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すべてを覆いつくすのがあの人類の悲劇と分かっていても、一瞬一瞬を懸命に生きた人間の希望の息づかいがある…★劇評★【舞台=紙屋町さくらホテル(2022)】

 どんなに過酷な状況に追い込まれた登場人物たちを扱っていても、井上ひさしの作品にはその一瞬一瞬を懸命に生きた人間の希望の息づかいがあるし、そこに付随する要素すべてをエンターテインメントに変えることができる井上の稀有な才能が見える。こまつ座第142回公演「紙屋町さくらホテル」は特にその才能が発揮された作品であり、観客は演劇論から演技論、果ては宝塚歌劇論まで語られるお芝居のうねりのきいた波に心地よく乗りながら、いつのまにか難しい議論のど真ん中に引きずり込まれていることに気付く。その物語のすべてを覆いつくすのが、あの人類の悲劇だと分かっていても、この議論の先に彼らの明日も見えていると信じたくなるのだ。再演が重ねられるごとに深みを増す鵜山仁の演出に乗り、感情を爆発させる各キャラクターの造型が魅力的で、あらためて俳優の演技の素晴らしさを感じさせてくれる芝居に仕上がっていた。(写真は舞台「紙屋町さくらホテル」とは関係ありません。単なるイメージです)

 舞台「紙屋町さくらホテル」は7月3~16日に東京・新宿南口の紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAで、7月30日に群馬県高崎市の高崎芸術劇場で上演された。なお、7月17~18日の東京公演と7月24日の川西町フレンドリープラザでの山形公演は公演関係者の中に新型コロナウイルスの陽性者が出たため、中止された。公演はすべて終了している。

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http://blog.livedoor.jp/andyhouse777/archives/66357114.html

★通常、ブログでの劇評は序文のみ掲載し、それ以降の続きを含む劇評の全体像はクリエイターのための作品発表型SNS「阪 清和note」で有料(300円)公開していますが、今回は劇評の掲載が大変遅くなったことのおわびとして掲載から2週間に限り、全文無料で公開してきました。設定期間が終了した2022年8月14日からは有料(300円)での公開に変更いたしました。

★なお劇評の続きには作品の魅力や前提となる設定の説明。七瀬なつみさん、高橋和也さん、千葉哲也さん、松岡依都美さん、内田慈さん、松角洋平さん、白幡大介さん、神崎亜子さん、たかお鷹さんといった俳優陣の演技に対する批評、鵜山仁さんの演出に対する評価などが掲載されています。

【注】劇評など一部のコンテンツの全体像を無条件に無料でお読みいただけるサービスは原則として2018年4月7日をもって終了いたしました。「有料化お知らせ記事」をお読みいただき、ご理解を賜れば幸いです。

★舞台「紙屋町さくらホテル」2022年公演作品情報=公演はすべて終了しています

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