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【林業日記24】原木市場の競りに初潜入。木の活用法を探ってみる。

一般的に林業で活用される樹種といえば「スギ」「ヒノキ」が思い浮かばれるわけですが、現場をいくつかこなしていくと、それらの針葉樹だけではなく、広葉樹に出くわすことも多々あります。

しかし、この広葉樹ってどうやって売ればいいのだろう?

もちろん地域によっては広葉樹が多く、むしろそちらが主流という地域もあるかもしれませんが、私たち夫婦が林業をこの地域では先述した針葉樹の2樹種が大半を占めているので、広葉樹の活用法を見出せずにいます。

自分たちが木工をして、うまく付加価値をつけて販売して、山主さんにも少しでも利益をお返しすることなどができればいいですが、切って市場に出して…だけでも精一杯な私たち。

そんなときに夫が高知県で「高知県林材」というところで、広葉樹の競りが行われているという情報をキャッチし、私たち夫婦林業ヤドリギ主催の講習会として町内の若手林業従事者に案内し、みんなで競りを見に行ってきました。

たくさん並んだモミの木

競りの市場に到着して、9時からはじまったのは「モミの競り」。

クリスマス時期に、日本でもフェイクのモミを飾ることが一般化され、なんとなく馴染みのある樹種ですが、実は私たち夫婦が最近購入した山林内にも多く自生していて、その価値をどうしたら見出せるんだろう?とたびたび話題にも出ている木でした。

モミの競りに参加されていたのは数名。ほとんどのモミの買い手が決まったことも驚きましたが、その使い道にも「へ〜〜〜!!」とついつい大きな声を出したくなるほどでした。

たとえば、かまぼこ板や器を入れるための箱、棺桶に使われるんだそうで、確かによくよく材をみてみると、心材も辺材も白っぽくて匂いもなく、なにかと使い勝手がよさそうです。

モミの競りを私たち同様に見学されていた方曰く、九州から買い付けに来られている方もいたようで、これだけモミが集まる場も希少なんでしょうね。

また最近はどうかわかりませんが、昔はモミは天井材にも使われていたんだとか。

さて、そのあとには、スギやヒノキの競りもはじまり、同時に広葉樹の競りもいよいよはじまりました。

やはり割合としては、広葉樹の競りに出ている材が少ないようですが、木工などをされる方が買い付けにこられているようでした。

ざっと覚えている中では、イチョウやナラ、サクラ、ケヤキ、ホオノキなどが競りにかけられ、いくつかは買い手がありましたが、結構残った広葉樹も多かった…という印象。

以前、特殊伐採の仕事を請け負った現場で、別にお願いしたい木があると相談され、その樹種が「ケヤキ」だったので、ケヤキの売れ行きは夫婦して気になるところではあったものの、その場では買い手がつかず。

「ケヤキって昔は高値でやりとりされたみたいだけど、今はそうでもないのかな」

と思っていたものの、市場に見学と買い付けに来られていた方曰く「材の状態があまりよくないから売れなかったのでは」と言われていて、なるほどなと感じたことでした。見る目を養うのがまずは大変だ。

それにしても広葉樹の競りで、この木はいくら!と場を仕切る「振り子」さんがいるのですが、その方のトーク技術というか、テンポよく、どんどんと樹種と値段をバチバチと切り出していく、あのすごさは永遠に見ていられるし、自分にはできない仕事だわ…と妙に関心してしまい、あの技術がなければ、この競りは成り立たないわけで、廃れてほしくない業種だなと勝手に感じておりました。

どんどん売り手が決まっていく

「はい、これ1万円か、1万円か、1万1千円か、〇〇さんで決まり〜」
「2万円、2万円、はい、1万9千円で、〇〇さん、いらんかね?」

というようなフレーズがあちこちで流れ、買い手の人々は手をあげたり、指で金額を提示したり、初訪問の私は「これ何の合図だろう」と考えている間に、次の材の値段がどんどん決まっていく…というスピード感。

ちなみにこの値段は、立米あたりの値段で、1本あたりの値段ではないので、実際に計算してみると「安っ!」となることもあれば、この値段で売れるのか!と思うことがあったり。そう考えると、だいたいの相場はあれど、振り子さんによって相場が決まるって、なんて責任重大な仕事!

そして買い手としても、目利きが必要な上、あのスピード感についていかないといけないなんて、慣れまでに時間がかかりそうだなと、買い手になる予定は当面ないですが、勝手に想像してしまったのでした。

いやー、本当におもしろい場で、人気でどんどん値上がる材もあれば、ぎゃくに値切られていく材もあったりして、あの場で値上がる材がたくさん出てくれば、林業従事者の給与も少しは上がるのかもしれない…と思うと、木の活用法というのは本当に大切なところで、木を切ることも必要なことではあれど、木の活用法からも川上の人間も目をそらさずに、考えていきたいものです。

「またぜひきてくださいね」とも言っていただけたので、また夫婦で競りにおじゃまできればと思います。

次は買い手になってみるか…?いや、売り手として材を出してみるか?などと考えてみると、木の楽しみ方って尽きるところがありません。

日本人と木がもっと仲良くなれるきっかけづくりを夫婦で作っていきたいなあ。

それでは年の瀬。今年の林業マガジンはこれにておしまいです。どうかよいお年をお迎えください。

来年ももっと森に近く、森と楽しく。

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