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心を委ねられるカフェについて

「ななみちゃん、またきてね。」
店主は笑顔で手を振ってくださった。私も会釈をしてお店を後に出た。

私個人の顔と名前と性格を知っているお店は、いくつあるだろうか。東京に住んでいたとき、私のことを「常連」と認識していたお店はあった。しかし、その人と「お店以外でも繋がっている」ということはあり得なかった。

小さな沖縄の離島暮らしの今。その環境がガラッと変わった。例えば、行きつけのブックカフェは上司のご家族が働いていたり。珈琲屋さんでは高校の同級生の仲良しさんがお店を運営していたり。

そして、「共通の知人がいる」という繋がりだけではない。この小さな島では日常生活で店員さんに遭遇することもしばしば。行きつけの八百屋さんに言ったら、あのお店のスタッフに遭遇…。そんなサイズの島なのだ。

だからここでは、単純に店員ー客という関係ではない。店員さんとのお話は、生活と地続きだ。そして店員さんも「お客さんのひとり」でなく、「わたし個人」として接してくださる人も多い。
一緒に生活の話をしたり、趣味の話をしたり、美学の話をしたり….。時計を見忘れて、閉店まで店主さんと話し込んだこともある。店員さんと今日の気分を伝えながら、メニューを相談するのも心地よい。

今まで、休日に行きたい場所を思い浮かべる時には「あのお店に行きたい。」だった。しかし、今では「あの人にお会いしたい。」そんな気分でお店を選ぶことが増えた。

この島には、チェーン店のカフェは存在しない。その代わり、顔がわかるお店がいっぱいある。誰がどんな想いで運営しているか知っているお店がいっぱいある。そんなお店で会話を楽しみながら過ごすのが、ここ最近の心の休め方だ。

半年前の私は「カフェに行っても誰かに見られている」ということがとても緊張した。店主さんも、知り合いの知り合いかと思うと気が抜けなかった。それでも、今は肩の力を抜けるようになった気がする。離島暮らしに馴染めるようになった自分がほんのちょっとうれしい。

さて、次の週末はどこの誰に会いに行こうかな。



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