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【林業日記22】多様性のある森づくりのために、ドングリを1,200個植えた話。

多様性のある森づくりってなんだろう。

私の大学の卒論のテーマが「多様性」だったこともあり、多様性というワードを聞くと反応してしまいます。

林業日記も22回目となったにも関わらず、このテーマに触れたnoteを書いていなかったのは盲点。これからの私たち夫婦林業ヤドリギの方向性として、このままではいかん!と思ったので、筆をとってみます。

「森づくりも人間と同じで、もっともっと多様でいいんだ」

新居建設地付近の山は多様性ある場にしたい

そう思うきっかけとなったのは、2021年10月に私たちの暮らす本山町で開催された、近自然の森づくりの講習会でした。

講師で来てくださっていたのは、近自然の森づくりの普及活動をされている、佐藤浩行さん。

生産性を求めるだけの林業ではなく、環境をより豊かにしながら、同時に林業という産業として成り立たせたいという想いを持って活動されている方で、佐藤さんから発される一言一句が丁寧で、すごく感銘を受けた講習会でした。

現在、私たちの暮らす本山町の町土の9割は森林で、その大半はスギやヒノキの針葉樹人工林。

長野県に旅行へ行った時、落葉広葉樹林のもたらす風景には言葉を失うほどに感激したものですが、落葉広葉樹林ばかりだと、それもそれでおもしろくないことでしょう。きれいで、もちろん使い道としてもいろいろありますが。

針葉樹もそれはそれで使い道があり、それぞれの樹木を適材適所で使ったり、いろんな樹木が町内にあれば、きっといろんな楽しみ方ができるはず。

それは自分たちの暮らし方も変えるかもしれないし、暮らしをより豊かにしてくれることは常々確信しています。

そんなことを佐藤さんの講習会を受けてより痛感したのですが、そのことを学ぶ少し前に、夫が「クヌギの育苗をやってみたい」と言い出し、数万円を種代として支払い、1,500個のクヌギのドングリを仕入れてきました。

そこから虫殺しなどをして、最終的に手元に残ったのは、1,200個のドングリ。

2020年11月、それらを夫婦ふたりで苗畑に植え、翌年に発芽。

参照動画:【山づくり】木こりの夫婦がはじめた、どんぐりの森づくり|クヌギ1200個は発芽したのか?【広葉樹林】

そこから草に負けないように定期的に草刈りを行いながら、2022年8月現在、およそ50~60cmほどの背丈にまで育ちました。

これは半年ほど前。今はさらにぐんと大きく成長!

全体的な苗の数は、草刈り時に飛ばしてしまったものもあったり、生育不良で枯れてしまったものもあるので、1,200個からはだいぶ減ってしまいましたが、それでも無事に育っている苗木も400本ほどはあるかなと思うので、これらをなるべくそのまま山へ持っていって、育てていきたいと思っています。

今のところ、植える候補地としては、セルフビルドで家づくりを予定している新居建設地のまわりも針葉樹林がメインのため、その周辺に植え付けを検討中。

クヌギは薪としても有用で、椎茸の原木としても活用されていて、材質も強度があって硬いことから、加工は難しいものの、建材や家具材なんかにも使われている材です。

我が家では薪を使う暮らしをしています
複業で取り組む三年番茶も、広葉樹を使って焙煎

さらにはこのクヌギから出る樹液は昆虫たちも大好物で、カブトムシやクワガタのいる森づくりにはこのクヌギは欠かせないとも言われています。

つまり、多様な樹種のある森は、多様な恵みや循環を生み出すのです。

その中には、スギやヒノキも混じってても、もちろんよいのです。

これらの針葉樹は国民病ともなっている花粉症のせいで、鬱陶しがられることが多いのですが、木としてはすごく優秀で、私も大好きな樹種でもあり、蒸留水なんかも作っています。

自家用だけど本格ラベル(笑)

その他にも、多様性のある森があればおもしろいことができる!と思うのは、グリーンウッドワークをはじめたことも大きくあります。

グリーンウッドワークとは、木を切ってばかりの、水分が飛んでいない状態の生木のままで加工をすることを指し、水分を含んだ状態のため、やわらかくて加工がしやすいと言われています。

さまざまな樹種でつくられた一輪挿し

木によって、削り方によっても、みせてくれる表情が違い、それぞれに個性のある作品ができるグリーンウッドワーク。

そのおもしろさは一度やってみるとわかるのですが、そのままハマる人も多く、最近は国内でもあちこちで取り組まれています。

こちらもいろんな木でいろんな人が作った暮らしのカトラリー。

「木」と一言にまとめても、いろんな使い道があって、意外と身近なところに、さまざまな木が使われていたりするもの。

木は切らずにそこにあり続けた方がいいと考える方も一定数、世の中にはいますが、木も生き物なのでいつかは衰えていくからこそ、木をベストな状態のときに伐って活用していく、そんな人と木が共存していく社会が素敵だなあと個人的には感じています。

もちろん切らずに置いておいて、木の寿命を全うするというのも一つの選択肢としては大いにありだと思いますが。

ただ、木は野菜や果樹なんかと違って、成長スパンに何十年という月日がかかるので、リスクマネジメントとして、いろんなやり方を模索しながらやっていきつつ、自分たちが求める「多様性のある森づくり」をしていきたいと思います。

日々、実験!

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