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【実施レポート】ハラルマーケットスタディーツアー inMalaysia

こんにちは!Sustainable Food Asiaの佐藤です。

2023年2月16日、17日に開催したSustainable Food Camp 2023(以下:SFC2023)と併せて参加者限定で、2023年2月15日にハラルマーケットスタディーツアーを実施しました。

SFC2023に日本から参加する方の多くが「ハラルマーケットが実際どのようなトレンドや傾向があるのか知りたい」「WEB上の情報ではなく現地で様子を知りたい」という声が多かったため、実施することになりました!

本記事ではその様子をお届けしていきます!

ハラルマーケットスタディーツアー実施概要

名称:ハラルマーケットスタディーツアー
主催:ふぁん・じゃぱん株式会社/Sustainable Food Asia株式会社
日時:2023年2月15日 15:00-18:00
概要: ・Yakult Malaysia Seremban Factoryの見学
            ・ ハラルマーケット概要説明
            ・AEON IOI Putrajaya店見学

AEON IOIの説明をする五木田氏

この企画はふぁん・じゃぱん株式会社様(以下:ふぁん・じゃぱん)と共同主催で実施しました。

ふぁん・じゃぱんは2014年設立後、メインの拠点・市場をマレーシアと位置づけ、日本の商品をマレーシアへ輸出展開するだけでなく、自社でハラル認証のある製造工場を所有し、生産から販売を手掛けています。

日系企業のインサイトも理解した上で、マレーシアマーケットのトレンドを熟知しているふぁんじゃぱん五木田氏の解説も交えながら、スタディーツアーは実施されました。

Yakult Malaysia Seremban Factoryの見学

ヤクルトマレーシアのスタッフの方にご協力いただき、ヤクルトさんの現地の取り組みやハラル工場におけるポイントについて教えていただきました!

Yakult Malaysia Seremban Factory

■ハラルについて

「ハラル(Halal)」はアラビアで「許可された」「許容された」という意味であり、反対語は「ハラム(Halam)=禁じられた=ノン・ハラル」です。
食品以外にも化粧品や生活関連消費財全般にも適用されています。

「ナジス(Najis)=不純・腐敗・不潔)を含むもの」は全てノン・ハラル商品に位置付けられています。

例えば、豚から派生したもの(ポークベーコン、ラード、ゼラチン)、ハラムに触れた食品(製造・加工・調理・運搬家庭等)、ヒトや動物の開口部から排出した液体(尿、血、吐しゃ物、排泄物等)、海洋生物を除く死肉、シャリア法に基づいた方法で解体されていないハラル動物、アルコール飲料・アルコールを含む覚醒作用のあるものなど、ノンハラルの項目は詳細に明文化されています。

ハラル食品工場の運営においては、工場にハラル認証が与えられるのではなく、「製品」に与えられます。認証に伴う諸条件は大きく分けると「衛生面(HACCP)」と「宗教面」の観点で成り立っています。

例えば宗教面においては、ハラル委員会の設置や、ハラル製品とノンハラル製品の完全別輸送、豚肉・アルコール等を施設敷地内に持ち込まない等が挙げられます。

また、同一工場でハラル製品とノンハラル製品を生産することは、別棟でも不可です。

権威性の高いハラル認証を取得し、日系企業がマレーシアに展開している事例を伺うことができ、非常に良い機会となりました!

ヤクルトさんの取組の特徴として「草の根活動」により、マーケットシェアの獲得は非常に長い道のりを越えてきているとのこと。

例えば、味の素社はマレーシア建国直後の1961年に参入し、マーケット認知とシェアを獲得してきているのに対して、ヤクルト社は2003年と後発組。その中で、地域での料理教室の実施、子供向けのスポーツ大会の主催、病院食に活用される等、様々な活動を経て、マレーシア国内でのシェアを獲得されていました。

マレーシア国内での商品展開に置いての特徴として、例えばCMを流す場合でも「中華系」「マレー系」「インド系」と民族毎にCMを用意する必要があり、広告費が上乗せされます。

また、パッケージデザインも日本展開していたものを純粋に横展開すればよいわけではなく、現地消費者の「手に取ってもらえる」パッケージデザインを制作し直す必要があるようです。

実際にヤクルト社がマレーシアで後発展開をスタートした際にも、市場調査の際に、嗜好性としても日本商品の購買ポテンシャルが存在する事を見極め、ハラル認証を取得を前提とし、現地工場を構え、ムスリム市場を抑えに行くことを見据えて、マレーシア市場への参入をされたようです。

ツアー参加者の集合写真@

・マレーシアのハラル認証制度は政府(イスラム開発局:JAKIM)が運営。
・JAKIMとの相互認証制度が存在する。日本は7機関が相互認証。
(日本ムスリム協会, 日本ハラル協会, 日本ハラルユニット協会, 日本イスラーム文化センター, ムスリム・プロフェッショナル・ジャパン協会, 日本アジアハラル協会,ジャパン・ハラル・ファンデーション)
・JAKIM相互認証機関以外のハラルマークを表示し、マレーシア国内でサー ビス提供を 行った場合、「取引表示法違反」で罰金又は禁固刑。
・日本産食品のマレーシア輸出は当該7機関のいずれかで認証取得が必要。
ハラル認証は2年に1度の更新が必要。

