100円玉握りしめたデクノボウ

小さい子供が100円玉や500円玉を握りしめて買い物に行くシーン。
主に行き先はなんとなく駄菓子屋のイメージだ。

それはお金を持ったことがないまだ小さい子供が、与えられた限りある金額の100円や500円の中で自分の好きなお菓子を選んで買うというなんとも素敵なシーンだ。

いわゆる"はじめてのおつかい"のようなイメージである。

さらになんとなくのイメージだが、その硬貨を財布には入れず、小さな手に握りしめ、よちよちと歩いて買い物に行くのである。


嗚呼、なんと愛おしい素敵な光景だろう。


僕も小学校低学年の頃は100円玉を握りしめて、近所のスーパーにお菓子を買いに行ったような記憶がある。

僕にも可愛らしい時代があったのだ。

だがPayPayにクレジットカードを連携させ、自動引き落としされる設定にした今の可愛げがない僕には無縁である。

そんな今の僕に、100円玉を握りしめて買い物をするというまさかの場面が到来した。

2022年9月14日水曜日、残業をしていた僕は残業時間が1時間を過ぎ疲れが見え始めたころ、気分転換に会社近くのファミリーマートにコーヒーを買いに行った。

ファミリーマートに入店した僕は、機械で注ぐタイプのアイスコーヒーを飲むため、Sサイズの氷が入ったカップとブラックサンダーを2つ手に取り、レジへと向かった。

このファミリーマートは、アジア系の外国の方が多く働いている。

会計時、僕は店員に「PayPayで」とスマートに言い放ち、スマホの画面に映るQRコードを店員に見せた。

レジを終え、あの"コーヒーを注ぐマシーン"の前に立った僕は、ある違和感に気付いた。

カップをセットする為に開くはずの透明のレバーが開かないのだ。

なんと、二つある内のもう一つの注ぎ口の方も開かない。

さらに僕はコーヒーマシーンの違和感に気付いた。

なんと、マシーンが "コポコポ" 言っているのだ。

「只今調整中です★」とマシーン自ら言わんばかりに"コポコポ"言っている。

なんか見たことのない青いライトも点灯している。

時々 "ピーッ" っと、まるで作業が完了したかのような音が鳴るのだが、全く透明のレバーが開かない。

すぐに店員を呼ぼうとしたが、見渡す限り店内には先程レジをしてくれた店員の一人しかおらず、現在もレジ打ちを続けていた。

店員がレジを終え、会計待ちの客がいないことを確認した僕はレジへと向かい、コーヒーマシーンが使えないことを伝えた。

コーヒーマシーンが使えないことを聞いたそのアジア系外国人の店員は、なかなかの声量で「アッ!忘レテタッ!!!」と言った。



なんとも嫌な予感である。


忘れていたことを本当に今まさに思い出した時の、物凄く純粋な「アッ!忘レテタッ!!!」が出たのである。

その店員は続けて、「5分グライ機械ガ使エナイノデ、返金シマショウカ?」と僕に言った。

文面にするとダイジョーブ博士みたいになってしまっているのだが、機械の前で5分待つのもなんだかなあと思った僕は、向かいの横断歩道を渡った先にローソンがあることを思い出し、そこでコーヒーを買うという結論に至った。

店員さんには返金をお願いし、無事PayPayで払った100円が現金で返ってきた。

100円玉が自分の手に渡った瞬間、僕は冒頭に書いた子供が100円玉を握りしめて買い物をするという愛くるしい光景を思い出した。

もう26歳の、年齢だけは立派な大人になった僕は100円玉を握りしめている。

もちろんすぐに財布に入れることも出来たのだが、なんとも言えない懐かしさから、僕は100円玉を握りしめたまま向かいの横断歩道を渡った先にあるローソンへと向かった。

ローソンに着くとすかさずレジに向かい、アイスコーヒーの一番小さいサイズを注文し、握りしめていた100円玉をレジのトレイに置いた。

財布から取り出すのではなく、握りしめていた100円玉を出す動作に懐かしさを感じた。

100円玉を手のひらから出し、人生で初めて"エモく"なっていた僕に、ジャパニーズ店員がこう言った。



















「あ、110円です。」




















ハイ?????























いや、110円かーーーーーい!!!!!










ノスタルジック及びエモーショナルな気分に酔いしれていたら、10円足らんのかーーーーーい!!!!!!








コンビニコーヒーの一番小さいサイズって100円で統一されてなかったぁ〜〜〜!?!?!?








おい、ローソンの野郎!いつからコンビニコーヒーの低価格競争から抜けてるねん、このバカタレが!














もうまじで勘弁してクレオパトラ★







僕の心の中にいるツッコミ番長が、矢継ぎ早にそう言った。






結局僕は財布の中から渋々10円玉を取り出し、無事に支払いを終えた。


おい、ローソンよ。僕のエモーショナル及びノスタルジックな気分を返してくれ。


そんなこんなで退勤した僕は、各コンビニチェーンのコーヒーの価格を調べて驚愕した。









ハイ!?!?!?






セブンイレブンも110円!?!?!?!?!?





いつから!?!?!?





言うといてやそんなん。




100円を維持してるのファミマだけやないか!
ファミマほんまにありがとう!!!



それからというもの僕はこれまで通り、100円玉なんかは握りしめず、ノスタルジック及びエモーショナルとは真逆の冷めた顔で、「PayPayで」と店員に言い放ち、コンビニで買い物をしている日々である。




さらにこの出来事の約2週間後の9月27日にファミリーマートのコーヒーも値上がりし、110円になりました。






生まれて初めて言いますが、「トホホ......」でございます。







そんなことよりここまで読んでいただき、ありがとうございます。



皆様2022年はどうでしたでしょうか。

あっという間に過ぎ去りましたね。

今年も懲りずに三山ひろしは紅白でけん玉をするそうです。

そして氷川きよしはまた「限界突破×サバイバー」を歌うそうです。

全王様もオッタマゲ〜ですね。

それでは良いお年を。

次の投稿がいつになるかわかりませんが、次も出来れば読んで下さい。オネゲーします。


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