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『スペースロマンサー』第15話 惑星トロル

宇宙船に戻るため、ローバーに乗って移動するノヴァとジロー

行きはイブとの通信が可能であるとは言え、孤独を感じずにはいられなかったが、今は隣に生きた人間がいる。そう思うだけでノヴァの心中として帰りの道中はうれしさがあった。

しかも、相手は別の星系からきた異なる文明の人間だ。
人類は宇宙への進出を果たし、宇宙航行技術や惑星開拓技術を進歩させてきた。それでも太陽系外の恒星系に居住可能な場所を作るのは、距離や時間、環境、資源の面から困難だった。
かつて多くの人が、それぞれの理由や事情、信念をもって、太陽系から旅立ったのだが、戻ってくるものはほとんどおらず、通信も途絶えてしまうことが常であった。
このため、太陽系文明においては、自分達の星系から飛び出した人々がほかの星系で生き延びているのかを知る術はなく、ましてや交流をすることなどはなかった。

「ジローの故郷はどんなところ?」
太陽文明にとって未知の領域にいるノヴァにとって、好奇心が駆り立てられるのも当然であった。
果たして、太陽系から離れた人類はどのような文明を築き、どのような生活を送っているのだろうかと。

「・・・・・・私が生まれたのは・・・・”トロル”という星デス。・・・・いつも戦争ばかりしているところデス・・・。」
一瞬言い淀むジロー。故郷の情報をまだ開示したくないのか。思い出したくない過去でもあるのか。
いずれにしろ、この話をすることにはあまり積極的ではない様子だった。

「戦争?」
太陽系では宇宙開発が本格化してから、各国は宇宙開発の進展により国力を競ったことから、武力の行使による大きな戦争は少なくなっていた。

「私の恒星系には3つの豊かな星があるんですが、その3つの星の間でいつも戦いが起こっているデス。」

「なんか物騒だね。どうして戦争なんかしてるんだ?」

「ずーっと昔に始まった戦争で、もう誰もどうして戦争が始まったかわかっていないんデス。ある人は相手の資源が必要だというし、別の人は信じるものが違うからだって言うデス。
私はもう戦うのが嫌で、逃げ出してきたデス。」
ノヴァは、この話にジローが乗り気でなかった理由がなんとなくわかった気がした。

「ノヴァさんの故郷の太陽系はどんなところデスか?」

「俺の故郷は・・・・・。」
ノヴァが話そうとしたところで、イブから通信が入る。

「マスター、そろそろ到着します。」

「俺の故郷についてはまた今度ゆっくり話すよ」

「楽しみデス!」


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