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ターミナル 10日間の軌跡 (上)

※この物語は、世界で唯一コロナ禍で空港内部に取り残された日本人鍼灸師の物語である。

▽目次
・コロナ陽性
・大統領非常事態宣言
・出国禁止令
・空港閉鎖48時間前
・鳴らないはずの電話
・選ばれし4人の勇者
・コロナ感染者

コロナ陽性

3月半ばを過ぎたころ、コロナとは無縁だろうと思っていた僕が暮らすセーシェル共和国内で、初のコロナ感染陽性者が確認され、人口9万7,000人の小さな島国に緊張が走りました。

2020年1月にオープンしたばかりの僕のクリニックにも、ジワジワとコロナの影響によるキャンセル連絡が増え、このまま被害が増えると仕事にならない状況に。

大統領非常事態宣言

日を追うごとに患者数が増え、コロナ陽性患者が確認され1週間も経たぬ3月20日金曜日夜、大統領による緊急事態宣言が発令。

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海外からの渡航者を締め切り、空港を閉める予定もあると言う噂まで…

発令された翌日、土曜/日曜の2日間今後の働き方を自分なりに模索。僕のクリニックは、人が多く集まる街にあるため人々が町に来たがらない

皆が来れないなら、訪問で島中を回診しようか、何か対策はないか…考えてはみたものの、答えは出ないまま。

当時、友人家族が2ヶ月間無償で家を貸してくれており、引越しを考えなければならない状況。     
もしロックダウンになれば、仕事が出来ずにクリニックの家賃に加え、家の家賃なんて厳しすぎる。

周りの意見を聞きつつ国の対応次第で、一度クリニックを閉め、最低限生活が出来る日本へ戻ろう

そう決めて、迎えた23日月曜日、恐れていた事が起きました。

出国禁止令?

午前中、患者様を施術中、会話の中で…

「さっき国民全員、出国禁止って大統領の発表があったよ!!!」

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想像以上の国の迅速な対応に、正直驚きを隠せませんでした。このまま島から出れないとなると本当に生活が出来ない

危機を感じ、すぐに大使館に電話。
大使館側もどのような対応になるか分からないと…。イチカバチか空港へ向かうことを決意し、航空券を友人に手配していただく。

13時頃、最後の予約が終わりクリニックを閉め、状況を理解してくださったロシア人の患者様に車で家まで車で送っていただき、14時頃に到着してすぐにタクシーを手配しました。
17時には、家を出ないと空港受付に間に合わない…。

日本に帰る予定はしていたので、ある程度のパッキングは出来ていたものの、掃除や片付けが…。
これ以上無い猛スピードで終わらせて、友人宅経由で空港へ向かいました。

「今日から国外に出られへん言われてんのに、出国なんかできるんか?」

そんな不安が募る中、道中車内で情報をかき集め、17:45無事に空港へ到着。予想とは裏腹に、空港には長蛇の列。どうやら、観光客にとっては、今日が最後の便となり、現地人やビザ持ち外国人は、やはり出国が出来ないと言う噂が…。

ビザもち外国人である僕は、ビクビクしながら列に並び順番を待ちます。僕の番…、チケットの仕様の関係で日本までのチケットが発行出来ないというトラブルが発生!!!

コロナで経由先の空港が閉まってしまい、帰国が出来なくなった方が、横で泣き崩れるカオスな状況の中、ここに取り残されたら本当に厳しい状況になるので何がなんでも諦めるわけにはいかず、カウンターにへばり付いて何度も確認、解決方法を模索しました。

必死の交渉の末、最後の最後で、日本までのチケットを発行していただき、ビザ持ち外国人は出国出来ないと噂されていましたが、幸運にもイミグレーションを無事に通通過し、ロックダウン寸前のセーシェルを出国する事が出来ました!

機内では、友人のCAさんが働いていたこともあって色々と差し入れをいただき、ここまでの緊張が徐々に解れていくのが分かるほどゆったりとした時を過ごしました。

この後に待ち受ける悲劇など、これっぽっちも予想もせず…。

空港閉鎖48時間前

0:50 経由地 アラブ首長国連邦(UAE) アブダビ国際空港に到着。
到着するとアブダビ国際空港は、48時間後に空港を閉鎖するという国の発表に従ってターミナル1が閉鎖されていました。

その影響で、

「予約を取っていない人は、この通路は通せない。」

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