トラウマ

夜から雨が降りだす日は、
きまってバタリアンのことを思い出す。

将来は映画業界にいくことしか見えなかったくらい、
昔は毎日のように映画を観ていた。
最近は新作は年に一本観るかな程度、
私見だけど国内も海外にも全く新しい才能が出てきてないし、
2000年代はチンカスのようなムービーばっかりだ。
映像技術の進歩は製作者の創造力を誤魔化し失わせ、
コンビニエンスな時代が
視聴者の想像力とコンプレックスを失わせた。

最近の映画にはトラウマが足りない。
トラウマを植え付けられた作品は、
嫌でも内容を忘れることはない。
70年代中盤〜90年代初頭までの映画には
その要素がほとんどあった。
僕の人生の軸となってる映画は、
スティーヴンスピルバーグ映画のジョーズ、
ロバート・ゼメキス映画の永遠に美しく、
そしてダン・オバノン映画のバタリアン。
ジョーズとバタリアンに関しては、
約30年前の映画にも関わらず現代を表してる。
そして永遠に美しくは、
現代の女性心理を絶妙に映し出してる。
才能がある監督の映画は時代が常に今なんですよ、
どの時代に観ても違和感がない。
あとはどんなシチュエーションにも
あてはまるリアリティさがある。

一つ例をあげるとしてジョーズでいうと、
冒頭のシーンで若い男女のカップルが
浜辺を駆け抜けて海へと入っていくシーン。
ここの妙に生々しいところが
彼氏と水中セックスでもしたかったのか
女性側が素っ裸になって男性を海中に誘うです。
ただ、男性側は乗り気じゃなく服も脱がず
スタイル抜群の彼女がウェルカムしてんのに
あっさり断って砂浜で寝てしまって
しぶしぶ海に入った彼女が鮫に喰われて死ぬ。
翌日食いちぎられた死体に無数のカニが這いつくばった
見るも無残な状態で発見される。
ここがトラウマ、最悪ですね笑
しばらくカニ食べれなくなったし、
何なら今もすすんでは食べません。
このシーンを現代に置いてみると、
このご時世って独りになれない者が
負けみたいな風潮がある。
いわゆる孤独になるのは嫌だから
遊びに誘うとか人がいるところ行きたいみたいな感情。
現実的に見ても今のこの状況で、
そういうことをしてしまう人間は
邪険にされ自らも他人も危険にさらし
色んな意味で死ぬリスクが高まる。
欲をおさえこめた側が生き残っていく構図。
ジョーズに戻ると、
誘いを断った彼氏が生きて誘った彼女は死んだ。
この冒頭のシーンだけで、
本質を語られエロも満載で腹一杯になる。
それを彼氏側が彼女を誘うのが一般的なのに
逆にしてるところがスピルバーグの変態性だと思う。

ちなみにバタリアンは、
環境問題やアメリカの黒歴史を
ホラーとコメディを上手に混ぜてて
小さい頃はトラウマ的に怖かったけど
今観たら最高に面白いです。
何よりもBGMがまじセンスの塊でカッケーっす。
この作品が初監督のダン・オバノンは、
恵まれなかった天才だと思います。
同じようにロバート・ゼメキスは
ちゃんと恵まれた天才で、
更にスティーヴン・スピルバーグは
二度と出てこない天才だと思う。

今この状況だから話題になってる、
現代を予言してたかのような感染症の映画ありますが、
あれは2002〜2003年に流行ったSARS、
そのまんまだから予言とは言いがたい。
テンプレート的な本質が何にも伝わってこないから、
自粛中にコンテイジョン観るなら
ジョーズかバタリアン観て下さい。

いやぁ、映画って本当にいいものですねぇ

映画が面白く感じなくなった一番の原因は、
水野晴郎さんみたいな解説者が
この世から去ってしまったことかもしれない。

それがトラウマとなって、
今でもこうして思い出す。

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