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ノゾエ征爾が磨き上げる三島由紀夫作品のポップな躍動感…★劇評★【舞台=命売ります(2018)】

 私の知り合いがかつて、コミュニティペーパーに仕事募集のつもりで「何でもやります」という広告を載せたところ、とんでもない依頼が次から次へと舞い込んで、平穏だった日々がジェットコースターのような毎日に変わったことがあるが、新聞に「命売ります」という広告を載せたら、それどころでは済まないだろう。三島由紀夫は半世紀も前にそれを小説にしているのだ。流麗で重々しい文学ばかり書いていると誤解されている三島も時代の空気をたっぷりと吸い込んだエンターテインメント小説をいくつかものにしている。その代表的な一作が新進気鋭の演出家・劇作家・俳優のノゾエ征爾によって舞台「命売ります」として上演されている。仕立てはまだ戦後のにおいが残っていた1960年代後半そのものだが、恐ろしいほど現代人の心理にざわざわとリンクしてくる展開に、私たちもいてもたってもいられなくなる。主人公だけでなく、トンデモなく命を粗末にしている人たちが大運動会を繰り広げているようなドタバタぶりなのに、よりいっそうきらきらと輝き出すのは命そのもの。「命を大切にしましょう」と諭すよりも、よほど心に染みて来る。個性派ぞろいのキャストが妖精を操るようなノゾエのマジックで驚くほどぴたりとそれぞれの役柄のピースにはめられていくのは、見ていて痛快でさえある。
 舞台「命売ります」は11月24日~12月9日に東京・東池袋のサンシャイン劇場で、12月22日に大阪市の森ノ宮ピロティホールで上演される。

★舞台「命売ります」特設サイト

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