音量だけでいえば特に驚くこともなかったです✌️
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