丁々発止の会話劇が一級品の頭脳ゲームへと展開していく面白さ。三谷幸喜のこだわりぶりが炸裂する…★劇評★【舞台=愛と哀しみのシャーロック・ホームズ(2019)】
フランケンシュタイン博士しかり、インディ・ジョーンズしかり、例えそれが物語の中で創り出された架空の人物であっても、後に世間を驚かせる人物は、クリエイターたちに「その若き日はいかなる人物だったのだろう」という興味を抱かせるものだ。シャーロック・ホームズもまたそんな一人で、これまでも映画などで若き日のシャーロックは描かれてきたが、三谷幸喜が挑んだ舞台「愛と哀しみのシャーロック・ホームズ」ほど、その若き日の実像(架空の人物なので実像というのも少しおかしさを感じるが、そのおかしさもまた味わいになっている)を的確に描き出している作品もないだろう。しかもその存在は明記されているもののあまり詳細な性格付けがない兄のマイクロフトや、シャーロックシリーズによくその名が登場するヴァイオレットという女性を主要な登場人物にして物語の軸に据えるなど思わずにやりの人物相関も心憎く、丁々発止の会話劇が一級品の頭脳ゲームへと展開していく面白さ。三谷のこだわりぶりが炸裂する舞台「愛と哀しみのシャーロック・ホームズ」は観客の頭と心をぐるぐる巻きにしながら、見たこともない高みへと私たちを連れていってくれる。(写真は舞台「愛と哀しみのシャーロック・ホームズ」とは関係ありません)
舞台「愛と哀しみのシャーロック・ホームズ」は、9月1~29日に東京・三軒茶屋の世田谷パブリックシアターで、10月3~6日に大阪市の森ノ宮ピロティホールで、10月12~13日に福岡県久留米市の久留米シティプラザ ザ・グランドホールで上演される。
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