Onaraはずかしくないよ
YouTubeを開くと、女装したはんにゃの金田がかなり久しぶりに、ピラメキーノで昔人気だった「Onaraはずかしくないよ」を踊っていた。
聞いているか、はんにゃの金田よ。
おならは本当に恥ずかしいものだ。
「Onaraはずかしくないよ」なんて励ましてもらえるのは、家族や友人、長く付き合っている恋人といった馴染みの人の前で、なんとも愛らしいポップな音で「ぷぅ〜っ♡」と可愛いおならをこいてしまった時だけである。
何を隠そう、僕は今日馴染みの人なんているはずの無い、完全アウェーの通勤電車の中で爆音の屁をかましてしまったのだ。
「ぷぅ〜っ♡」なんて可愛いものではない。
もっと豪快で、必死に絞めた僕の自慢の肛門フィルターを堂々とぶち破ってきた、これぞ悪い見本のような屁をこいてしまった。
もし幼い子供を連れて歩くお母さんがその屁の音を聞くと、幼い子供の耳元で「あんなオナラ、どんなことがあっても絶対に生涯こいちゃダメよ」なんてことを言い出しそうな屁だ。
振り返ると、絶対に一人でいる時にしか出してはいけない屁だった。あんなに後悔をした屁は初めてだ。
例え一人でいる時にこいたとしても、「やばっ」と驚きの独り言を呟いていたことだろう。
この屁がどのように放たれたか振り返ろう。
ちゃんと振り返ってしっかりと反省して、二度とこのような屁をしないようにしよう。
そう、今回は"自分史上最悪の屁"を振り返るお話だ。
さぁ、恐る恐る振り返っていこう。
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朝、僕はいつも通り電車に乗って会社へと向かっていた。
会社へ行くには、数回乗り換えが必要だ。
その一回目の乗り換えをする為に、座席から立ち上がり、ドアの前に立った。
乗り換える車両は向かい側のホームに来るので、ドアが開いたら真っ直ぐ少しだけ歩くだけだ。
やがてすぐにドアが開き、向かい側のホームに歩き始めた途端、僕は違和感を感じた。
突如激しい屁意(尿意の屁バージョン)に襲われたのだ。
「あ、おなら出そう...」
シンプルにそう思った。
しかし向かいのホームにはもう乗り換える電車が来ていたので、踏み出した歩みを止めることは出来ず、僕は向かいのホームに辿り着くまでの僅かな時間に、少し肛門を締めて、ゆっくりと屁を出すことを決意した。
屁を出すというより、「屁を抜く」といった感じだ。
音を出さずに、"スーーっと"屁をゆっくり抜くイメージである。
しかしその作戦は失敗に終わる。
屁を"スーーっと"上手く抜こうとしたのだが、いかんせん歩きながら屁を"スーーっと"抜いた経験があまり無いので、上手く抜けず、むしろ屁の本体がお尻の奥の方にこもってしまったような感じになった。
出そうになったゲップを無理して飲み込んだ感じに近い。伝える為とはいえ、屁をゲップに例えるという、お下劣にお下劣を重ねる形になってしまったのだが、この例えが一番伝わりやすいと思う。
結果的に、僕は溜め込んだ屁をお尻に抱えながら、乗り換える電車に乗り込んでしまった。
乗り込むと、不思議と屁意はおさまったような気がした。
ただそれは、僕の勘違いだった。
屁意がおさまった僕は少し安心したのか、肛門の力を少し緩めてしまった。
その途端、悲劇は起きた。
「ボヴゥゥゥェ!」
なんと、これが屁の音だ。
正直これは自分でも引くほど誇張している。
本当は、「ブゥゥゥー!」
シンプルにこんな感じだ。
まあひどい音には間違いない。
僕のしていたイヤホンはノイズキャンセリングモードになっており、外の音はほとんど取り込まないモードにも関わらず、確かに屁の音が聞こえたのである。
ノイズをキャンセリング出来なかったのである。
しかもその時、ノイズをキャンセリング出来なかったイヤホンで聴いていたアーティストは、普段はあまり聴かない"アナーキー"という僕とは縁もゆかりも無さそうなゴリゴリのラッパーだった。
"アナーキー"ではなく、"くるり"や"スピッツ"を聴いていたら、もっと柔らかい、電車内を包み込むような優しいおならが出来ていただろう。
ただやはり"アナーキー"の力は絶大で、屁にも"アナーキー"が乗り移ったような、力強く、殺傷力の高い屁を、僕はぶちかましてしまった。
嘘をつくと、"屁"が肩で風を切って歩いたのである。
僕の屁はやはり音がしっかりと鳴っていたようで、周りの人たちが何人か僕のことをチラチラと見ていることがわかった。
お気づきだろうか。
僕はもうこの車両では「屁の人」になってしまったのである。
もうこの後どんな善行を積んだとしても、
「屁の人」が無理をして何か頑張ってるぐらいにしかならないのだ。
例えば次の到着駅で、重い荷物を持ったおばあさんが車両に乗り込んできた時に、お手本のような笑顔で席を譲ったとする。
そのおばあさんは、僕の"屁の前科"を知らないので、心優しい好青年と思ってくれるかも知れない。
しかし既に車両に乗っていた、僕の"無期懲役屁"を知っている周りの人達からすれば、「屁をこいたから席を譲ったんだ」「屁をこいたくせに席を譲りやがった」「屁が席を譲りやがった」「おばあさんに席を譲ったんじゃない、座席に残った屁の余韻を譲りやがったんだ」などと思うだろう。
こんな厳しすぎる状況を打破するべく、僕はある作戦を思いついた。
本当は降りるはずではないが、次の駅で降り、別の車両に乗り込むという作戦だ。
通称、"本当は降りるはずではないが、次の駅で降り、別の車両に乗り込む"作戦である。
ただこの車両内では、僕は"屁の人"になっているので、周りの乗客は、僕の動向を自然と目で追ってしまうはずだ。
すぐ隣の車両に乗り込むぐらいでは、目で追うことが出来るだろう。
「ああ、屁をこいたのがあまりに恥ずかしかったので、横の車両に移動したんだな」などと僕の行動心理を読まれることが、屁をこいたことよりも恥ずかしい。
そんなことをグダグダ考えていると、しっかりと本来降りるべき駅に到着していた。
色々と作戦を練っている内に、意外と時間が経っていたのだ。
そして本来降りるべきの駅でしっかりと降り、2回目の乗り換えに成功した僕は、無期懲役屁のことなんかキッパリと忘れ、"今から仕事か〜"という、何とも言えない表情でタイムカードを押すのであった。
この経験を踏まえ、もう僕は当分アナーキーを聴くことはないだろう。
これを機に、腸の調子が悪い時に聴く用の、包み込むような優しいオナラをする為専用のプレイリスト作成しよう。
もちろんプレイリストの一曲目は、
マキシマム ザ ホルモンの
「アナル・ウイスキー・ポンセ」で決まりである。
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