※ハラル認証制度の補足

ハラルマーケットの特徴(マレーシアマーケット概要)

・面積: 約 33 万 km 2 (日本の約 90%)
・人口: 3,266 万人 (日本の約 26%)※構成比:マレー系65%、華人系20%、インド系6%、その他+外国人で9%
・宗教: 国教はイスラム教(ただし、信教は自由 連邦憲法第 11 条)   < 構成割合 > ※2020 年  
イスラム教 63.5 %、仏教 18.7 %、
キリスト教 9.1 %、ヒンドゥー教 6.1 %など
・言語 :マレー語、英語、中国語、タミル語
・GDP:1人あたりGDPがASEAN6でシンガポールに次ぐ10,538ドル    ※2000年対比で263%成長
・所得層:
世帯年間可処分所得35,000ドル以上の富裕層が人口の2割(約666万人)
世帯年間可処分所得15,000ドル~35,000ドル未満の上位中間層が約5割(約1,492万人)
・平均年齢29.6歳、生産年齢人口(15歳~63歳)が総人口の2/3

マレーシアの概要

SFC2023の開催地決定理由にも記載の通り、中間所得者層(ムスリム)の所得向上により、マーケットが変化し、今後の展開として、ハラル認証を取得した日本製商品ニーズの更なる高まる傾向にあります。

所得向上、健康・美容関心高まり、ムスリムの日本製品への関心高まっており、ポイントは【ハラル認証取得 × 中間層が購買可能な価格】です。 

Ex, ドン・キホーテ進出等で小売からハラル対応商品のニーズが高まってきています。


ハラル認証製品取得展開において、マレーシア現地に製造販売体制構築がなされ、マレーシアを拠点とした、ハラルマーケットへの展開のハブになり得ます。マレーシアの高い購買力、民族の多様性、がハラルハブになり得るため、マレーシア国内で加工・製造拠点構築により、販売価格を抑え、市場競争優位になります。
※既に韓国商品が低価格で市場参入を開始。人気高騰中。

また日系企業がマレーシア市場へ参入する際の市場シェア獲得の一般的なステップとしては、高所得者層かつノン・ハラル商品消費対象の「中華系」のシェアを取りつつ、「マレー系」のニーズやフィットする商品を見極め、商品を展開が通常のようです。理由としては、中華系のみでは売上のトップラインが限界であることなどがあげられます。

AEON Putrajaya @IOI City Mall 見学

続いて見学に向かったのは「AEON Putrajaya @IOI City Mall」。

Ptrajaya(プトラジャヤ)は国際空港、クアラルンプール市街地からも約30kmの位置にある、マレーシアの行政新首都です。また、IOI City Mallはマレーシア最大級のショッピングモールであり、650以上の店舗が入居しています。

AEON Putrajaya店を五木田氏に解説いただきながら店内を見学。

まず入口付近にスイーツコーナーが展開されていて、所得水準の上昇を物語る商品陳列の配置になっています。(例えば、ベトナムのショッピングモールなどでは、店頭は果物などがメイン)

健康志向が高まっていることもあり、オーガニックの食品や野菜コーナーなどの充実が見られたことも特徴的です。政府の取組としても、「砂糖税」と言われる規定値を超える砂糖を含む甘味料に対しての物品税(約11円/L)が課税されたり、Healthier Choice LogoやmyOrganicなどの健康志向水晶や、安全で高品質な有機農産品の生産奨励を促進しています。

当然、売場の9割以上はハラル商品が陳列されており、ノン・ハラル商品はお店の奥の隔離されたコーナーでひっそりと展開されていました。やはり、ムスリム大国で消費者の手に届くにあたり、「ハラル認証」取得は必須であることが伺えます。

また、中間所得者層へのアプローチとして韓国製のハラル認証取得済みの製品の陳列が目立っていたり、飲食店としても数多く展開されていることから、韓国の中間所得者層への市場展開の強さも台頭していきています。

まとめ

SFC2023を開催するにあたり、重要なマーケットとしても位置付けていた「ハラル市場」について、最新のトレンドや傾向について知ることが出来る大変貴重な機会となりました!

「ハラル認証」「ムスリムの方の生活習慣」「生産・流通・販売の流れ」等、現地を訪れて実際の様子を専門性を持ち合わせている方の解説ありきで訪れることができたので、よりコアな市場の実体に触れられたのではないでしょうか。

日系企業がハラルマーケットに展開する上でも、現地パートナーの重要性や市場理解の重要性を加味した上で、世界の約1/4を占めるハラルマーケットへの可能性とそこに届くフードテックの可能性を引き続き模索、共創して行けたらと考えております。

SFC2024の開催も決定しておりますので、ご興味ある方はプレ登録フォームにご登録いただけましたら、優先してご案内いたします。

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最後までお読みいただきありがとうございました!読んでくださったみなさと、未来を共創できること楽しみにしております!

Sustainable Food Asia 佐藤


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